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七星を廻る物語  作者: 豆柴の旅々
第六章 学園

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第百一話 帰路

 ほどなくして、森の入口から馬の蹄の音が近づいてきた。


 騎士団が洞窟へ到着する。


 その後ろには、クロエからの連絡を受けたアリアたちの乗る馬車も続いていた。


 馬車が止まるや否や、扉が勢いよく開く。


「カイン!」


 アリアは飛び降りるように地面へ降り立ち、倒れているカインのもとへ駆け寄った。


 その後ろから、セシリアも慌てて駆け寄る。


「カインさん!」


 クロエも二人を追うように馬車から飛び降り、そのままカインのもとへ駆け出した。


「カイン! 大丈夫なの!?」


 ルーシーは静かに口を開く。


「安心するがよい。命に別状はない。」


 三人はその言葉を聞き、ようやく安堵の息を漏らした。


◇


 ソフィアの父は、騎士団へ今回の経緯を説明していた。


「娘を助けてくださったのは、あの方たちです。」


 騎士たちを率いる男が深く頷く。


「盗賊どもを拘束しろ!」


「はっ!」


 騎士たちは洞窟へ駆け込んでいく。


 しばらくして、一人の少女を連れて戻ってきた。


「ソフィア!」


「お父様!」


 二人は駆け寄り、強く抱きしめ合う。


「無事でよかった……本当に……。」


 ソフィアも父の胸へ顔を埋めた。


「お父様……。」


 堪えていた涙が溢れ出す。


◇


 しばらくして、落ち着きを取り戻した二人はルーシーの前まで歩いてきた。


 ソフィアの制服は泥で汚れていたが、大きな怪我は見当たらない。


「ルーシーさん。本当にありがとうございました。」


 ルーシーは静かに尋ねた。


「怪我はないかの?」


「はい。おかげさまで。」


「ならばよい。」


 ルーシーは優しく頷く。


「学友を助けるのは当然のことじゃ。」


 そして、眠るカインへ視線を向けた。


「礼なら、そこに寝ておるカインへ言うがよい。」


 ソフィアは眠るカインを見つめる。


「ありがとうございます……。」


 小さく頭を下げた。


◇


 セシリアはカインへ治癒魔法を施していた。


 柔らかな光がカインの全身を包み込み、やがて静かに消えていく。


「傷は治りました。ですが……疲労が大きいようです。」


「まだ意識は戻りません。」


 皆が心配そうにカインを見つめていた。


 ソフィアも不安そうに尋ねる。


「カイン……大丈夫ですか?」


 ルーシーは静かに答える。


「心配ない。じきに目を覚ますじゃろう。」


 その一言に、皆の表情は少しだけ和らいだ。


◇


 そこへ、リーナがアリアへ歩み寄る。


「アリアお嬢様。騎士団より、盗賊の拘束が完了したと報告がございました。」


 アリアは頷く。


「私たちはもう少しだけ、カインの様子を見てから戻るわ。」


「ソフィアたちを連れて、先に戻ってもらって。」


「かしこまりました。」


 リーナは騎士団へ伝えに向かう。


 ソフィアの父は何度も何度も頭を下げた。


「本当にありがとうございました! この御恩は一生忘れません!」


 騎士団は盗賊たちとソフィア親子を連れ、街へ帰っていった。


◇


 静かな森。


 月明かりが木々の間から差し込んでいる。


「う……。」


「うぅ……。」


 カインが小さく身じろぎし、ゆっくりと目を開ける。


 すると――


 エリー。


 アリア。


 セシリア。


 シルフィ。


 そしてクロエ。


 五人がじっと顔を覗き込んでいた。


 少し離れた場所では、ルーシーが腕を組んで静かに立っている。


「……っ!」


「うわぁっ!」


 カインは飛び起きた。


「び、びっくりした!」


 アリアがほっとしたように微笑む。


「カイン。大丈夫?」


「……うん。ありがとう。」


 クロエも安堵したように息を吐いた。


「よかった……。本当に、目を覚まさないかと思ったんだから。」


「ご、ごめん。」


 エリーは腕を組む。


「もう! 本当に心配したんだから!」


「セシリアなんて、泣きながら治癒魔法をかけてたのよ。」


「えっ!?」


 セシリアの顔がみるみる赤くなる。


「エ、エリーさん……そ、それは……。」


「で、でも……私、本当にカインさんが心配で……。」


 そう言い終える頃には、また少しだけ目が潤んでいた。


 シルフィが首を傾げる。


「あれ? エリーも泣いてたよね?」


「なっ! 泣いてなんかないわ!」


「埃が目に入っただけ!」


 その一言に、皆の口元が緩む。


 穏やかな笑い声が静かな森へ響いた。


◇


 ルーシーが踵を返す。


「さっさと帰るぞ、カイン。」


「お主がいつまでも寝ておるから、すっかり遅くなったわ。」


「すみません、ルーシー師匠。」


 ルーシーは夜空を見上げる。


 月が森を静かに照らしていた。


「もうこんな時間じゃ。今日は街で出店でも巡ろうぞ。」


「夜の『しょっぴんぐ』とやらも、なかなか趣がありそうじゃ。」


 少しだけ口元を緩める。


「カイン。妾は串焼きを所望する。」


 カインも笑顔で頷いた。


「はい! ルーシー師匠!」


 再び、森へ笑い声が響く。


 長い一日を終えた一行は、穏やかな帰路についた。

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