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第56話 進むべき道

 

「三つ目の鐘と笛の木……。どちらもカレドの景色なのかもしれませんね」


 時刻を確認するともう夜も遅かった。


「そろそろ今日は終わりますか?」


『はい。次はカレドですね。ただ、明日はログインできなくて……』


「分かりました」


『明後日の22時ならログインできます。ザンさんは大丈夫ですか?』


「はい。その時間なら大丈夫です」


『では明後日の22時にシルヴェイル村の転移門前でお願いします』


「分かりました」


『それでは私はここで失礼します』


「はい。お疲れさまでした」


『お疲れさまでした』


 リヴィアは小さく頭を下げると、ログアウトしていった。

 俺も少し遅れてその日は落ちた。



◇◆◇◆◇



 翌日ログインすると、周囲には薄暗い古宿の一室が広がっていて一瞬驚いた。

 昨日、その場でログアウトしたことを思い出しながら、俺は帰還石を使う。

 北の《宿場町アルネイ》で弓矢や回復薬などの消耗品を確認したものの、今日はなんだか狩りへ行く気分にはなれなかった。


 少し考えてから、久しぶりにベルカ村にでも行ってみることにした。

 王都まで戻り、ベルカ村へ飛ぶ。

 足元の光が消えると、見慣れた土の道と薬草畑が目に入ってくる。

 ベルカ村に特に用事があったわけではない。

 俺は村の井戸の傍に置かれた長椅子へ腰を下ろし、周囲の景色を眺めながら公式フォーラムを開いた。

 サブ職に関する掲示板を選び、最近見つかったものや取得条件についての書き込みを流し読みしていく。


 リヴィアにはなりたいサブ職があった。

 だから手掛かりが途切れても、自分で調べながら今も《まだ歌われない詩》を進めている。

 俺もそろそろ自分のサブ職について考えてみようと思ったが、ゲームと言ってもそれはリアルの進路と同じで、すぐに答えが出るものではなかった。


 大学はとりあえず資格に繋がる学科へ進んだ。

 その資格に興味が全くないわけでもない。

 でも、それが本当に自分のやりたいことなのかと聞かれると、まだ答えは出せなかった。


 井戸へ水を汲みに来た村人が桶を抱えて前を通り過ぎていく。

 その姿を眺めながら、俺はもう一度掲示板へ目を戻した。

 自分が何をしたいのかは分からない。

 ただ、CROを通して好きなことなら思いついた。

 この世界を歩いて、見たことのない場所へ行くこと。

 普通なら通り過ぎるような場所を探索してみること。

 そんなことができるサブ職があるのかはわからないが。


 ただ、今回リヴィアが譜面から《返し歌》を復元したように、サブ職クエストにはリアルで身につけた知識や技術が関わることもあるようだ。

 音楽についてほとんど何もわからない俺では、今回の《まだ歌われない詩》を進めることはできなかっただろう。

 今の自分に何ができるのかを考えるより、これまで何をしてきたのかを振り返った方が早いのかもしれない。


 俺は掲示板を閉じ、インベントリから《第七補給隊名簿》を取り出した。

 この世界に残されたログを探すようになった最初のきっかけだ。

 これまでいくつかの手掛かりを見つけてきたが、この六人についてはまだ分かっていないことの方が多い。

 王都の星花祭でも、打ち上げ台に残された出来事を辿ることで、祭りが続いてきた歴史の一部を知ることができた。


 プレイヤーが通り過ぎた後にも、この世界で生きてきた人たちの出来事は残っている。

 そうした痕跡を見つけ、そこにあった時間を辿ることなら、俺にもできるかもしれない。

 現実(リアル)で言えばこういうのは何ていう職業なんだろう。

 そんなことを名簿を開いたまま考えていると、ミナトからチャットが届いていた。


―――――

ミナト:おい、聞いたぞ

ザン:何を?

ミナト:お前、シルヴェイル村で女の子とデートしてたらしいな

ザン:誰から聞いたんだ

ミナト:知り合い。ヒュームとエルフが二人でイチャイチャしてたって

ザン:それだけで俺だと決めつけたの?

ミナト:違うのか? 一応、名前の表示まで見てもらったけどな

ザン:おい……それならもう俺じゃないか

ミナト:よし、当たった

ザン:なんだそれ……デートじゃないって

―――――


 俺の反応を試していたらしい。


―――――

ミナト:デートじゃないなら、何してたんだ?

ザン:リヴィアさんのサブ職クエストを手伝ってる

ミナト:リヴィアさんって、前に話してた人か。歌碑のクエストは進んだのか?

ザン:うん。それで今、一緒に続きを調べてる

ミナト:結局、何のサブ職なんだ?

ザン:俺が勝手に話していいか分からない

ミナト:おい、俺にまで秘密にするのか

ザン:リヴィアさんに聞いてからな

ミナト:じゃあ、そのリヴィアさんをいつ紹介してくれるんだ?

ザン:なんで紹介することになってるんだよ

ミナト:次はいつ会うんだ?

ザン:明日の22時に待ち合わせてる

ミナト:待ち合わせ?

ザン:サブ職クエストの続きを一緒にするだけだよ

ミナト:約束して待ち合わせて、二人で出かけるんだろ?

ザン:クエストの続きにな

ミナト:お前さ、俺が知らない間に女の子とばっかり遊んでさ。それが楽しいのか?

ザン:楽しいかどうかで言えば楽しいけど

ミナト:もういい! この裏切り者が!

ザン:え、そこまで言われるの

―――――


 結局その日はベルカ村でのんびり過ごし、公式フォーラムを眺めたり、装備品の相場をチェックしたりして時間を過ごした。

 カレドで何が見つかるのかを考えながら、俺はいつもより早くログアウトしたのだった。

 

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― 新着の感想 ―
まあ… ギルティよなぁ…
トレジャーハンター……は違うか。探偵とか考古学が近い? 1番近いのは警察の鑑識とかかねぇ
大丈夫だよミナト君……君のトコにもそのうち相方が来るからw
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