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第23話 狂風の羽印

 

 その表示の下にログが続いていた。


―――――

シークレットクエスト:《グレイヴェルの羽根》


発生条件:

自身よりレベルの高い《狂風鳥グレイヴェル》と交戦したプレイヤーまたはその交戦パーティーが誰も戦闘不能になることなく生還すること。


達成条件:

《グレイヴェルの羽根》を入手し、記録を確認すること。


備考:

狂風を受け、生きて戻った者にだけ残る一度きりの記録。

―――――


「……なんか出てますね」


『え?』


「シークレットクエストみたいです」


『ほんとですね……私にも出ていました』


「これ、達成したことになるんですかね」


 試しにインベントリから《グレイヴェルの羽根》を取り出してみた。

 灰色の羽根の先に残っていた青い光がふっと強くなる。


「え……」


 手の中で羽根が震え、細い風のエフェクトが小さく渦を巻いた。


―――――

条件達成を確認しました。

―――――


 短い通知音が鳴る。

 続けてログが開いた。


―――――

シークレットクエスト《グレイヴェルの羽根》を達成しました。

・経験値を獲得しました。

・称号《狂風の羽印》を獲得しました。

―――――


 俺の経験値バーが一気に動いた。

 Lv45の半分を大きく越えて止まった。

 そのとき、リヴィアの足元に淡い光が広がった。

 杖の小鳥飾りと新緑のローブが風に揺れている。


 少しして彼女の文字が浮かぶ。


『レベル、上がりました』


「おめでとうございます」


『ありがとうございます』


『レベル50の一割と少しまで進みました』


「かなり入りましたね」


 レベル50。

 世界樹の歌碑がサブ職クエストの入口なら、反応が変わるかもしれない。

 アイテム欄を確認すると、さっき拾った羽根は通常素材ではなくイベントアイテムのような扱いで入っていた。


―――――

《グレイヴェルの羽根》


狂風鳥グレイヴェルから落ちた羽根。

強い風を受けた者の記録が残っている。

―――――


「素材というより、記録(ログ)アイテムっぽいですね」


 グレイヴェルの羽根は白というより少し灰色がかっていて、先の方だけが青く光っている。

 見ていると、まだ風を含んでいるようにも見えた。


「さっきまであんなに怖かったのに、こうして見るとなんか不思議ですね」


『確かに綺麗です』


 俺たちは少しだけ、その羽根を見ていた。

 それから見張り台の掲示板でクエスト完了手続きを行う。


―――――

《風見の丘の安全確認》を達成しました。

報酬を獲得しました。

・20,000G

・経験値

・《丘風の携行袋》×1

―――――


 報酬欄には《丘風の携行袋》というアイテムが入っている。

 使用するとインベントリ枠が一つ増えるらしい。同種効果は最大五回まで。

 経験値バーがさらに伸びた。

 さっきのシークレットクエストで一気に進んでいた分が、最後の足りないところまで押し上げられる。


―――――

レベルが上がりました。

Lv45 → Lv46

―――――


「また上がった」


 思わず声が出た。


『すごい。おめでとうございます』


「ありがとうございます。ギリギリ届いた感じです」


 Lv44で風見の丘へ来て、今のレベルは46。

 途中の狩りとシークレットクエスト、そして今回のクエスト報酬。

 全部合わせて、ようやく届いたレベルだった。


 少ししてリヴィアの文字も浮かぶ。


『私もまた進みました』


「どのくらいですか?」


『Lv50の三割近くまで来てます』


「ここ、クエストもかなりうまいですね」


『ですよね。称号が増えてますね』


「はい、《狂風の羽印》⋯⋯」


―――――

称号:《狂風の羽印》

狂う風に目をつけられた者。


効果:

称号表示を有効にしている間のみ、以下の効果が反映されます。

・AGI+1

・風属性魔法威力 小アップ

・DEF-1

―――――


『すごい。私、効果がある称号は初めてです』


「俺もです。AGIが上がるのはありがたいですけど、防御は下がるんですね」


『場合によっては使えそうですが⋯⋯』


「風属性魔法威力もありますし、リヴィアさんの方が合いそうですね」


『でも、防御が下がるのは少し怖いです』


「確かに。使うなら場面を選ぶ感じか⋯⋯」


 俺は称号表示を閉じた。

 有効化するかは後で考えればいい。

 遠くの風見の丘の草が揺れている。

 もしかすると、まだグレイヴェルが巡回しているのかもしれない。


『では戻って確認してみます』


「世界樹の歌碑ですね」


『はい』


 その短い返事だけで、リヴィアも気にしていたのだと分かった。


「俺もついていってもいいですか。Lv50になった後で、歌碑がどう変わるのか見てみたいんです」


『はい、一緒に見ていただけると、助かります』


「ありがとうございます」


 《帰還石》を使うと、視界が淡い光に包まれる。

 俺たちは丘風の見張り台を後にした。


 戻った先は最寄りの拠点である《梢の町エルウィン》だ。

 そこから俺たちはシルヴェイル村へ戻った。


 そのまま村の奥へ進み、世界樹の根元へ向かう。


 中の広間は静かだった。

 古い歌碑は同じ場所に佇んでいる。


 細い線と点が刻まれた歌碑に、リヴィアがそっと手を伸ばす。

 その指先が触れた瞬間――石の奥で細い光が走った。


  

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