↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
七星を廻る物語  作者: 豆柴の旅々
第六章 学園

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
81/119

第七十九話 再会の食事

 依頼の話が一段落した頃。


 応接室の扉が静かに開いた。


「皆様。」


 執事が一礼する。


「お食事の準備が整いました。」


 クロエが笑顔で立ち上がる。


「それじゃあ、行きましょう!」


 一行も席を立ち、クロエに案内されて応接室を後にした。


◇


 食堂には、すでに夕食が並べられていた。


 焼きたてのパン。


 彩り豊かな野菜。


 香ばしく焼き上げられた肉料理。


 湯気とともに食欲を誘う香りが広がっている。


「わぁー!」


 シルフィが目を輝かせる。


「美味しそう!」


「ふふっ。たくさんあるから、遠慮しないでね。」


「うん!」


 一行はそれぞれ席につき、穏やかな雰囲気の中、食事が始まった。


 最初こそ静かだった食卓も、しばらくすると自然と会話が弾み始める。


「そうだ!」


 クロエがカインへ顔を向けた。


「カイン!」


「冒険のお話、聞かせて!!」


「俺のですか?」


「うん! 前に会ってから、いろんなところに行ったんでしょ?」


「そうですね。」


「みんなの冒険のお話、聞きたい!」


 それをきっかけに、食卓は旅の思い出話で賑わい始めた。


 北の遺跡。


 迷いの森。


 北の大陸。


 恐ろしい魔物との戦いや、旅先で起きた出来事。


 時にはエリーが話を盛り上げ、シルフィが思い出したように口を挟む。


 そのたびに、クロエは楽しそうに笑っていた。


「へぇー!」


「そんなにいろんなところへ行ったんだ!」


「うん。」


 エリーが頷く。


「大変なことも多かったけど、楽しかったです。」


「いいなぁ。」


 クロエは少し羨ましそうに呟く。


「わたしも、もっといろんなところに行ってみたいな。」


「クロエ様も、今度ご一緒できるといいですね。」


「ふふっ。そうね!」


 クロエは嬉しそうに笑った。


「でも、今は学園生活を楽しみたいかな。」


「そういえば。」


 エリーが何かに気づいたように首を傾げる。


「クロエ様って、十六歳でしたよね?」


「うん。」


「でも、学園って十四歳から入学できるんですよね?」


「そうね。」


「この前お会いした時も、今年から学園に通うって仰っていましたよね?」


「ああ、そのことね。」


 クロエは少しだけ視線を落とした。


「実は、わたし、しばらく病気の療養をしていたの。」


「あっ……。」


 エリーは申し訳なさそうな表情になる。


「すみません。変なことを聞いてしまって。」


 クロエは優しく微笑んだ。


「ううん。気にしないで。」


「今はもう、全然大丈夫だから。」


 クロエはぱっと表情を明るくした。


「それに、今は学園にも通えてるし。」


「毎日楽しいから!」


「それなら良かったです。」


「うん!」


 クロエは嬉しそうに笑った。


 そして、再び冒険の話へ戻っていく。


「それで? 北の大陸では、何があったの?」


「えっと……。」


 カインは少し考える。


「エルダーリッチと戦いました。」


「エルダーリッチ?」


 クロエは不思議そうに首を傾げる。


「それは、すごい魔物なの?」


「はい。」


 セシリアが頷く。


「上位のアンデッドで、かなり危険な魔物です。」


「そうなの!?」


 クロエは目を丸くした。


「すごい! そんな魔物、よく倒せたね!」


 カインは小さく首を振る。


「いえ。ルーシー師匠のおかげです。」


「ルーシー師匠?」


「あっ。」


 カインはルーシーへ視線を向けた。


「ルシア様のことです。」


 ルーシーは優雅な仕草でナプキンを手に取り、静かに口元を拭う。


 そして。


 クロエをじっと見つめた。


「そなた。」


「クロエと言っておったか?」


「はい。」


 ルーシーは何も言わず、しばらくクロエを見つめていた。


「……そうか。」


「お主も、ルーシーと呼ぶがよい。」


 クロエは嬉しそうに微笑む。


「はい! ルーシー様!」


 その後も、食卓には旅の思い出を語る声と、穏やかな笑い声が続いていた。


◇


 その時だった。


「うーん……。」


 カインは隣から聞こえた小さな唸り声に顔を向ける。


 シルフィがフォークとナイフを両手に持ち、難しそうな顔をしていた。


「どうしたの?」


「まだ、この『ふぉーく』と『ないふ』の使い方に慣れなくて……。」


 ナイフを入れる。


 しかし。


 つるり。


 肉は皿の上を逃げてしまう。


「うーん……。」


 悪戦苦闘する姿を見て、カインは思わず笑みを浮かべた。


 すると。


 シルフィは手を止め、何かを思いついたようにぱっと顔を上げた。


「ねぇ。」


「カイン。」


「ん?」


 シルフィはフォークとナイフを置く。


 そして。


 ごく当たり前のことを頼むように。


 にこっと笑った。


「あーんして?」


「…………。」


 あまりにも自然なお願いだった。


 誰も、すぐには言葉を返せない。


 そして。


 食卓の空気が。


 完全に止まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。