第二十話 合流
街の各所で、剣戟と悲鳴が響いていた。
カインとエリーは、逃げ遅れた住民たちを安全な場所へ誘導していた。
そこへ、一団の騎士たちが駆け寄ってくる。
先頭にいたアリアーナが馬を止めた。
その視線が、黒髪の少年へ向く。
「……君。」
カインは振り返る。
「避難誘導をしていたの?」
「はい。」
「どうして、避難する方向が分かるの?」
「敵の位置が分かるんです。」
アリアーナはわずかに目を見開いた。
「敵の位置が……?」
「はい。周囲の存在を感知できます。」
アリアーナは、カインの顔をじっと見つめる。
「……君。もしかして、クロエと一緒にいた……?」
「はい。」
カインは頷く。
「カインです。こちらはエリー。」
「エリーです。」
エリーも小さく頭を下げる。
アリアーナは小さく頷いた。
「一つ、聞かせて。敵について、何か分かった?」
「はい。」
カインは頷いた。
「アンデッドです。」
アリアーナの瞳がわずかに揺れる。
「……やっぱり。」
先ほど、あの兵士と剣を交えた時に感じた違和感。
腕を失い、胸を貫かれても止まらなかった。痛みも恐怖も、感じている様子がない。
カインの言葉は、その疑念を確かなものにした。
「敵の位置は、分かる?」
「はい。」
カインは静かに目を閉じる。
《存在感知》。
意識を街へ広げていくと、いくつもの気配が伝わってくる。
逃げ惑う人々や騎士たち。その中に混じる、異質な存在。
生きた人間とは違い、生命の温もりを感じない。それでも確かにそこにいる何かが、街の至るところに散らばっていた。
カインは目を開く。
「北西の通りに三十くらい。南西の路地裏にも二十ほどいます。中央付近にも複数。」
迷っている時間はない。アリアーナは即座に決断した。
「第一隊は北西へ。第二隊は南西へ向かってください。残りは私と中央部の避難支援を。」
「はっ!」
騎士たちは迷うことなく駆け出していく。
アリアーナは改めてカインを見る。
「ありがとう。この情報で、多くの命が救われます。」
カインは小さく頭を下げた。
「俺たちも、このまま避難を手伝います。」
「お願いします。」
それだけ言うと、アリアーナも馬首を返そうとする。
その時だった。
――パカラッ、パカラッ。
遠くから、馬の蹄の音が聞こえてきた。
「……?」
カインが顔を上げる。
アリアーナも馬上から鋭く音のする方を見据えた。
蹄の音は一つではない。数頭が、こちらへ向かって近づいてくる。
アリアーナの手が静かに剣の柄へ伸びる。
カインも剣へ手を掛ける。
エリーは杖を握り直した。
蹄の音が次第に大きくなっていく。
敵か。
味方か。
まだ、その姿は見えなかった。




