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私の母校

 学生時代に恋焦がれ、第一志望の会社に入社したのに、2年で辞めた。だから、今就活中。「上司ガチャ」「配属ガチャ」っていうのもあったけど、「なんか大きな会社って嫌だな」って感覚もあった。学生時代のバイト先の社員さんのほうが楽しそうだった。大きなところに合格すれば行くけど、中小企業しか受からなければ、それはそれでいい。


 というわけで、本日、従業員30人規模の中小企業の中途採用の二次面接を受けている。一次面接では出てこなかった社長が出てきちゃった。これで、決定するとのこと。

 面接は、一次面接でも担当してくれた二人が進めた。中小企業の採用って、人事部が担当ってことではなくて、現場の人が担当するんだよね。段取りの悪さは感じた。質問よりも、自社の事業内容の説明時間が大半だったりするんだもん。


 社長は私が初めて手書きで書いた履歴書のコピーに目を落としている。

(安っぽい老眼鏡だなあ。100均じゃないの? 60代後半くらいかなあ)

 事前に読んできたらしくて、ちょこちょこメモしてある。

 ひと通りのやり取りが終わったところで、社長がおもむろに老眼鏡を外して、私を見て言った。

「海野さんの高校って、野球で有名なところですよね?」

 ハッとした。

(ええ~っ! それ聞くの~?)


 とりあえず、

「はい。甲子園にはよく出場しています」

と答えた。でも、社長は口元に笑みを含ませた顔で、私の次の言葉を待っている。

(続けなきゃダメか……)

 私は腹を括った。大学版「ガクチカ」をその場で応用して、高校版「ガクチカ」を語り出した。


 中学3年のとき、テレビで夏の甲子園を見て、母校の応援をするチアガールに強く憧れ、志望したこと……。

(アイドルみたいでほんと、かわいかったんだもん。「絶対これやる!」って思ったよ。軽いヤツだと思われるから、そこまでは言わなかったけど)

 チアリーディング部に入部し、日々、練習に励んだこと……。

(体育会系のクラブ並みにきつかったんだよ。これは強調した)

 高校3年の夏は、実際に甲子園でチアをやれたこと……。

(テレビにも映ったんだよ。これは軽く自慢した)


「でも、残念なことですが、最近SNSで、野球部の試合中でのラフプレーが話題になりました」

(もしかして、社長も知ってるかもしれないから、知らんぷりできないもんね)

「私もいくつかの動画で確認しました。私たちの代の映像もありました」

(チアやってるときは、ろくに試合なんて見てないんだもん。チアの子って、一般の生徒より試合中のプレー見てないよ。言い訳っぽくなるから言わなかったけど)


 ひと呼吸おいて、私なりの結論で締め括った。

「故意か故意でないかは水掛け論になりますが、回避努力をしてないことで擁護する気になれません。今回のことで認識を改めました。母校には誇りを持っていますが、野球部は嫌いです」


 ……。

 やや、微妙な空気になった。

「とてもよくわかりました」

 社長は私を見て微笑んだ。


 帰り道。電車に揺られながら思った。

(合否は五分五分かなあ。でも、正直に答えたし、まあ良っか)

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