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ネガティブな僕と、中二病っぽい彼。  作者: ホワイト大河
第二章 知らなくたって、いいんだよ
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あぶない!保健室(10)

「ま、でも確率が高まったといえば高まったわね。」

「え、何の話っすか?」


工藤と肩を並べて保健室を出たあたしは、真っ直ぐに教室へ向かう。

不思議そうに首をかしげる工藤に、あたしは笑顔で言った。


「あたし女の子が好きだし。あなたが男じゃないって分かっただけでも……」

「俺は男で居たいっす!あと結婚してください!」

「なるほど、そこは譲らないのね。あと結婚はしないわ。」


それから、彼がただの馬鹿じゃなくて、彼なりに色々迷ってるって事も、

工藤に対して、前より良い印象を抱くきっかけにはなったわ。

だからと言ってすぐにお付き合い、なんてわけにはいかないけど。

隠れ貧乳なのも一応ポイントなんだけど、

工藤は男で居たいみたいだし、ま、現実的には可能性ないかもね。



「あなたが女だって事は誰にも言わないであげるから、その分あなたもプロポーズは自重してよ?」

「それとこれとは話が別っす!結婚してください!」

「しないわ。」


はー駄目ね。そこん所も譲る気はないって事か。

本当に強情なんだから。工藤らしいっちゃ工藤らしいけど。

すると、工藤は珍しく顔を赤らめて、あたしから目を反らして言った。


「なんか、今までは顔とか振る舞いとかが好きだったんすけど……さっきの話を聞いて、その……性格とかも全部、好きになっちゃったみたいっす。」

「……勝手にしなさい。」


人に褒められるのって、悪い気はしないわね。

……なんか照れるわ。いやいや、工藤と付き合うのはあり得ないけど……。



  ○   ○   ○   ○   ○   ○



掃除時間、多目的室の掃除から戻ってくるときに、廊下で神様と鉢合わせた。

いつも通り自信満々で、威張った口調で見下してくる。


「ハッ!綿華君、今日も内科検診の手伝い、ご苦労であったな。」

「あら、女子の検診がまだ残ってるわ、あたしは楽しみにしてるけど。」

「ハッ!動機が不純すぎるぞ。……ところで、昼休憩に工藤君と仲睦まじく教室に戻る所を宇野君が見たそうだが、君は彼を許したのか?」


……うのぽんねえ。あの子どんだけ観察力高いのよ。

あたしはふんぞり返って、神様の好奇の目を退ける。


「別に許したわけでもないし。ただ一緒になっただけよ。」

「ハッ!もしやこれはゴールインも近いのではないか?」

「何言ってんの大樹。あたしと工藤をくっつけてどうしようって言うのよ?」


「綿華さん、結婚ー!!」

「しないわ!グーパンチ!!」


どこからともなく襲い掛かって来た工藤をぶっ飛ばして、あたしは手を払った。

神様が引いてるわ。あたしはもう日常化して慣れちゃったけど。


「は、ハッ……まあ、あったとしても遠い話だな。」

「無いから安心して。それじゃ、あたし戻るわね。」


神様と別れて、のびてる工藤を放置して、あたしは教室へと戻る。

……神様とはほとんど全てを共有してきたあたしだけど、

さすがに工藤の秘密を話すわけにはいかないわね。


そういえば、HRが終わったら保健室に寄ろっかな。

何だかんだ、あたしは安達先生の事を勘違いしてたみたいだし、

ちゃんと謝っておかないとね……。



  ○   ○   ○   ○   ○   ○



「あ、そこは……!」

「ん?気持ちいいだろ?ほら……」

「あ……だ、ダメ……」


音声だけ聞くと完全にアウトよね。

ため息をつきながら、あたしはベッドのカーテンを勢いよく開ける。

相変わらず、そこには下着姿で寝ている男子生徒と、

白衣の袖をたくし上げた安達先生が居て、マッサージの施術中だった。


「どうした綿華?」

「安達先生……勘違いされるんで、やめて頂けません?」


あたしが安達先生を止めようとすると、

寝ていた男子生徒が恥ずかしそうに服を着て、急いで保健室を出て行った。

生徒も生徒よね。目先の快楽に溺れるなんて。

大した運動もしてない男子高校生のどこにマッサージが必要だって言うのよ?


「営業妨害だぜ?」

「営業しないで下さい。」

「コーヒー飲むか?」

「……頂きます。」


安達先生に導かれるままに、あたしは机の傍の椅子に腰かけた。

つい一昨日ここに来たばかりだというのに、

慣れた手つきでコーヒーを準備する安達先生。どんだけ飲んでんのよ。

コーヒーを出された時、本題を思い出したあたしは切り出した。


「……あの、何かごめんなさい。」

「何が?」

「安達先生の事、ただのホスト上がりのナンパ野郎だと思ってて。」

「いや、それ程でも?」

「褒めてませんってば。……とにかく、ごめんなさい。」


とりあえず、真面目にあたしは頭を下げた。

あたしが助けられたわけじゃないけど、なんか借りがあるみたいで、

若干気持ち悪いしね。安達先生も、どうやら空気を読んだらしい。


「ま、ホスト時代に何人もの客の心を読んできたからな。高校生の考える事くらい、世間の辛い空気吸ってる大人の女に比べりゃ簡単なこった。」


真面目な顔をして、コーヒーを飲みながらそう言われた。

ホストもホストなりに、チャラチャラしてるだけじゃ食っていけないか。

でもって保健室の先生になるなんて、きっと猛勉強したんだろうし。


そんな時、勢いよく保健室の戸が開いた。

……誰かと思えば、中島先生。いつも以上に真面目な顔をしていた。


「僕は負けませんからね、安達先生!」

「……何がだ?」


「生徒の辛い気持ちを考えること!……工藤君の件では、至らない面を見せてしまいましたが……経験の差なんて、努力で埋めてみせますから!」

「……はっ、精々頑張るこった。」


真っ直ぐな中島先生と、癖があるけど味もある安達先生。

……確かに小泉先生が居ないのは寂しいけど、

新しい保健室も、そんなに悪くない気がしてきたわ。



「ところで綿華。お前も気になってるだろ?」

「……何がですか?」

「マッサージだよ。どうだ?絶頂迎えさせてやろうか?」

「ちょ、安達先生、あなたはまた破廉恥な!」


安達先生がいやらしい目をしてあたしに近づいてくる。

そんな彼に拳骨を浴びせようと、中島先生が走ってくる。

……あたしはとりあえず、拳に力を込めた。


「大丈夫です中島先生、避けててください。……グーパンチ!!!」

「おいやめろ、綿華!」


(物理的に)あぶない、保健室ね★


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