それから
クリストファー目線で。
国中が驚いたあの発表から二年。姉夫婦は仲良く夫婦生活をしてるらしい。
「クリストファー様、ご機嫌でらっしゃいますね。」
手元にある手紙を読んでいたクリストファーは、声を掛けてきたジェームズににっこり微笑んだ。
「そりゃそうだよ。クリスも等々母親になるんだから。こんな嬉しいことはないよ。」
ぶっきらぼうな手紙の主は、双子の姉、クリスティアからだ。いつも数ヶ月に一回あるかないかの手紙は、いつもぶっきらぼうだが、今回のは少し違った。
最後の方に殴り書きのような文字で騙されたっ!と書かれているのは無視するとして、自分のことなどめったに手紙に書かないクリスが、子供が出来たとだけ報告したのも大きな進歩だと思う。
「陛下に報告なさらないので?」
ジェームズは、姉が嫁いだ後も剣の稽古をつけてくれたりと、クリストファーを全面的にサポートしてくれている。
「あぁ、報告しにいかないと。クリスは父上に手紙書かないからね。」
ジェームズに促して、苦笑しながら席を立ったクリストファーは、思い出したように手紙から一枚の写真を抜き取った。
「おっとこの写真は抜いとかないと。父上に見せるのは勿体無いから。」
意地悪くジェームズに片目を瞑って見せると、行こっかと言って扉へと歩き出した。あの写真が何かを知っているジェームズは、少し苦笑いをしながら後に続いた。
―来年になれば、可愛い赤ん坊を連れたクリスが、この国に顔を見せに戻ってくる。また一段と騒がしくなることだろうが、そんなことは関係ない。
あの写真のような、幸せな笑顔を見せてくれるはずだから。そう思うと、また嬉しくなる顔を元に戻せなくなって、ジェームズに「また顔が緩んでますよ。」と言われてしまった。
クリストファーは、ふらりとその言葉を交わして中庭へと出た。そこは姉のお気に入りの休憩場で、今ではクリストファーの避難場所となっている。そこはどっしりと構える姉のような落ち着きと、容姿のように美しい姿の庭である。
今日も空からは、いつかのあの日のように、暖かい日の光りが降り注いでいた。
誰にも言った事はないけれど、クリストファーはこの庭と太陽は、姉夫婦そっくりだと思っている。
「クリストファー様、そろそろ参りましょう。」
ジェームズの声に答えて、少し名残惜しそうにクリストファーはその場を離れた。
二人にそのことを言ったら、どう言うだろう?アルフォンスはきっと嬉しそうに笑うだろう。クリスは、きっと剣を振り回して、ふざけるなと怒るだろうけど。
そんなことを考えながら一人笑うクリストファーは、ジェームズに追いついて父の元に向かった。
少しして、息子を連れた二人にそのことを言ったら、クリストファーが思った通りになったのは言うまでもない。