第94話 消えた道
地図から一本の道が消えていた。
夏休みのある日。
ログインしていない時間帯にCRO公式アプリから通知が届いた。
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【グループチャット参加申請】
Yuruからグループチャットへの参加申請が届いています。
―――――
「……グループチャット?」
とりあえず〈承認〉を押してチャットを開いてみる。
すでにミナトも参加していた。
―――――
Yuru:きた
ミナト:お、今日はログインしてないんだな
ザン:今日はって?
ミナト:最近珍しくよくログインしてるだろ
ザン:休みだからな
Yuru:そう考えると三人ともオフラインなの、珍しくない?
ザン:ですかね? というか、CROに入ってなくてもグループで話せるんですね
Yuru:うんうん、便利でしょ
ミナト:それよりさ、Yuruがログインしてない時間の方が珍しくね?
Yuru:私だってやらないときあるよ
ミナト:いつ見てもいる印象なんだけど
Yuru:ふーん、失礼だな
ミナト:ただ、平日だいたい同じ時間に一回落ちてるよな
Yuru:え……なんで知ってるの?
ミナト:ログインとログアウトの通知
Yuru:……何それ
ザン:俺も知らない
ミナト:フレンドごとに通知設定できるだろ。オンにした相手がログインしたりログアウトしたりするとアプリに通知が来るやつ
ザン:ゲームに入ってなくてもわかるってこと?
ミナト:おう。ゲーム内と公式アプリで設定共通だから
Yuru:……待って
ミナト:何だよ
Yuru:じゃあミナっち、わざわざ私の通知設定をオンにしたってこと?
ミナト:……そりゃまあ。狩りとか……誘うときとかあるだろ
Yuru:誘われたことない。怖いんだけど
ミナト:なんでだよ! お前以外からもログインとかログアウトの通知来るんだからな!
ザン:そっちはそっちで怖いんだけど
ミナト:お前まで乗るなよ!
Yuru:私がログインしました、ログアウトしましたって毎回スマホに来るんでしょ?
Yuru:仕事中にも?
ミナト:そりゃ通知は来るけど毎回じっと見てるわけじゃねえからな!
ミナト:俺だって忙しいんだぞ
Yuru:……へえ
ミナト:その「へえ」やめろ
Yuru:ちょっと面白くなってきた
ミナト:お前、最初から遊んでるだろ……
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どうやら仕様でそういうことがわかるらしい。
ただよく聞いてみると、自分側の設定で通知しないようにはできるらしい。
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ザン:でもYuruさん、ほんとに落ちる時間って決まってるんですか?
Yuru:仕事ある日はわりとね
ミナト:へー仕事してたんだ
Yuru:またしても失礼だな
Yuru:家で画面見ながらやる仕事だから時間は結構決まってるよ
Yuru:CROの予定がなければだけど、ちゃんと外にも出るし
ミナト:CROが予定扱いなのかよ
Yuru:予定でしょ
―――――
そこは迷わないらしい。
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ザン:それでグループチャット作ったのは何かあったんですか?
Yuru:そうそう、アップデート情報見たよね?
ザン:はい
Yuru:じゃあ話早い
Yuru:私たち、卵持ってるよね
ザン:ケレンシアですよね
ミナト:俺もあれ見て真っ先に思った
Yuru:対象になるかは分からないけど、かなり怪しいよね
ザン:卵の表示は変わってました?
Yuru:変化なし
ミナト:こっちも
ザン:俺も同じです
ミナト:実装はもう少し先だな
ザン:楽しみ
Yuru:じゃあ実装されたら三人で一回集まらない?
ミナト:いいな
ザン:了解です
Yuru:その前に詳細が出たらここに貼っておくよ
ザン:お願いします
ミナト:じゃあアップデート後にゲーム内で集合で
Yuru:おっけ
ザン:了解
ミナト:それまで卵割るなよ
―――――
そこで話は一旦終わった。
《ケレンシア》については今のところアップデートを待つしかない。
あと気になることとしては、リニューアル前の初期村だろうか。
今回は《ルガート村》と《ヴェスター村》。
俺はダークエルフの初期村《ヴェスター村》には行ったことがなかった。
ベルカ村やシルヴェイル村のように今回も何かあるとは限らないが、今のヴェスター村やその周辺がどうなっているのかくらいは変わる前に見ておきたい。
同時にこれまでのヴェスター村がどんな村で、そういう地理関係かも押さえておいてもいいかもしれない。
ただ、《ヴェスター村》はダークエルフ領域の初期村だ。
俺がよく調べに行く王都歴史院にはそこまで離れた地域の地図があるのかは分からない。
「まあ、聞くだけ聞いてみるか」
なければそのまま《ヴェスター村》へ向かえばいい。
そう思いその日のうちにCROへログインして王都歴史院へ向かった。
◆◇◆◇◆
最近はここへ来る機会も増えたと思う。
俺は受付の近くにいたファナへ声をかけた。
「こんにちは」
「ザンさん。今日も調べものですか?」
「はい。ちょっと聞きたいんですが、ヴェスター村の昔の地図とかってここにもありますか?」
「ヴェスター村ですか?」
「ダークエルフ領域の初期村なんで、さすがに王都にはないかなとは思ったんですけど」
「それでしたら第二資料庫を見た方がいいかもしれませんね」
「第二資料庫?」
「各種族領域から集められた地域資料を置いている書庫です。ヴェスター村の地図ならそちらにあると思いますよ」
「おお、王都以外の資料もあるんですね」
「ええ。ただ、各地域の細かい記録まで全部こちらに集まっているわけではありません。その土地の町や村に残っている資料の方が詳しい場合もありますから」
星花祭のときは中央の地図や閲覧台で、王都北部に残る記録について調べた。
それ以降何度もここに来ていたが、まだ入ったことのない場所があるらしい。
「じゃあ、第二資料庫を見てもいいですか?」
「もちろんです。ザンさん、閲覧証は今お持ちですか?」
「はい」
インベントリから《王都歴史院閲覧証》を取り出す。
星花祭のときにファナから受け取った金属製の札だ。
「少しお借りします」
「はい、どうぞ」
ファナへ閲覧証を渡す。
彼女は受付の奥へ回り、机の端に置かれていた器具へ閲覧証を差し込んだ。
そのまま待っていると、器具の上に淡い光が走り、ファナが閲覧証を抜いて戻してくれる。
「はい。第二資料庫も閲覧できるようにしておきました」
閲覧証を受け取ったところで表示が浮かんだ。
―――――
《王都歴史院閲覧証》が更新されました。
閲覧可能区域が追加されました。
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「おお、変わってる。ありがとうございます」
「第二資料庫は奥の通路を右へ進んだところです」
「分かりました」
教えられた通路を進む。
中央の広い空間から離れると人の姿も少なくなり、少し先に《第二資料庫》と表示された扉があった。
扉の横にある読み取り部分へ《王都歴史院閲覧証》を近づけてみる。
小さな音が鳴り扉が開いた。
中へ入ると壁際には地域ごとに分けられた資料が並んでいる。
奥には地図を広げて確認できる閲覧台もいくつか置かれていた。
そのうちの一つで、ダークエルフ領域を選んでみる。
地域の一覧を見ていくとその中に《ヴェスター村》もあった。
まずは現在の地図を表示する。
村から伸びる街道や周辺の集落や町などを確認していく。
ヴェスター村へ行くだけならこれで十分だった。
少し古い地図も開いてみる。
最初のうちは現在のものと大きく変わらない。
さらに古い地図へ切り替えたところで手が止まった。
「……あれ?」
街道の途中から西へ外れる道が一本ある。
その線を目で追うと、先には大きめの村があった。
現在の地図へ戻してみる。
村自体は同じ場所に残っていて、今も別の道が繋がっている。
なくなっているのは西へ伸びていた道だけだった。
「ここか」
他の年代もいくつか見てみる。
古い地図でははっきり描かれていた道が新しくなるにつれて細い線へ変わっている。
一番新しい地図まで戻す。
西の道は載っていなかった。
「……消えてるな」
道が分かれていた辺りを拡大する。
現在の地図ではその先は林と丘陵になっているようだ。
――村は存在している。
――そこへ行くための道も別にある。
でも、昔そこへ続いていた道だけが使われなくなったということだろうか。
なんだか面白くなってきた。
道が分かれていた位置をスクリーンショットに残す。
現地で見るならこれで十分だろう。
表示していた地図を閉じ、第二資料庫を出た。
中央の広間まで戻り、ファナにお礼を言ってから歴史院を出た。
俺はそこで《灰冠戦役・第七補給隊名簿》も開いてみた。
歴史院へ来た後には確認している。
今も未開示のまま残っている《第二中継点》。
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未開示記録:《第二中継点》
必要な条件を満たしていません。
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「……変わってないか」
俺は名簿を閉じ、今度はさっきスクリーンショットを撮った地図を開いた。
道が分かれていた位置もマークしてある。
現在の地図には載っていなくてもその場所へ行けないわけではない。
「よし、見に行ってみよう」
第7章、始まりました!
まずはご報告とお礼から。
◎ブックマーク
ブックマークがなんと3000を超えておりました!
3000人もの方が続きを追いかけてくださっていると思うと、改めてすごい数字だなと……。
いつも本当にありがとうございます。
◎【四半期1位】
まさかの四半期1位にもなっておりました!
一時的なものですが、こちらも本当に嬉しいです。
これも、ここ数か月読んでくださったり、評価やブックマークをしてくださった皆さまのおかげです。ありがとうございます。
VRMMOジャンルには私も大好きな伝説級の作品がたくさんあるので、そんな作品たちと少しでも近いところに並べていただけるだけで嬉しいです。
なんだか感慨深いものがありますね。ありがとうございます。
◎チアーズ
申し訳ないお話なのですが、このタイミングで「なろうチアーズプログラム」をONにさせていただきました。
カクヨム様にも似たような仕組みがあるので、こちらでも使ってみようかなと。
少し調べてみたところ、もしかするとコーヒー豆代くらいにはなるかもしれないと知り……思わずONにしてしまいました。
お許しください。
コーヒー豆に負けました。
◎新作?
それともう一つ。
実は以前からCROと並行して、別のVRMMOものを少しずつ書き進めております。
(止まっている他作品も少しずつ進めていますが。。。)
こちらも近いうちに短編として公開できればと思っています。
CROを書きながら思いついたものを放り込んでいるネタ帳があるのですが、その中には「これ書きたいけど、CROの世界観ではさすがに無理だな……」というネタが結構ありまして。
今回はそんなネタがベースとなり、CROとは全く別のお話になっております。
投稿した際には活動報告でもお知らせいたしますので、もし興味がありましたら読んでいただけると嬉しいです。
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それでは第7章からも、引き続きまったりよろしくお願いします。
毎日更新……厳しい日があるかもしれませんが、できるだけ頑張りたいと思います。




