第十一話 指名依頼
第十一話 指名依頼
「詳しい内容は、ベルシュタイン侯爵家で直接ご説明されるそうです。」
受付嬢のサラは、一通の紹介状を二人へ差し出した。
「こちらをお持ちになって、侯爵邸へお越しくださいとのことです。」
「侯爵邸へ……。」
カインは紹介状を受け取る。
「いつ伺えばいいんですか?」
「明日であれば、いつでも構わないそうです。」
「分かりました。」
カインが頷く。
「ありがとうございます。」
二人はサラへ頭を下げ、受付を後にした。
◇
翌朝。
湖畔の貴族街。
ベルシュタイン侯爵邸は、朝日を浴びて美しく輝いていた。
門番へ紹介状を渡すと、二人はすぐに屋敷へ案内される。
「こちらで少々お待ちください。」
応接室へ通された二人は、どこか落ち着きなく腰を下ろした。
「少し緊張するね。」
エリーが小声で言う。
「うん。」
カインも苦笑する。
「何の依頼なんだろう。」
しばらくすると――
廊下から軽快な足音が近付いてきた。
扉が勢いよく開く。
「カイン! エリー!」
満面の笑みを浮かべたクロエだった。
「また会えたね!」
「クロエ様。」
二人が立ち上がると、クロエは嬉しそうに笑う。
「そんなにかしこまらなくていいよ。座って、座って!」
クロエ自身もソファへ腰を下ろすと、早速本題を切り出した。
「実はね、二日後にエヴァンス公爵家が主催するパーティーがあるの。」
「公爵家の……。」
エリーが少し驚く。
「そこで二人に、私の護衛をお願いしたいの。」
「護衛……ですか?」
カインは首を傾げる。
「といっても、パーティーの間だけね。警備の人はたくさんいるから、危険ってわけじゃないの。」
クロエは肩をすくめる。
「本当はね、話し相手になってほしいの。」
「話し相手?」
「パーティーって苦手なんだ。」
クロエは小さく肩を落とす。
「知らない人ばっかりだし。」
少しだけ間を置く。
「それに。」
「貴族の男の人って、すぐ話しかけてくるんだよね。」
「虫除けってことですか?」
エリーが苦笑する。
「そういうこと!」
クロエは悪びれもなく笑った。
「もちろん依頼料はちゃんと払うから!」
カインとエリーは顔を見合わせる。
「分かりました。」
カインが頷いた。
「私たちでよければ、お引き受けします。」
エリーも頭を下げる。
「やったー!」
クロエは勢いよく立ち上がった。
そして。
ぱちん。
クロエが指を鳴らす。
すると、まるで待ち構えていたかのように、応接室の扉が開いた。
「失礼いたします。」
数人のメイドたちが整然と部屋へ入ってくる。
「皆さん。」
クロエはにっこり笑った。
「二人を衣装部屋へ案内して。」
「「かしこまりました。」」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
カインとエリーが同時に声を上げる。
「パーティーなんだから、服もちゃんとしないと!」
クロエは当然のように言った。
「さあ、行こう!」
◇
それから、しばらくして――。
応接室では、クロエが腕を組み、真剣な表情で待っていた。
「クロエお嬢様。」
一人のメイドが恭しく一礼する。
「こちらはいかがでしょうか。」
礼服姿のカインが案内されてきた。
漆黒の礼服。
白いシャツ。
胸元には銀の装飾が静かに輝いている。
「うーん……。」
クロエは腕を組んだまま、カインの周りをゆっくり歩く。
正面。
横。
後ろ。
真剣な表情で見つめる。
「かっこいいけど……。」
少し考え込む。
「もう少し爽やかな感じ!」
「かしこまりました。」
「えっ、まだですか!?」
カインは再びメイドたちに連れて行かれてしまった。




