夏の失敗
春、伯母さんが遊びに来たときは、私がもうすぐ17才になることが話題になった。
「媛ちゃんがもう17歳ねえ……」
お母さんも感慨深げにうなずいた。昭和世代の先輩女子たちは、17という年齢に思い入れがあるらしい。そういえば、森高千里「17才」って曲は私でも知ってる。もっとも、あの曲はもっと昔の曲のカバーらしいけど。
七夕の1週間後、7月14日が私の誕生日。その1週間後、21日からが夏休み。伯母さんが私への誕生日プレゼント持参がてらで遊びに来たときは、17の夏が話題になった。昭和世代の先輩女子たちは、17の夏に胸がときめくらしい。伯母さんが言うには、桜田淳子「17の夏」ってヒット曲があったらしい。お母さんはよく覚えてなかった。この二人は結構歳の差がある。
夏生まれの私も今年の夏には期待してる。ちなみに、昭和世代の先輩女子っていうのは比喩ではない。本当に伯母さんもお母さんも私の学校のOG。だから、学校の雰囲気も知ってる。生徒思いの学校だから、勉強だけでなく、思い出作りにも力を入れてくれてる。1、2年のときはイベントが多い。高2の夏休みの海浜体験学習なんかは、別名、恋合宿っていわれるほど、カップル成立が多い。
「でも……」と伯母さんが嘆く。
「最近の若い人はかわいそう。最近の夏って、夏らしい風情がないんだもん。昔の夏はこんなじゃなかった。一日中暑いってわけじゃなくて、真夏でも朝、夕はいくらか過ごしやすかった。お盆過ぎれば晩夏と初秋が混ざり合う感じで風情があって。夏は命が燃え上がる季節って感じ。今の夏は命の危険すらある灼熱地獄」
昔の夏は知らないけど、私にもなんとなくわかる気はした。とは言え、私にとってはたった一度の17の夏には違いない。
海浜体験学習という名の恋合宿。至る所で二人きりで話す男女を見た。でも、結局、最後まで私には期待した進展はなかった。だから、最終日の夜、布団入った後、同室の友達に宣言した。
「私ね、いつまで経っても告ってくれない秋田君はもう諦める。1年のときから告ってくれてる宮城君にシフトする。もう決めた!」
みんな「えーっ」って大声出したんで、私は慌てて「しっ」って人差し指を唇に当てて、みんなを制した。
新学期の初日。9月なのに酷暑。私が教室の窓から見下ろすと、日差しを遮るものがない花壇の横で、ひと組の男女が話している。「あれっ?」と思ってよく見たら、秋田君と愛ちゃんが二人きりで話している。頭に血が上った。
愛ちゃんが教室に戻ってきたので、廊下に連れ出して問いただした。
「秋田君と愛ちゃんって、そういうことだったの?」
「違うよ。秋田君の気持ちを確かめてたの。秋田君も媛子も素直じゃないから」
私にも状況が飲み込めた。頭の血がすーっと下りていった。「でも……」私は愛ちゃんの気持ちを素直に受け取れなかった。
「誤解したのは謝る。でも、それ余計なお世話だから」
愛ちゃんは悲しそうな顔で、「ごめん」と謝った。
話が終わって教室に戻った瞬間、どえらいことに気づいた。
「げっ、私が秋田君と愛ちゃんのことでパニクったの、宮城君が見てた」
記録的酷暑で、全人間関係、崩壊中。




