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第29話 王都北門前

 

 数分後、ミナトが中央広場に現れた。


 人混みの中でもすぐに分かった。

 以前会ったときより、背中の盾が一段と大きくなっている。

 肩幅を越える大盾には厚い金属の縁取りが入り、中央には壁のような装甲板が重なっていた。


 重装鎧も前とは違う。

 肩と前腕の装甲が増え、胸当てには盾と同じ金属色のラインが走っている。

 派手ではないが、そこに立たれるだけで進路を塞がれるような重さがあった。


「装備、かなり変わってる」


「ようやく二次職っぽくなってきただろ?」


「それが二次職用?」


「そうだ。レベル51から装備できるやつな。素材集めて作ってもらったり、金を貯めて買ったりで⋯⋯やっとそれっぽくなってきた」


「おお、近くで見ると盾がかなりでかい」


「俺が選んだヒューム・ディフェンダーの二次職ガードウォールは敵の攻撃を受けるだけじゃなくて、進路ごと止める盾職だからな」


 ミナトは少し得意そうに背中の盾を揺らした。


「ミナトって、やっぱり盾が好きなんだな」


「俺は殴るより守る方が好きなんだよ」


「ミナトらしいな」


「もう一つの派生の《シールドナイト》は味方を守る盾って感じだけど、こっちは敵が通る場所を塞いで、味方が動く場所を作る。俺はそっちの方が性に合ってた」


「ミナトらしいな」


「結構しっかり説明したけど、反応一緒ってNPCかよ」


「CROのNPCはもっと反応いいと思う」


「⋯⋯じゃあお前は何なんだよ」


「ミナトの理解者ってことで」


「雑な理解者だな⋯⋯」


 《ガードウォール》の凄さはミナトの背中の大盾を見ただけでなんとなく分かった。


「お前ももうすぐだろ、二次職」


「まだ46のまま変わってない」


「星花祭の間に47くらいはいけるんじゃね?」


「イベ素材集めの狩り次第かな」


「だな。じゃあ軽く見て回ったら、そのあと狩りいくぞー」


 ミナトは露店の方へ歩き出した。


 中央広場には食べ物の露店だけではなく、イベント用の小物売りも並んでいる。

 手元で小さな星花を咲かせる消費アイテム。

 星形の髪飾り。

 浴衣装備の試着表示。

 噴水の周りではプレイヤーたちがポーズを取っていた。


「もう一回、今度は横向きで」

「あ、消えた」

「これの手持ち星花、消えるの早い」


 みんな楽しそうだ。

 攻略とか効率とかランキングだけではなく、ただ歩いているだけでワクワクする感じがここにはあった。


「こういうの普通にいいな」


「だろ」


 ミナトは人混みを眺めながら急に余計なことを言った。


「これで隣が男じゃなければなぁ。祭りに浴衣。盾役としては女の子を守りたいところだ」


「出た。いつも言ってるやつ」


「当たり前だろ。盾役がぶれたら終わりだ」


「かっこつけてもかっこよくない」


 ミナトは笑った。

 そんなことを言いながら露店の列を抜けていく。

 頭上では小さな星花がまた上がり、広場にいる何人かが反射的に空を見上げていた。


 本番ではない小さな星花の光だが、それだけで足が止まるくらいには綺麗だった。

 去年のベルカ村での《星花祭》より、今年の《王都星花祭》の方が規模がずっと大きくなっている。

 普通に参加して普通に見て回るだけでも十分楽しそうだ。


 俺たちはしばらく歩いてから区域別の進行表を見た。


―――――

【王都区域別:星花進行率】

 集計:2日目終了時点


・王都中央広場 44%

・王城前大通り 36%

・冒険者ギルド前 38%

・東市場通り 39%

・西工房通り 31%

・南門前広場 34%

・北門前広場 1%

―――――


「え、北門だけ低すぎないか?」


 ミナトも表示を見た。


「1%⋯⋯バグか?」


「人が行ってないだけかな」


 中央広場は44%。

 他の区域も30%台後半から40%台まで進んでいる。


 区域進行率が何にどこまで影響するのか、細かい説明は表示されていない。

 でも、王都全体で星花準備を進めるイベントなら、この数字はそのまま各区域の準備状況ということなのだろう。


 それなのに、北門前だけが1%。

 周りのプレイヤーも同じ表示を見ていた。


「北門だけ何これ?」

「納品回数は普通にカウント入るらしいぞ」

「でも進行率は動かないってこと?」

「バグじゃね」

「GMコールしたやついる?」

「もう誰か出してるだろ」

「修正待ちでよくね?」

「どこで納品しても回数は増えるし」

「北門まで行って動かないなら後回しでいいわ」


 そう言って、何人かはすぐ走っていく。


 ランキングも個別報酬も、今のところ見えているのは納品回数だけだ。

 それなら中央広場にいるプレイヤーがわざわざ北門まで行く理由は薄い。

 北門で納品しても回数は増える。

 でも、進行率が動かないならバグか未修正の何かにも見える。

 普通なら誰かがGMコールして、あとは修正待ちだと思うだろう。


 北門が後回しにされる理由は分かる。

 でも、俺はその表示から目が離せなかった。


 北門前広場1%。


 王都星花祭は王都全体のイベントだ。

 なのに北門だけがほとんど動いていない。


「行ってみるか?」


 ミナトが聞いた。


「行こう」


「そうだと思った」


 俺たちは北門へ向かうことにした。

 

 

 

 

【とある攻略サイト情報】


■職業ルート一覧

【初期職】 → 〈一次職〉 → 《二次職》


※今回はヒューム(ミナト)に関わる部分のみ。


【初期職】

 ├─【前衛見習い】◀

 │   ├─〈ヒューム・アタッカー〉

 │   │    ├─《ソードマスター》

 │   │    └─《フロントストライカー》

 │   │

 │   ├─〈ヒューム・ディフェンダー〉◀

 │   │    ├─《シールドナイト》

 │   │    └─《ガードウォール》 ◀ミナト

 │   │

 │   └─〈ヒューム・ブレイカー〉

 │        ├─《アーマーブレイカー》

 │        └─《スタンスクラッシャー》

 │

 ├─【中衛見習い】

 └─【後衛見習い】


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