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七星を廻る物語  作者: 豆柴の旅々
第六章 学園

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第九十一話 登校

 クロエに案内され、一行は馬車へ乗り込んだ。


 ほどなくして、馬車はセントリア学園へ向けてゆっくりと走り始める。


 昨日の余韻だろうか。


 女子たちはどこか嬉しそうな表情を浮かべていた。


 クロエは不思議そうに首を傾げる。


「皆さん、何だか嬉しそうですね?」


 シルフィが元気よく手を挙げた。


「うん! 昨日ね! カインが制服姿を褒めてくれたんだ!」


「えっ……。」


 クロエは思わず目を見開く。


 白いスカートの端をそっと指先でつまむ。


 少しためらいながら、おずおずと口を開いた。


「か、カイン……その……私は、どうかな?」


 カインは少し考える。


 そして、穏やかに微笑んだ。


「まるで夜空に浮かぶ月みたいで、優しい雰囲気があります。」


 クロエは目を見開いたまま固まる。


「…………。」


 やがて、頬をほんのり赤く染め、嬉しそうに微笑んだ。


「ありがとう……。」


 馬車の中へ、一瞬、静かな空気が流れる。


(……また増えた。)


 エリーは小さくため息をつく。


(……誰にでも、あんなこと言うんだ。)


 アリアは少しだけ頬を膨らませた。


(……聞いているこちらが、恥ずかしくなります……。)


(きゃっ。)


 セシリアは真っ赤な顔のまま俯く。


(……カインには、女子の扱いを手解きしてやらんとのう。)


 ルーシーは腕を組み、小さく頷いた。


 シルフィだけが。


「?」


 きょとんと首を傾げていた。


◇


 しばらくして。


 クロエが思い出したように口を開く。


「そういえば、皆は専攻もう決めた?」


 カインは少し考える。


「俺は、剣術、算術、歴史、星学です。」


 クロエの表情がぱっと明るくなる。


「本当! じゃあ、算術と星学は私も同じ! よろしくね。」


「はい。」


 カインも笑顔で頷く。


 アリアも静かに微笑んだ。


「私も剣術は同じだから、学園でもよろしくね。」


「うん。よろしく、アリア先輩。」


「…………。」


 クロエの表情が固まった。


「……アリア先輩?」


「えっ?」


 アリアがびくりと肩を揺らす。


「ち、違うの。剣術大会に備えて、私がカインに剣術を教えてるから……。」


 クロエの表情がぱっと明るくなる。


「そうなんだ! 私のために頑張ってくれてるのね! カイン!」


「……ははは。まあ、そうですね。」


 カインは困ったように笑う。


 クロエはそんなカインを見つめ、ふと首を傾げた。


「ところで、アリアって呼んでるんだね。」


「えっ?」


「ずるい。」


 クロエは少しだけ頬を膨らませる。


「前にも言ったよね? 私のことはクロエって呼んでって。」


「…………。」


「あ。」


 カインは思い出したように目を瞬く。


「でも、クロエ様は侯爵令嬢ですし……。」


「アリアは公爵令嬢!」


「…………。」


 カインはアリアを見る。


 アリアはくすりと笑った。


「だから。」


 クロエはカインへ少し身を乗り出す。


「私もクロエでいいの。それに、私には敬語もいらないからね!」


「分かったよ。」


 カインは笑顔で頷いた。


「うん!」


 クロエは嬉しそうに微笑んだ。


 そして、皆を見回す。


「皆もクロエって呼んでね!」


 エリーたちは顔を見合わせ、笑顔で頷いた。


 カインはふと思い出したように口を開く。


「そういえば、ルーシー師匠は何を選ぶんですか?」


 ルーシーは腕を組み、胸を張った。


「妾はカインと同じものを所望する。弟子が勉学に励む姿を見届けるのも、師匠の務めじゃからのう。」


(カインと一緒!)


(楽しみじゃ!!)


 シルフィが元気よく手を挙げる。


「じゃあ、私もカインと一緒のにするー!」


 エリーは苦笑した。


「シルフィ、少しは自分で考えなさい。」


「えー?」


「だって、カインと一緒がいいもん!」


 馬車の中へ、笑い声が広がった。


◇


 しばらくして。


 窓の外には、制服姿の学生たちが行き交う姿が見え始めた。


 やがて、巨大な石造りの正門が姿を現した。


 その奥には朝日に照らされた校舎が美しく並び、広大な中庭では、すでに多くの学生たちが談笑している。


 馬車はゆっくりと速度を落とし、正門前へ停車した。


 いよいよ。


 セントリア学園での生活が始まる。

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