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七星を廻る物語  作者: 豆柴の旅々
第六章 学園

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第八十三話 剣

 翌日。


 夕食を終えた頃。


 リーナとリズが手際よく食器を下げていく。


 カインは椅子に座ったまま、ふと思い出したように口を開いた。


「剣術大会って、そもそも優勝できるのかな?」


「強い人、いるんだよね?」


 アリアは少し考える。


「騎士を目指している人も出場するから、かなり腕の立つ人もいるって聞いたことがあるよ。」


 エリーは笑った。


「でも、カインなら楽勝でしょ!」


「オーラも使えるんだし!」


 アリアは首を横に振る。


「確か、魔法は禁止だったはず。」


「純粋な剣術だけで腕を競う大会なの。」


「だから、オーラも使っちゃ駄目なんじゃないかな。」


「えっ。」


 カインは目を丸くした。


「そうなの?」


 その時だった。


「カインよ。」


 ルーシーが静かに口を開く。


「はい。」


「今のお主では、優勝は難しかろう。」


 食堂が静まり返る。


 エリーは思わず身を乗り出した。


「なんでですか!」


「カインが勝てないなんて!」


 ルーシーは静かにカインへ視線を向ける。


 そして。


「剣術だけなら。」


「お主は二流以下じゃ。」


 カインは言葉を失った。


 しかし。


 すぐに顔を上げる。


「……理由を。」


「教えてもらえますか?」


 ルーシーは小さく息をついた。


「しょうがない。」


「よく聞くのじゃ。」


「はい。」


 ルーシーは静かに語り始める。


「お主の剣は、正直すぎるのじゃ。」


「相手の動きを見て、最短で斬り込む。それ自体は悪くない。」


「じゃが、剣だけで相手を欺く術は、まだ十分に身につけておらぬ。」


 ルーシーは静かに続けた。


「力と速さで押せる相手なら、それでも通用しよう。」


「しかし、同じ条件で剣を交えれば、次に何をするか容易く読まれるぞ。」


 カインは言葉を返せなかった。


 これまでの戦いが、頭をよぎる。


 幾度となく強敵と剣を交えてきた。


 だが。


 その度に、オーラの力に助けられてきたのも事実だった。


 もし、あの力がなかったら。


 自分の剣は、どこまで通用したのだろう。


「じゃあ……。」


 カインは思わず口を開いた。


 しかし、その先の言葉は飲み込んだ。


 ルーシーはそんなカインを見て、小さく首を横へ振る。


「あいにく、妾は剣を専門としておらぬ。」


「誰かに教わることじゃ。」


 そう言うと。


 それ以上は何も語らなかった。


 ◇


 その夜。


 カインは一人、バルコニーへ出ていた。


 少し暖かな夜風が。


 頬を優しく撫でていく。


 見上げれば。


 満天の星空が静かに広がっていた。


(……二流。)


 その言葉が頭から離れない。


(でも。)


(ルーシー師匠の言う通りかもしれない。)


 これまで。


 オーラを使わずに戦うことなど。


 ほとんど考えたことがなかった。


(剣だけで戦ったら……。)


(俺は、どれくらい強いんだろう。)


 考えても。


 答えは出ない。


 ただ。


 剣士として。


 まだ自分に足りないものがある。


 それだけは分かった。


 その時だった。


「カイン。」


 聞き慣れた声がした。


 振り返る。


 そこには。


 アリアが立っていた。


「ルーシー師匠の言葉、気にしてる?」


「……うん。」


 カインは苦笑する。


「でも、言われてみれば確かにそうかなって。」


 アリアは静かに頷いた。


「そっか……。」


 アリアはカインの隣へ並んだ。


 二人の間を、柔らかな夜風が吹き抜ける。


 しばらくの間、どちらも口を開かなかった。


 やがて。


「ねえ、カイン。」


 アリアが静かに顔を向ける。


「……?」


「私、剣術ならそれなりに自信あるよ。」


 少しだけ照れたように微笑む。


「今まで、カインにはたくさん助けてもらったし。」


「だから、今度は私が……。」


 そこで、一度言葉を止めた。


「私が剣術、教えてあげよっか?」

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