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第17話 梢の町エルウィン


 転送広場へ戻る途中で、俺はもう一度メッセージ画面を確認した。


―――――

ミナト 《離席中》

―――――


 表示は変わらない。

 ミナトがいれば少し上の狩場でも安定して戦えるだろうが、今は仕方ない。

 まずはソロで行けるところまで行ってみようと思う。


 シルヴェイル村の転送門に触れると、行き先の一覧が表示された。


―――――

転送先を選択してください。


 《王都セントヴェル転送門広場》

▶《梢の町エルウィン》

 《シルヴェイルの森林》(推奨レベル3〜8)

…………

……

―――――


 リヴィアが教えてくれた通り、二つの狩場はどちらもここには出ていない。

 やはり、まずは《梢の町エルウィン》からのようだ。

 俺は《梢の町エルウィン》を選んだ。


―――――

《梢の町エルウィン》へ転送します。

―――――


 視界が淡い光に包まれる。

 次に足がついた時、周囲の空気が少し変わっていた。


 足元は石畳ではなかった。

 硬い木の板だ。しかも、宙に浮いていた。

 この町は太い木々の間に足場が渡され、橋のような板道が枝から枝へ続いている。

 

 下を見ると、地面まではかなり距離があった。

 枝上につくられた足場には小さな店が並び、薬草束や矢筒、木彫りの飾りなどが売られているのが見える。

 板の道の先には細い吊り橋がいくつも伸びていた。

 木と木を結んだ橋の向こうには別の足場があり、その先にもまた枝に囲まれた小さな広場が見える。

 普通に歩くだけでも、どこへ続いているのか確かめたくなるような町だった。


 シルヴェイル村は世界樹の下に包まれていたが、エルウィンは木々の間に浮いている。

 今日は狩場へ向かうつもりでここに来たが、探索だけで一日使ってもよさそうな町だった。


 この町にいるプレイヤーはほとんどがエルフだ。

 特に弓を背負ったエルフや杖を持った支援職らしいエルフが多い。

 その中にヒュームやビーストフォークが少しだけ混じっている。エルフの友人と一緒に遊んでいるのか。

 それとも俺みたいに他種族の領域を見に来たのか。


 思わず寄り道欲求が湧き起こったが、今は町を見に来たわけではなかった。

 俺は近くにあった木製の案内板に近づくと、この辺りの地図が浮かび上がった。


―――――

【梢の町エルウィン周辺案内】


《白樹の小径》 推奨レベル6〜10

《森のきらめき》 推奨レベル10〜16

《外縁の古道》 推奨レベル36〜42

《風見の丘》 推奨レベル44〜49

―――――


「あった。これか」


―――――

▶《外縁の古道》

梢の町エルウィン外れに残る古い森道。

周辺には小型の獣型MOB、植物型MOBが出現します。

推奨レベル36〜42

―――――


 安定して狩るならここでいい。敵も大きく外れなさそうだ。

 リヴィアはエルウィンから歩いて行けるところにあると言っていた。

 次に《風見の丘》へ触れる。


―――――

▶《風見の丘》

エルウィン北東に広がる丘陵地帯。

推奨レベル44〜49

転送門:未登録

最寄り転送先:《丘風の見張り台》

―――――


 転送門はまだ未登録。

 特殊な狩場なのか、《風見の丘》そのものにはまだ直接飛べないようだ。

 ただ、手前の中継地点である《丘風の見張り台》までは、エルウィン側の転送門から行けるらしい。


 俺は二つの推奨レベルを見比べる。

 少しでも自分を進めるなら、風見の丘の方が今のレベルに合っている。

 まだ直接飛べない丘。

 行ったことのない狩場。

 俺はステータスを確認する。


―――――

プレイヤー名:ザン

レベル:44

職業:ヒューム・スカウト

―――――


 ぎりぎり下限レベルだ。油断はできない。

 それでも、行き先は決まった。

 俺はすぐには移動せず、まずは道具屋へ向かった。


 そこで回復薬を少し補充し、投げナイフも買い足した。

 ショートボウ用の矢も確認しておいた。

 ミナトなら修理と補給してから行けと言うだろう。

 装備の耐久値を見てから、鍛冶屋で短剣を軽く直す。

 少し上の狩場へ向かうなら、そのくらいはしておいた方がいい。


 準備を済ませてから、俺は転送門に触れる。

 リストが表示され、その中から《丘風の見張り台》を選択する。


―――――

《丘風の見張り台》へ転送します。

―――――


 足元に転送光が広がった。

 次に視界が開いた時、木の板道はもうなかった。


 光が引いた先は、白い砂と乾いた根が混じった道の上だった。

 周囲の木々はエルウィンより低く、枝の間から空が見えている。

 少し先には木造の見張り台が立っていた。


 高い塔ではない。

 周囲を見渡すための簡素な台だ。

 柱には古びた布片がいくつも結ばれ、足元には小さな補給箱と掲示板が置かれている。


―――――

《丘風の見張り台》

―――――


 ここにいるプレイヤーもやはりエルフが多い。

 弓の弦を張り直している男性エルフ。

 掲示板の前でクエストを確認している女性エルフ。

 少し離れた場所では、ヒュームとエルフの二人組が一緒に小型MOBを追いかけている。

 俺みたいに一人で来ているソロの別種族は珍しいのかもしれない。近くに立っていた掲示板を調べると、クエストの受注画面が出た。


―――――

【クエスト:風見の丘の安全確認】


丘風の見張り台および風見の丘周辺の安全確認に関する討伐依頼です。

推奨レベル46〜49


対象:

ホップフェザー 0/16

アッシュモス・スウォーム 0/8

ゲイルフェザー・アタッカー 0/4

ゲイルフェザー・リーダー 0/2

―――――


 推奨レベル46〜49。

 今の俺より少し上だ。

 対象MOBの数も少なくないため、軽く様子を見て終わるようなクエストではなさそうだった。


 画面に見えるミニマップには《丘風の見張り台》が出ており、その先へ細い道が伸びている。

 ただ、その線は途中から薄くなっていた。

 見えている丘の奥までは、まだはっきり表示されていない。


 そこまで離れてはいない。

 実際に歩いて確かめるしかなさそうだった。

 俺は《風見の丘の安全確認》のクエストを受注した。


―――――

【クエスト:風見の丘の安全確認】を受注しました。

―――――


 しばらく道沿いに進むと、草に覆われた丘が広がっていた。低い草の向こうでは風を受けた旗のようなものが小さく揺れている。


 ミニマップを見るとすでに《風見の丘》の近くまで来ていることが分かった。


 そのとき、草の向こうで小さな影が跳ねた。

 鳥型のMOBだろうか。

 そう思った瞬間、その影は風に押されるように横へ流れた。

 まっすぐ逃げたのではない。

 跳ねた場所から、不自然にずれた。


 視界の端に名前表示が浮かぶ。


―――――

《ホップフェザー》

―――――


 風見の丘の最初の敵は草の中でまた跳ねる。

 俺が追うより先に、風がその行き先を変えていた。


 

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