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攻略組が帰った後から始まるVRMMO 〜イベントに遅れた俺だけが、誰にも拾われなかったユニークを見つける〜   作者: 桜めんと
第六章『いつもと違う道』

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第89話 新しい道

 

「……かすかな響き」


 俺が呟くと、リヴィアがこちらを見た。


「ザンさん、何か気づいたこと……ありましたか?」


「……いえ――ああ……もしかして」


 そもそも、今変化を起こしている《継歌の種》を手に入れたのは《吟遊詩人》のサブ職クエストの報酬だった。

 あのクエストは最初も最後も《世界樹の歌碑》が大きく関わっていた。

 そう考えると――。


「……《世界樹の歌碑》」


「え?」


「最初にリヴィアさんと出会って《世界樹の歌碑》を見たとき、リヴィアさんの方には確か『かすかな旋律が聞こえます』って出てましたよね」


「あ……」


 リヴィアも思い出したように《継歌の種》を見る。


「そうです。最初……かすかな旋律――でした」


「今回は『かすかな響き』ですけど、この流れだと何か関係してるんじゃないかなと」


「それなら……最後に手に入れた《世界樹の歌碑》の記録……でしょうか」


 俺とリヴィアの二人にもらえた報酬。

 俺のインベントリにもある。

 そこまで聞いていたNanareeが俺たちを見る。


「それって、今も開ける?」


「うん、開ける」


「じゃあ一回見てみよう」


 リヴィアがインベントリから《世界樹の分枝歌》を選んで共有した。


―――――

《世界樹の分枝歌》

種別:記録

レアリティ:エピック


効果:世界樹の歌碑に記録された歌詞と旋律を閲覧できる。


説明:世界樹のもとに残った者と若枝を携えて各地へ旅立った者たちが交わした歌。

遠く離れても、同じ根から分かれたことを忘れないために歌い継がれていた。

―――――


「……これ、エピックなんだ。記録アイテムでエピックなんて初めて見たかも……」


 Nanareeが表示を見ながら言う。


「それに《継歌の種》はレジェンドでしょ。改めて見ると、どっちもかなりのレアリティだね。何かあっても不思議じゃない」


 リヴィアが開いた記録の歌詞部分へ視線を落とす。


「読んでみて」


「わかった。残る者は旅立つ若枝の名を歌い継ぐ。旅立つ者は始まりの森を胸に歌う――」


 歌っているわけではない。

 記録された言葉を一つずつ確かめるように読み上げている。


「たとえ遠き地に新たな木陰を育てようとも、我らが一つの根より分かれたことを忘れぬように」


 リヴィアが読み終えた――そのときだった。

 実体化した《継歌の種》が淡く光る。


「……光った」


「種の方は?」


 リヴィアが表示を切り替える。


―――――

種の内にかすかな響きが生まれている

二つの異なる道の気配に触れている

古き歌の記録と響きが重なっている


種はまだ芽吹いていない。

―――――


「また増えた……」


 新しく加わった一文を三人で見つめる。

 古き歌の記録と響きが重なっている。

 直前に開いた《世界樹の分枝歌》と無関係とは思えない。


 その直後、《継歌の種》の光が一層強くなった。


「何……?」


 小さな種の表面に細い裂け目が走る。

 そこから、小さな緑色の芽が顔を出した。


「え……芽?」


「うん、芽が……出た……」


 ――次の瞬間。

 俺たち全員の視界の中央に大きなウィンドウが開いた。


―――――

【ワールドアナウンス】


種族エルフにおいて、新たな二次職派生が確認されました。

―――――


「…………え?」


 リヴィアの声が漏れる。


「二次職……派生?」


 Nanareeも表示を見たまま固まっている。

 芽を出した《継歌の種》。

 そして、まだ視界の中央に残っているワールドアナウンス。


「これ……今の……これですよね?」


「たぶん。タイミング的にそうとしか思えない」


「でも、私……」


 リヴィアが言いかけて視線を止めた。


「……あ」


「どうしました?」


「私のところにもう一つ……出てます」


 リヴィアがその表示を共有する。


―――――

《???》

新たな二次職派生ルートが確認されました。

転職条件:未達成

―――――


「やば……本当に三つ目なんだ」


「でも名前も条件も分からないよ」


 リヴィアが芽を出した《継歌の種》と表示を交互に見る。

 俺も改めて種の情報を確認すると、表示が変わっていた。


―――――

《継歌の種》

種別:ルート固有アイテム

レアリティ:レジェンド

譲渡:不可


長く届かなかった歌を受け取り、その先へ歌声で繋いだ者に宿る小さな種。

二つの異なる道と古き歌の記録に触れ、小さな芽が生まれている。

芽はまだ次の響きを待っている。

―――――


「私、何か別の歌曲スキルとかクエストに繋がるのかと思ってました」


「俺もです」


 Nanareeも同じ表示を見ていたが、ふと表情が変わった。


「……待って。これってそもそも《吟遊詩人》の方で手に入れたアイテムだよね?」


「うん」


「《世界樹の分枝歌》もそう。でも……今出たのは《吟遊詩人》の何かじゃなくて、エルフの二次職派生……か」


 どういう繋がり方をしたのかはまだ分からない。

 ただ、今まで別々だと思っていたがそうではなかったということだろうか。


「これって、いわゆるレア職ってやつだよね」


 Nanareeが《???》の表示を見ながら言う。


「おそらく。レア職って他の種族でも出てるんでしたっけ?」


「うん。今までにも二回ワールドアナウンスが出てるよ」


「そうなの?」


 リヴィアが首を傾げる。


「最初がドワーフで半年前。そのすぐ後くらいにダークエルフ。で、今回がエルフだから、まだ出てないのはヒュームとビーストフォークかな」


「じゃあ、種族ごとにあるってことですかね」


「そこまでは分からないけど、これだけ種族名付きで出てるなら、次にヒュームかビーストフォークが出てもおかしくないと思う」


 俺も以前見たワールドアナウンスを思い返す。


「ドワーフとかダークエルフのレア職って名前や条件まで分かってるんですか?」


「条件は全然だと思うよ。名前は……私も一回だけ聞いたことある気がするけど……」


「あるの?」


「フレンドのフレンドの、そのまた知り合いくらいの人が実際になった人を知ってるとかでね。普通の二次職とは全然違う名前だったのは覚えてるんだけど、肝心の名前は忘れた」


「じゃあ今は名前くらいしか判明していない感じか……」


「ほんとに情報がないんだよね。別に本人が全部隠してるっていうより、なった人自体がほとんどいないんじゃないかな。今回のこれだって、何が条件なのかまだ全然絞れてない感じだし」


 名前すら表示されていない。


「とりあえず、この情報はここだけにしておこう」


「そうしよう」


 Nanareeが《世界樹の分枝歌》へ目を向ける。


「今分かるのは二つの転職クエストを最後まで進めてたことと、《吟遊詩人》のクエストで《継歌の種》を手に入れてたことかな。あとは……こういう記録アイテムが関係したってことくらい?」


 その言葉に少しだけ胸が鳴った。

 古い木橋で拾った泥の荷札。

 あとから別の記録につながったもの。

 俺のログも最初から全部の意味が分かっていたわけじゃない。


「……ザン?」


「あ、いや。なんでもない」


 今の話と同じだと決まったわけじゃない。


「どれがどこまで条件なのかはよく分からないね」


 そのとき、Nanareeの視線が何度か動いた。


「……もう《Fangline》のクラチャで話題になってる」


「早いな」


「そりゃワールドアナウンスだからね。誰か情報持ってないかって来てる。掲示板もやばそう」


 リヴィアがNanareeを見る。


「リヴィアのことは言わないよ。《継歌の種》も今試したことも……絶対勝手に共有しない」


「……ありがとう」


「どこまで話すかはリヴィアが決めればいいよ」


 Nanareeが芽を出した《継歌の種》をもう一度見る。


「でも、面白いよね。ザンやリヴィアといると、攻略だけがCROの全てじゃないってすごく思うよ」


「そう?」


「うん。みんなが攻略して先に進んだ場所にも……まだ知らないものって残ってるんだなって」


 Nanareeが少し笑う。


「だから、続きを調べるなら絶対私も混ぜてね」


「それはもちろんだよ」


 Nanareeが嬉しそうに笑った。


「じゃあ、次はこの《???》の条件とやらを探す感じかなー」


「そうしたいところなんだけど……私、しばらく忙しくて、そろそろ落ちなきゃ――」


 リヴィアが言いかけたところで、Nanareeが声を上げる。


「えええ、私早く進めたい。じゃあリヴィアのキャラ貸して」


「そんなことできないじゃん。生体認証あるでしょ」


「……分かってるけどさあ」


 Nanareeが名残惜しそうに言う。


「まあ、これは逃げないし。落ち着いてからでいいんじゃないですか」


「はい。終わったら、また続きを調べたいです」


「じゃあそのときは言ってよ」


「分かってるよ」


 リヴィアが小さく笑ってから、今度は俺を見る。


「ザンさんにも……そのとき、また声をかけますね」


「はい。楽しみに待ってます」


 俺はそう返してからもう一度表示に目を向けた。


―――――

《???》

新たな二次職派生ルートが確認されました。

転職条件:未達成

―――――


 条件や行き先はまだ分からない。

 それでも今まで見えていなかったリヴィアにとっての『新しい道』が一つ追加されている。


 その先に何があるのか――俺はかなり楽しみになっていた。

 

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 前話の心当たりは世界樹の歌碑でしたか。 新たな二次職、判明するとアナウンス流れるんですね。 どういったものなのか、楽しみです。
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