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七星を廻る物語  作者: 豆柴の旅々
第六章 学園

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第百六話 決勝

 大きな歓声が闘技場を包み込んでいた。


 壇上では、マイク・コリンズが声を拡散する魔道具を高く掲げる。


「皆様!」


「お待たせいたしました!!」


「ついに!」


「剣術大会!」


「決勝戦です!!」


 その一言で、闘技場は今日一番の歓声に包まれた。


「それでは!」


「まずは選手の紹介です!」


「突如として学園へ現れた超新星!」


「快進撃を続ける!」


「カイン選手です!!」


「カインさーーん!」


「頑張ってーー!」


「かわいいーー!」


 黄色い歓声が闘技場中へ響き渡る。


 マイクはさらに声を張り上げた。


「続きまして!」


「昨年度優勝者!」


「セントリア学園が誇る剣士!」


「クロフォード選手です!!」


「クロフォード様ーー!」


「素敵ーー!」


「優勝してーー!」


 今度はクロフォードへ大歓声が送られた。


 二人は闘技場の中央へ歩み寄り、向かい合う。


 マイクが右手を高く掲げた。


「それでは!」


「お待たせしました!」


「剣術大会!」


「決勝戦!」


「――はじめーー!!」


 二人は同時に地を蹴った。


 先に繰り出されたのは、互いの胸元を狙う鋭い刺突。


 二人はほぼ同時に身体を捻り、二本の剣先が紙一重で脇を抜ける。


 そのままカインが手首を返し、右から木剣を薙いだ。


 ――カンッ!


 クロフォードは木剣を斜めに合わせると、その勢いを殺さず外側へ受け流す。


 カインの剣先が流れた。


 そこへ一歩踏み込み、左下から斬り上げる。


「っ!」


 カインはすぐに半歩下がった。


 木剣の先端が制服の胸元を掠める。


 だが、カインも止まらない。


 下がった足で地面を蹴り、今度は上段から木剣を振り下ろした。


 ――ガッ!


 クロフォードが正面から受け止める。


 一瞬だけ二本の木剣が押し合い、互いに力の向きを変えた瞬間、同時に弾かれた。


 二人はすぐさま踏み込む。


 ――カンッ!


 カインの横薙ぎをクロフォードが受け流す。


 ――ガッ!


 返された斬撃を、カインが木剣の腹で受け止める。


 ――カンッ!


 そこからカインが剣を跳ね上げ、クロフォードの木剣を押し返した。


 一歩も退かない。


 相手の剣を受ければ、そのまま次の攻撃へ繋げる。


 どちらかが攻めれば、もう一方が受け、すぐに反撃する。


 絶え間なく続く攻防に、ざわついていた会場が次第に静まり返っていった。


 観客席では、エリーたちも息を呑んで二人の攻防を見つめている。


 アリアの深い青の瞳は、激しく交わされる二人の剣を追っていた。


 その隣で、ルーシーだけは腕を組み、静かにカインの動きを見据えている。


 そして。


 ――カンッ!!


 ひときわ高い音とともに、二本の木剣が激しく弾かれた。


 カインが後方へ跳ぶ。


 ほぼ同時にクロフォードも地面を蹴り、距離を取った。


 静寂が落ちる。


 次の瞬間、闘技場は割れんばかりの歓声に包まれた。


「これは素晴らしい!!」


 マイクが興奮した様子で叫ぶ。


「決勝戦にふさわしい攻防です!!」


「お互い一歩も譲りません!!」


 二人は木剣を構えたまま、互いを見据える。


 呼吸を整える時間は僅かだった。


 再び同時に地を蹴る。


 今度はカインが先に仕掛けた。


 真っ直ぐに胸元を狙う刺突。


 クロフォードは木剣を斜めに当て、剣先を右へ流す。


 カインの正面が空いた。


 クロフォードは身体を沈め、そのまま左下から鋭く斬り上げる。


 ――カンッ!


 カインが木剣を戻し、間一髪で受け止めた。


 だが、クロフォードは止まらない。


 弾かれた木剣を返し、その勢いのまま右から斬り払う。


 カインは半歩下がって剣先を躱すと、すぐに踏み返した。


 左から木剣を振るう。


 ――カンッ!


 クロフォードが弾く。


 カインはさらに一歩踏み込んだ。


 右からの横薙ぎ。


 クロフォードは上体を僅かに引き、剣先を躱す。


 その瞬間、カインの右足が僅かに外へ流れた。


 踏み込みすぎた。


 そう見えた。


 クロフォードの視線が、僅かに開いたカインの左側を捉える。


 そして、踏み込んだ。


 その瞬間を、カインは待っていた。


 外へ流れていた右足が地面を強く踏み締める。


 崩れたように見えた重心が一気に前へ戻った。


「なっ――」


 クロフォードの表情が変わる。


 だが、もう遅い。


 カインの身体が低く沈む。


 そこから鋭く踏み込み、一直線に木剣を突き出した。


 ――ドッ!!


 剣先がクロフォードの左肩を捉えた。


「ぐっ……!」


 衝撃でクロフォードの上体が大きく後ろへ流れる。


 踏み止まろうとした右足が地面を擦り、それでも勢いを殺しきれず、片膝をついた。


「やった!!」


 シルフィが思わず立ち上がる。


 一瞬遅れて、闘技場から大歓声が沸き起こった。


「入ったーーー!!」


 マイクの叫びが闘技場へ響き渡る。


「カイン選手!」


「見事な突きです!!」


「クロフォード選手!」


「立てるか!?」


 クロフォードは左肩を押さえながら、ゆっくりと立ち上がった。


「立ったーー!!」


「クロフォード選手!」


「立ちました!!」


「試合継続です!!」


 クロフォードは一度だけ左肩を動かした。


 鈍い痛みが走り、僅かに眉が動く。


 それでも木剣を握り直し、静かに構えた。


 その視線は、ただカインだけを見据えている。


「俺は……。」


 クロフォードの指が木剣を強く握り締める。


「この剣に誓った。」


 ゆっくりと息を吐き、切っ先をカインへ向ける。


「必ず。」


「勝つ。」

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