↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
七星を廻る物語  作者: 豆柴の旅々
第一章 旅立ち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/117

第十四話 邂逅

「アリアーナ様、お久しぶりです。」


 クロエが丁寧に一礼する。


 アリアーナはその姿を見ると、小さく微笑んだ。


「やめてよ、クロエ。そんな話し方をされると、よそよそしいわ。」


「でも、人の目もありますし。」


 クロエが困ったように笑うと、アリアーナも小さく肩をすくめた。


「そうね。今日は仕方ないか。」


 それでも、互いに浮かべる笑顔からは、長い付き合いであることが伝わってくる。


「ところで。」


 アリアーナはふと表情を和らげた。


「盗賊に襲われたって聞いたけれど……。」


 一瞬だけ言葉を選ぶように間を置く。


「……体は、本当に大丈夫なの?」


 クロエの瞳が、ほんの一瞬だけ揺れた。


 だが、次の瞬間には、いつもの穏やかな笑顔へ戻っていた。


「……はい。お陰さまで元気です。」


 アリアーナは静かに頷く。


「それならよかった。」


 どこか安堵したような微笑みだった。


「実は、あそこにいる二人が護衛してくれたんです。」


 クロエは少し離れた場所に立つカインとエリーへ視線を向ける。


「まだ若いのに、とっても頼りになるんですよ。」


「そうなの?」


「はい。特にカインは、盗賊の頭領が放った魔法まで斬ってしまったんです。」


「……魔法を?」


 アリアーナは驚いたように目を見開いた。


「ええ。私もびっくりしました。」


 クロエは嬉しそうに笑う。


 アリアーナは改めて二人へ視線を向けた。


◇


 カインは、クロエたちの様子を静かに眺めていた。


(本当に仲がいいんだな。)


 そんなことを考えていると、不意にアリアーナがこちらへ視線を向けた。


 一瞬、二人の視線が重なる。


 透き通るような青い瞳は、宝石のように美しかった。しかし、それ以上に、どこか凛とした強さが感じられた。


 カインは思わず息を呑む。


(……綺麗な人だ。)


 ほんの一瞬。


 それだけだった。


 アリアーナは何事もなかったようにクロエへ視線を戻し、会話を続ける。


「……。」


 その横で、エリーがじっとカインを見つめていた。


「カイン。」


「え?」


「今、見惚れてなかった?」


「えっ!?」


 思わず声が裏返る。


「ち、違うよ!」


「本当に?」


 エリーがじっと見つめる。


 カインは照れくさそうに頭をかいた。


「その……つい見ちゃっただけだよ。」


「ふーん。」


 エリーは少しだけ頬を膨らませる。


「正直なんだから。」


「ご、ごめん。」


「何で謝るの?」


 エリーはくすっと笑う。


 その笑顔を見て、カインもようやく笑みを浮かべた。


◇


 その後もパーティーは和やかに進み、やがて閉会の時刻を迎えた。


 帰りの馬車。


「疲れたぁ……。」


 カインは背もたれに身体を預け、大きく息を吐く。


「思った以上に緊張したよ。」


「私は何人もの方に話しかけられて、もうくたくた。」


 エリーも苦笑しながら肩を回す。


「途中からカインの後ろに隠れちゃったし。」


「俺も令嬢に話しかけられてびっくりしたよ。」


「でしょ?」


 クロエは楽しそうに笑う。


「貴族のパーティーって、あんな感じなんだよ。」


 そして、二人へ優しく微笑んだ。


「本当にお疲れさま。二人のおかげで助かったよ。」


 カインとエリーは顔を見合わせる。


「こちらこそ、ありがとうございました。こんなパーティー、滅多に経験できませんから。」


 クロエは満足そうに笑った。


「楽しんでもらえたならよかった。」


 馬車は夜の街を静かに走り抜けていく。


◇


 一方、その頃。


 エヴァンス公爵邸。


 自室へ戻ったアリアーナは、窓辺に立ち、静かな湖を眺めていた。


 夜風が金色の髪を優しく揺らす。


 ふと、脳裏に浮かぶ。


 黒髪の少年。


 盗賊の頭領が放った魔法を、剣で斬ったという。


(……魔法を斬るなんて。)


 そして、その隣で明るく笑う赤髪の少女。


 ほんの一瞬だけ目が合った。


 それだけのこと。


「……。」


 小さく目を閉じる。


 やがて静かに踵を返し、部屋の奥へ歩き出した。


 窓の外では、月が静かに湖面を照らしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。