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ネガティブな僕と、中二病っぽい彼。  作者: ホワイト大河
第二章 知らなくたって、いいんだよ
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ネガティブ・アスリート(4)


そんなこんなで体育祭当日。

当日になってしまえばもう逃げられません。

ただ、天に身を委ねるだけです。どうせロクな事はないです。


「ネガティブすぎじゃね?」

「僕まだ何も言ってませんけど。」


とりあえずうのぽんと学校に向かっているのですが、

どうやら僕の顔色からネガティブな事を考えていると読み取られたようです。

あ、顔色が悪いのはいつものことでした★


「ってか、恒太もリレー出るんだっけ?マジどんまいじゃん。」

「他人事すぎてビックリしました。うのぽんは良いですよね、足が速くて、そこそこモテて、友達多くて」

「後半全然関係なくね?」


今だからこそ一緒に居てくれるうのぽんですが、

学力・体力・コミュ力を始めとした様々な能力に僕とは大きな差があって、

いずれお別れする運命なのは明白です。

……こ、高校生活だけでも、一緒に居てくれて幸いです。


「なんかまた変なこと考えてんじゃね?」

「まったく考えてません。将来の日本経済について考えてました。」

「大丈夫?」



「おう、恒太、剛司じゃねえか。」


校門の前までやって来た時、向こうから歩いてきたのは、

おなじみ達也さんと……えーっと、よ、洋次くんです。

テル君と別れてからというものの、ずっと死んだ魚の眼をしていて、

元気キャラの影も形もありません。失恋とは恐ろしいものです。


「ハロハロー。住田は相変わらず元気ないじゃん。そのうち良いことあるって。」


うのぽんがあえて空気を読まずズカズカと突っ込んでいきました。

その瞬間達也さんでさえも分かるほど、空気がよどみました。

なんてことしてくれるんですかうのぽんいい加減にしてください。


「……これでも体育祭を前にして、テンション上がってんだけどな……」


言葉を返す洋次くん。まったく元気がありません。

テンション上がってるって言葉を辞書で引いた方がいいと思います。

なぜかうのぽんは大笑い。こいつは地獄に落ちていい。俺が許可する。


「お、俺は憂鬱だぜ。文化系にとって体育祭なんて地獄でしかないからな。」

「そ、そうですよねー!憂鬱すぎて今日朝三回ほど吐いてしまいました!」

「それはいつものことでは?」


達也さんと二人、何とか場を盛り上げようとしますが、

微妙な空気のまま、グラウンドが近づいてきます。



「お、恒太と達也か。よく眠れた?」

「おう直樹。ぐっすり寝てきたぜ。」


後ろから直樹くんに声を掛けられました。

荷物を持っているところから、いつも通り早くついて、

今はトイレ帰りかなんかだと思います。奇跡の子もトイレするんですね。


「直樹くんじゃん。ハロハロー。今日は手加減してね。」

「やるからには本気を出さないと失礼じゃないのか?」

「頭堅いんじゃね?ま、楽しくやろーじゃん。」


不思議がっている直樹くんの肩をポンと叩くと、

うのぽんは洋次くんと二人、一組のテントの方へと消えて行きました。

「奇跡の子」直樹くんが居れば、あらゆる場面で優位ですよね……。

とりあえず直樹くん、達也さん、僕の三人で、三組のテントへと向かいます。



「おはよ!今日は頑張ろうぜ。」


ふだんクラスの隅に居るような僕らですが、テントに着くとすぐ、

僕らに話しかけてくれたのは、クラスのリーダー、勝田さんでした。

コミュ障の僕と達也さんは二人して何と答えればいいか分からず、

もごもごしている間に、勝田さんは次の生徒にまた声を掛けていました。


「……とっさにあいさつも返せないですね……」

「ケッ、あんな爽やかオーラまとわれたら難しいだろ。まず、俺たちに話しかけてるかどうか分からなかったしな。」

「そ、それもそうですね……」


二人そろって陰キャラです。情けないです。辛い世界です。

でも達也さんが変に明るいキャラじゃないから、

僕はこうして一緒に居て落ち着くんだと思います。珍しくプラス思考。


「何かお前ら落ち込んでるか?」


そんな僕ら二人とは似つかわしくない人がこの織田直樹くんです。

勝田さんと並ぶ、いやそれ以上のイケメンオーラを放ち、

今も半袖半ズボンの体操着のダサい格好にも関わらず、

引き締まった筋肉と、適度な胸板が強調されて、目のやり場に困ります。


「あの……直樹くん、その気になったらいつでも捨てて頂いて結構ですよ?」

「何を?」

「いや……あ、やっぱ何でもないです。」


直樹くんがこの学校に来て、初めて話し掛けたのが僕だったわけで、

もし僕じゃなければ、明るいキャラたちと一緒に、

楽しい青春を過ごしていたかと思うとすごい責任を感じます。


「まったく……直樹、今日はせいぜい活躍してくれよな。」

「ああ。分かってる。」


「おはよう。」


な、なんか背後から地の底から響く声がして振り返ったら、

180センチ超えの巨体が立っていました。

それは脇坂くんでも菊池先輩でもなく六道斬太郎さんでした。

僕の周りの身長が高い人たちって、なんでこう怖い人が多いんでしょう?


「ろ、六道さん……」

「今日は騎馬戦頑張ろうな。」

「は、はい……」


一年五組時代、「渡透」を中心とした優等生中心の政治体制において、

渡様のすぐそば、カーストの上位にいらっしゃったのが六道さんです。

現高校生最強にして、いずれ剣道で日本一を取るお方です。恐ろしや。

六道さんはゆっくりと直樹くんに近づくと、手を差し出しました。


「宜しく。」

「ああ。」


直樹くんは何の気なしに手を握りましたが、僕には見えます。

二人の間に、特に六道さんの方から、猛烈なプレッシャーの嵐が……。

そりゃそうですよね、何やら渡様は直樹くんに対抗意識を燃やしていて、

直樹くんに六道さんが近づいてきたのは、スパイのようなものですから。

ものすごいプレッシャーの中、達也さんが口を開きました。


「そういや、恒太は六道には『様』つけないんだな。」

「ああ、六道さんは位の高い方ですが様づけを嫌い……ってどうでもいいわ。」


二人の戦いには気づいてもいない、相変わらずの空気の読めなさ★




朝礼台に一人、体育委員長の花園翔希さんが立ちました。

そしてマイクを取らずに息を吸って、大きな声で言います。


「これより、BL学園第十回体育祭を開始する!!」


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