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攻略組が帰った後から始まるVRMMO 〜イベントに遅れた俺だけが、誰にも拾われなかったユニークを見つける〜   作者: 桜めんと
第六章『いつもと違う道』

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第88話 継歌の種

 

「えっ……私としては二人がすでに知り合いってところの方が驚いたんだけど……」


 リヴィアが戸惑ったように聞くと、Nanareeはまだ信じられないものを見るような顔をしていた。


「いや、こっちの方が驚くよ。《吟遊詩人》クエの最後に歌えたとは聞いてたけど、もう普通にCROでも話せてるとは思わなかったし」


「……うん。クエストの中だったけど、人前で歌えたことがきっかけになったのかも……。あのときのことはNanaにも少し話したよね」


「そこまでは聞いた。でも……これまでは私相手でもCROの中だとチャットだったじゃん。ここ最近会っていなかったのもあるけど……」


「まあ……しばらく時間が合わなかったからね。心配かけたならごめん」


「謝らなくていいって。無理に話せるようになってほしかったわけじゃないし」


 Nanareeが少しだけ困ったように笑う。


「ただ……前より楽に遊べてるならそれでいい。ほんとに良かった」


 Nanareeが少し嬉しそうに笑ってから、今度は俺を見る。


「っていうか、ザンさんはもう慣れてる感じだねえ」


 Nanareeが面白そうに目を細めた。


「……Nana、その顔やめて」


「何も言ってないでしょ?」


「言ってなくても分かる」


 二人のやり取りを見ているだけでもかなり付き合いが長いのが分かる。


「二人、本当に仲良いんですね」


「まあ、幼馴染だからね。そういえばザンさんにはちゃんと説明してなかったっけ。リヴィアと一緒に《吟遊詩人》のことを調べて、世界樹の上まで登ったのも私だよ」


「あぁ、はい。さっき吟遊詩人のサブ職クエを探すの手伝ってくれてた友達とは聞いてたので」


 先ほどリヴィアが話していたCROに詳しい友達。

 ただ、《Fangline》のNanareeだったとは思わなかった。


「いつも私と遊ぶときは『エレナナ』っていうエルフのサブキャラを使ってるんです。だから今日そっちで来てたら、ザンさんはたぶん分からなかったと思います」


「エレナナ……ああ、なるほど。Nanareeを並べ替えてるんですね」


「そう。『Nanaree』は攻略するときが中心で、サブの『エレナナ』の方はリヴィアと遊ぶためだけに作った感じかな。けど、最近は息抜きになってるんだよね、サブキャラ」


 今回のイベントでは他の種族の初期村やその周辺へ行く機会が何度もあった。

 今まで自分のキャラを増やそうと思ったことはなかったが、別の種族で最初から遊んでみるのも少し面白そうな気がしていた。


「リヴィアさんはサブキャラ作ってるんですか?」


「私はまだこのキャラだけです。ザンさんは?」


「俺もこの一人だけですね」


「じゃあ二人ともサブキャラ作るなら……何の種族にしてみたい?」


 Nanareeに聞かれ、リヴィアはしばらく考えている。

 俺の方は今回のイベントで一つ気になる種族ができていた。


「俺は今ならビーストフォークですかね」


「へぇ。ザンさん、ビーストフォークに興味あったんだ。まぁ……そうじゃないとマスターと出会わないか」


「今回のイベントで接する機会が多かったので。初期村にもよく遊びに行きましたし。それに尻尾とか耳とか……結構かわいいじゃないですか」


 横にいたリヴィアがぴたりとこちらを見る。


「え……また耳ですか?」


「そういえばなんか聞いたなぁ……」


 Nanareeが何かを思い出したように笑う。


「星花祭の後だったっけ。ザンさんに耳をずっと見られたって」


「ちょっと、Nana――」


 今度はリヴィアがNanareeを見る。


「……そんな話までしてたんですね。あのときは……すみませんでした。そういうつもりではなかったんですが」


「いえ、珍しそうに見られたっていう話をNanaにも言っただけです」


「――でも、今も耳がかわいいって言ったよね」


「それはビーストフォークという種族の話ですよ」


 Nanareeが自分の両耳を手で押さえながら、ますます楽しそうに笑った。


「なんかマスターみたいになってきたね、ザンさん」


「ロヴェルさんですか?」


「あの人も獣の耳とか尻尾とか、動きとか……ずっと見てくるから」


「俺はそこまでじゃないと……思いたいんですが」


 そういえば《紅狼ヴァルグ》から逃げるときに、Nanareeが俺の名前を見て一瞬だけ反応していたのをふと思い出す。


「……もしかして紅狼ヴァルグのとき……すでに俺のこと気づいてたんですか?」


「うん。名前は何度もリヴィアから聞いてたしね。それよりさ、もう一緒にパーティ組んで動いたこともあるわけじゃん、私たち。だから敬語はいらないよ。今みたいにNanaさんじゃなくていい。私もザンって呼ぶし」


「……まあ、Nanaさんがそう言うなら」


「いや、『さん』ついてるよ」


「急に取れって言われてもなぁ……」


「ゲームなんだからいいでしょ? なにもリアルネームを呼び捨てにしろって言ってるわけじゃないんだから。それに私、Nanaだよ」


「それが……?」


「Nanaって数字の『7』みたいなものでしょ。数字にさん付けする?」


「……しない」


「じゃあそう思えば取れるよね」


「そういう理論なのか……。まあ分かった、Nana」


「うん。それでよし!」


 随分と強引な理屈だが、Nanareeは満足そうに頷く。

 その横でリヴィアがじっと俺たちを見ていた。


「リヴィアさん、何かありましたか?」


「……いえ、別に」


「リヴィアは前から何度も会ってるのに、まだザンさんなうえに敬語なんだねえ」


「私はこの方が話しやすいの」


「ふーん……」


「……何、その反応」


「別に?」


 リヴィアが溜め息を吐いた。

 Nanareeは笑った後、ようやく本題へ戻る。


「それで……今日は何があったの?」


「――あ、そうだった」


 リヴィアが《継歌の種》を共有する。

 Nanareeはしばらく表示を読んでから首を傾げた。


「……それで、何が変わったの? その種は覚えてるけど、だいたいこんな説明だった気がする」


「ここ。『種の内にかすかな響きが生まれている』ってところ」


「これが増えたの?」


「うん。手に入れたときに撮ってたスクリーンショットにはなかった」


 リヴィアが以前の表示も共有する。

 二つを見比べたNanareeが頷いた。


「ほんとだ。いつ増えたかわかるの?」


「それが分からないの。気づいたのは二つの転職クエストを最後まで進めた後なんだけど、途中でこの種は確認してなかったから」


「え、《リーフバッファー》と《スピリットウォーダー》の転クエを両方とも最後まで?」


「そう。最初は少しずつ進めて比べるつもりだったんだけど、途中からどっちも続きが気になっちゃって……結局最後までやったのにまだ決められてない」


「……それは……リヴィアならやりそうだなぁ……」


「ザンさんと同じ反応するのやめて」


「俺そんな反応してましたっけ」


 三人で少し笑った後、Nanareeが《継歌の種》へ視線を戻す。


「それで、二人ではどこまで考えたの?」


「クエスト更新も通知もなかったし、途中で種を確認してなかったから、今の情報だけだといつ変わったかまでは絞れないって」


「なるほど。じゃあそこからか」


 Nanareeが少し考える。


「そのときは三つともインベントリに入ったままだったんだよね?」


「うん」


「じゃあ今度は出してみない? インベントリに入ってるだけじゃ反応しない可能性もあるし」


「出す? あ、そっか」


「三つとも実体化して一緒に置いてみよう」


「……何か起きるかな」


 リヴィアがインベントリを開く。

 《継歌の種》を実体化させ、その横へ二つの転職用アイテムを置いていく。

 目の前に三つが揃った。


「これで表示を開いてみます」


 リヴィアが《継歌の種》の情報を表示する。

 数秒は何も起きなかった。

 でも、表示が一度だけ淡く揺れる。


「今、動いた?」


「……動いた」


 俺が答えた直後、説明文の下に新しい文字が浮かび上がった。


―――――

種の内にかすかな響きが生まれている

二つの異なる道の気配に触れている


種はまだ芽吹いていない。

―――――


「また……増えた……?」


 リヴィアが小さく呟く。

 今度はいつの間にか変わっていたわけじゃない。

 三人で見ている目の前で新しい一文が追加された。


「二つの異なる道……」


 Nanareeが並べた二つの転職用アイテムを見る。


「これのことかな」


「今のタイミングだとそう見えますね」


「でも決めつけるのはまだ早いか」


「うん。とりあえず、今やったら変わったってところまでだね」


 俺は追加された一文より、その一つ上をもう一度見る。


 ――種の内にかすかな響きが生まれている。


 さっきから頭に残っている言葉。

 今度はただ気になるだけじゃなかった。

 どこかで似たような文を見た気がしていたからだ。

 


 

CROは+1キャラまでは無料で枠が開放されています。

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― 新着の感想 ―
待てマテまて、運営に「癖」を見抜かれてるってか?
嫉妬してるリヴィアさん可愛すぎませんか? 種が二次職に反応してるのは確かだな⋯⋯
耳フェチ認定されそうになってる……w
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