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七星を廻る物語  作者: 豆柴の旅々
第六章 学園

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第百十二話 覚悟

 先に動いたのは、ヴァルガだった。


 一瞬で地を蹴り、上段から大剣を凄まじい勢いで振り下ろす。


 ――ガキィィィン!!


 カインは咄嗟に剣を両手で構え、その一撃を受け止めた。


「ぐっ……!」


 凄まじい重さ。


 両足が地面へ深くめり込む。


(お、重い!!)


 次の瞬間。


 ――ドゴッ!!


 強烈な衝撃が、カインの腹を打ち抜いた。


「がはっ!」


 ヴァルガの膝蹴り。


 カインの身体は大きく吹き飛び、何度も地面を転がった。


「カイン!!」


 エリーが叫び、慌ててルーシーを見る。


「ルーシー師匠!」


「カインが殺されちゃう!」


「助けないと!!」


 アリアたちも、カインの元へ駆け出そうとする。


 しかし、ルーシーは静かに腕を水平へ伸ばし、四人を制した。


「手を出すでない。」


 鋭い声だった。


「これは、誇りを懸けた決闘ぞ。」


 四人の足が止まる。


 そう告げながらも、ルーシーのガーネット色の瞳はヴァルガから一瞬も離れていなかった。


 カインは腹を押さえながら、苦しそうに立ち上がる。


(オーラで防御していなければ……。)


(もう勝負はついてる……。)


 それでも剣を構え、今度は自ら地を蹴った。


 一気にヴァルガの懐へ潜り込み、下段から剣を斬り上げる。


 ――ガキン!!


 ヴァルガの大剣が、その一撃を弾いた。


 だが、カインは止まらない。


 弾かれた勢いのまま身体を回転させ、右から鋭い横薙ぎを放つ。


 ――ガキィン!!


 ヴァルガは大剣を振るい、カインの剣を力強く打ち払った。


(くっ!)


 体勢が大きく揺らぐ。


 そこへ、ヴァルガの大剣が容赦なく横薙ぎに振るわれた。


 ――ガァン!!


 カインは咄嗟に剣で受け止める。


 しかし、勢いを殺し切れない。


 身体ごと吹き飛ばされた。


 地面へ叩きつけられ、すぐに立ち上がろうとする。


 その瞬間。


 ヴァルガが大剣を高く振り上げた。


 二人の距離は十歩以上。


 剣が届く距離ではない。


 しかし。


(まずい!!)


 本能が叫んだ。


 カインは咄嗟に身体を捻る。


 次の瞬間。


 ――ドゴォォォン!!


 凄まじい轟音と共に、大気を裂く衝撃波が一直線に駆け抜けた。


 先ほどまでカインがいた地面が、深く抉れている。


「……っ!」


 カインは目を見開いた。


(剣を振っただけで……。)


(これほどの威力を……。)


 だが、立ち止まっている暇はない。


 地面を蹴り、正面から一気に距離を詰める。


 右上から剣を振り下ろす。


 ヴァルガが大剣を合わせようとした、その寸前。


 カインは剣を止めた。


 身体を沈め、そのままヴァルガの左へ回り込む。


(ここだ!)


 脇腹へ鋭い一閃。


 ――ガキィン!!


「っ!?」


 大剣が、そこにあった。


 ヴァルガは僅かに身体を捻り、大剣の腹でカインの剣を受け止めている。


 カインが目を見開いた。


 次の瞬間、ヴァルガが大剣を押し返す。


 ――ガン!!


 カインの身体が後ろへ弾かれた。


 地面を滑りながら、どうにか着地する。


 ヴァルガが静かに呟いた。


「……足らんな。」


「お前は、そんなものか。」


「…………。」


 カインは何も答えない。


 再び剣を構えた。


 次の瞬間、ヴァルガが地を蹴る。


 一気に間合いを詰め、鋭い刺突を放った。


 カインは寸前で身体を捻って躱す。


 だが、その直後。


 ヴァルガの巨体が回転した。


 ――ドゴッ!!


 強烈な回し蹴りが脇腹へ叩き込まれる。


「ぐあっ!」


 カインの身体は再び吹き飛び、凄まじい勢いで地面を転がった。


 ようやく身体が止まる。


「はぁ……。」


「はぁ……。」


 膝をついたまま、立ち上がれない。


 荒い息だけが、静まり返った学園へ響いていた。


 ヴァルガは動かなかった。


 ただ、カインを見ている。


「……立て。」


「…………。」


 カインの指が僅かに動く。


 だが、身体は持ち上がらない。


 ヴァルガは大剣を下げたまま、静かに口を開いた。


「その程度なら、ここで終わりだ。」


「…………。」


「立たぬというのなら、それでも構わん。」


 カインがゆっくりと顔を上げる。


「貴様を倒したあと、この街を破壊する。」


「なっ……。」


「それでも足らぬなら、迷いの森へ向かう。」


 カインの目が大きく見開かれた。


「約束が違う!」


 ヴァルガは表情一つ変えない。


「俺が約束したのは、この場にいる者だけだ。」


「他は保証せぬ。」


「…………。」


 カインの手が地面を掴んだ。


 指先が土へ食い込む。


 震える膝へ力を込め、ゆっくりと身体を持ち上げていく。


「そんなことは……。」


 剣を支えに立ち上がる。


 そして、もう一度その柄を両手で握った。


「させない!!」


 ヴァルガを真っ直ぐ見据える。


「お前を、ここで……。」


「倒す!!」


「…………。」


 ヴァルガは静かに頷いた。


「……それでいい。」


 一瞬、辺りから音が消えた。


 ヴァルガは再び大剣を構える。


「来い!!」

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