第九十話 制服
登校前日。
いつもより、少しだけ静かな食卓。
昨日の出来事について、誰も触れようとはしなかった。
食事を終え、一同が居間で寛いでいると、リーナとリズが制服を抱えて部屋へ入ってきた。
「皆様、制服をお持ちしました。問題ないか、一度袖を通してみてください。」
リーナはアリアへ微笑む。
「アリアお嬢様も、サイズにお変わりないかご確認ください。」
「ありがとう。」
しばらくして。
制服へ着替えた一同が部屋へ戻ってきた。
白を基調とした制服。
金の縁取りと紺の差し色が施され、胸元にはセントリア学園の紋章が入っている。
「わー!」
真っ先に声を上げたのはシルフィだった。
「カイン! かっこいい!!」
「え?」
カインは自分の制服姿を見下ろす。
「そ、そうかな?」
「うん!」
シルフィは満面の笑みで頷く。
そして、その場でくるりと回った。
「私はどう?」
カインは少し目を丸くする。
「うん。天真爛漫な妖精が、そのまま学園に通うみたい。かわいいよ。」
「えへへ!」
シルフィは嬉しそうに笑った。
その様子を見たエリーが、少しためらいながら前へ出る。
「わ、私はどう?」
カインは優しく微笑む。
「まるで一輪の赤い花みたいで、華やかだね。」
エリーは一瞬固まり、みるみる頬を赤く染めた。
「じゃ、じゃあ……。」
今度はアリアが、恥ずかしそうに視線を逸らしながら口を開く。
「カ、カイン……。私は?」
カインは少し見つめる。
「絵画の女神様みたい。綺麗で、凛とした感じがする。」
アリアは耳まで真っ赤になった。
「ありがとう……。」
セシリアも勇気を振り絞る。
「わ、私もお願いします。」
「うん。」
カインはセシリアを見る。
「透明感があって、絵本から天使が飛び出したみたい。」
「…………。」
セシリアは何も言えなくなった。
そして。
「妾は?」
ルーシーが当然のように前へ出る。
「ルーシー師匠は……。」
カインは少し考える。
「美しさの中に可愛らしさもあって、とても神秘的です。」
「なっ……。」
ルーシーは頬を真っ赤に染めながら、そっぽを向いた。
「そ、そうか……。」
少し離れた場所で、その様子を見ていたリーナとリズが顔を見合わせる。
「リーナ。」
「はい。」
「カイン様は……恐ろしいお方ですね。」
「ええ。」
二人は真剣な表情で頷き合った。
◇
翌朝。
雲ひとつない青空が広がっていた。
初夏の日差しがやさしく降り注ぎ、爽やかな風が色濃くなり始めた木々の葉を揺らしている。
制服姿の一同は、別邸の前に集まっていた。
今日から、セントリア学園での生活が始まる。
その時。
「皆さん、おはようございます!」
明るい声が響いた。
一同が振り返る。
そこにいたのは。
同じ制服に身を包み、満面の笑みを浮かべた。
クロエだった。




