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ネガティブな僕と、中二病っぽい彼。  作者: ホワイト大河
第一章 変わること、変わらないこと
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色恋沙汰に神降臨(5)

「かんっぜんにヤラれたわね。本当うのぽんは油断ならないんだから!」


翌日のお昼時。訪ねてきた綿華君は、最初から怒り心頭だった。

あそこで菊池先輩を捕まえるとは、確実に宇野君の方が一枚上手だ。


「ハッ!仕方ないではないか、規律を破っていたのは綿華君の方……」

「こうなったら、何としてでも野上の正体を暴いてやるわ……うのぽんの慌てふためいた顔が見てみたいってもんよ!あっはっはっはっはっ!」

「ハッ!ただの性悪女だぞ。白雪姫に毒林檎を渡す勢いだ。」


綿華君はやけ食いのようにパンを次々とかじっている。

前から思っていたが、綿華君は食べる量が結構多いのだが、

体型は長身痩せ型でスタイルは良い。

ひょっとするとその栄養は全て豊満な胸にいっているのだろうか。


「うっさいわね。神様なんか全然食べないからただのヒョロ男じゃないの。」

「ハッ!ナチュラルに心を読まないでほしいんだが。」


綿華君は気が立っているようで、見るからにイライラしているが、

そんな中でも周囲の人間観察は怠らない。

まず、彼女の目の向く先は住田&鈴木のペアだった。



「あらん?今日も洋次は貧相な食事ですのね。」

「お嬢とは住む世界が違うんだよ!これだって母さんの愛情料理だ。お嬢のただ高いだけの料理とは違って美味いぜ。」

「おほほほほほ……面白い殿方。ちょっぴり憎たらしいのが可愛いです事。」

「うっせえな。早く食えよ!」


む……まあ自覚は無いにしろ、知らない人間が見れば完全にカップルだ。

月山君が誤解するのも無理はないと思うぞ。

……それをちゃんと説明しない所が、傲慢と言われる所以か。


「あたし、あれ今すぐにでも止めさせたいんだけど。」

「ハッ!馬鹿を言うな。トラブルを起こせば逆に不審がられる。何やら住田君が鈴木君を何とかしたいと思っている以上、剥がすのは無理だ。」

「……はー。上手くいかないもんよね。」



溜息をついた綿華君が、次に目をやったのは宇野&野上ペアの方だ。

先ほど食堂から帰って来たらしく、やたら野上がベタベタしている。


「ねえ、宇野君ってばあ、いいカゲン野上のいう事、聞いて?」

「俺にとっても利益があるなら良いんじゃね?」

「え、絶対いい経験するよお?忘れられない、ひと夏の思い出……。」

「まだ春じゃん。」

「んもう、宇野君ったらあ!」


……何というかノーコメントだ。

あれもカップルと言って良い気がするんだが。


「ねえ神様。あたし単純にイラついてきたわ。野上ぶん殴っていい?」

「ハッ!良いわけなかろう。そこまでしたらただの暴徒だぞ、綿華君。」

「……そうだけどさ。」

「ハッ!ところで、君の昨日の侵入は誰かが招き入れたのではないかと疑った、菊池先輩の睨み攻撃にあって大変だったのだぞ。主に落合君が。」

「ああ、それは悪かったわね……」


ぼんやりしている綿華君。心ここに在らず、という感じだ。

思い通りにならないと拗ねる、まるで赤子じゃないか。


「ハッ!とにかく、今日は久しぶりの執行部会。菊池先輩にきちんと謝っておくことだな……」


拗ねる綿華君を横目に、神はぼんやりと考えた。

色恋沙汰で色めく二年生だが、三年生の先輩方は受験学年を迎えて、

気を引き締めて落ち着いた行動も見られることだろう。

最近バタバタとトラブルも多かったものだ。

ようやく落ち着ける……なんて考えていた神の、甘さを知る。



放課後、生徒会室。

神と綿華君が時間より早めに生徒会室に着くと、

そこには既に数名の執行部員が待ち構えていた。

……最初に存在感を醸し出したのは、マニキュアを塗るのに勤しんでおり、

ちらと綿華君が視界に入った瞬間に、声を上げた派手な美女。


「ちょっとサユ。メール無視するってどういうつもり?せっかく私が春のセール服、一緒に見に行こうって誘ってやったのにさ。」


 書紀:三年三組 月山和佳子(つきやまわかこ)

言わずと知れたテル君の姉であり、「演劇の女王」である。


「あ、いえ……ごめんなさい、忙しくてあまりメールチェック出来なかったので……今度また、行きますから。」


 保健委員長:二年二組 綿華小百合(わたはなさゆり)

念のためもう一度紹介しておこう。選挙では神の推薦人として活躍してくれた。

月山先輩のショッピングに付き合わされる事が最近一番辛いそうだ。



「おっ、上川、綿華!お前ら元気にしてたか?」

「あら翔ちゃん!クラス離れちゃってなかなか会う機会なくなったわね……」


 体育委員長:二年四組 花園翔希(はなぞのしょうき)

二年生に三人いる花園三つ子のトップ。体育会系で熱い男だ。

通称「翔ちゃん」というあだ名は、綿華君がつけたものである。


「相変わらずですね……上川君。妄想の部下たちはお元気ですか?」

「ハッ!その減らず口……またすぐ利けなくしてくれようぞ。」


 風紀委員長:二年四組 勝村幸夫(かつむらゆきお)

テニス部では「教祖」と呼ばれる奇妙な集団のリーダー格だ。

何故か神には突っかかって来る。毎度完膚なきまでに叩きのめすのだがな。


さて……執行部会は春休み以来で、懐かしい顔も多いな。

時間も迫ってくる中、徐々に他の執行部員も姿を見せ始める。



「おっ、結構揃ってるっぺ!やっぱ俺ら、遅かったけろ?」


 庶務:三年二組 後藤俊平(ごとうしゅんぺい)

男子寮寮長を務めるこの男は、元気を取り柄に真っ直ぐに突き進んでいく。

綿華君以上の行動力の持ち主だが、時に暴走する事も多いようで……。


「……俊平。大人しく座れ。」

「ちぇっ、分かったっぺ!」


 美化委員長:三年二組 菊池博明(きくちひろあき)

その後藤先輩の世話役が菊池先輩だ。一部では鬼畜眼鏡と恐れられている。

規律を反するものを等しく裁くことから、「公平」と呼ばれる事も多い。


綿華君が菊池先輩の姿を見た瞬間、席を立って近づいた。

元々そんなに離れてない席、すぐに彼も綿華君を視認する。


「あの……昨日はご迷惑おかけしました。ちょっと用があったもので。」

「別に怒鳴る気は無い……ただ、執行部の一人として規律を守る意識はもっと持った方が良さそうだ……」

「あはは、気を付けますね……」


天真爛漫な綿華君をも諌める程の力の持ち主。

これは今後困った時に力を借りたほうが良いかもしれんな。

綿華君が席に戻って行くタイミングで、また二人生徒会室の戸をくぐる。


「な、渡ちゃん。みんながみんな敵ってわけじゃないんだし、もう少し力抜いたほうが良いっしょ?」

「お言葉は有難いですが、飯島委員長。僕には僕のやり方がありますので……」


 文化委員長:三年三組 飯島聖也(いいじませいや)

 学級委員長:二年五組 渡透(わたりとおる)

飄々としているが卓越した短期記憶力を持つ男、飯島先輩と、

二年の中で飛び抜けたリーダーシップを持ち、会長の椅子を狙う渡。


残る執行部員は三人。生徒会の中心なる二人と、問題児一人だ――。


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