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転生ドラゴンは、今日もお嬢様の膝の上からお守りする!  作者: 人紀
第六章

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従魔同士でご挨拶?

 って、お嬢様!

 ちょ!

 籠が斜めになってる!

 わわわ!

 転がりそう!

 わわわ!

 わわわ!


 すると、誰かが駆けてくる音が聞こえてくる。

 そして、男の子の声が聞こえてきた。

「クリスタリ侯爵令嬢、大変失礼とは存じます。

 ただ何卒、竜殿を運ぶ栄誉を頂けませんでしょうか?」

 そんな真摯な言葉に、お嬢様の困った声が聞こえてくる。

「いえ、有り難いお言葉ですが……。

 そのようなことをレノン伯爵令息にお願いするわけには……」

 すると、少し困った感じに男の子が言う。

「いや、その、誉れだということもありますが……。

 竜殿が少々、可哀想と言いますか……」

「あ、キュー!?

 大丈夫!?」

 お嬢様、やっと気づいてくれたか……。

 わたしが籠でひっくり返っていることに……。



 アネットさんと別れた後、わたし達は校舎に入る。

 う~ん、やっぱりというか前世で通っただろう、うっすらと残る小学校、中学校の校舎とは全然違う。

 大人しめにだけど色づけされた壁や柱の縁にある回(まわ)り縁(ぶち)には、細かくだけど彫り物がされている。

 模様が描かれている石造りの床は、磨き上げられている様で、窓から入ってくる陽光で輝いていた。

 王様んちの王宮ほどでは無いにしても、洗練された建物だ。

 わたしは興味深く見てたけど、お嬢様達にとっては慣れたものなのか、わたしの籠を抱えている男の子――ピエール君が凜々しい顔を優しくさせながら言う。

「この籠はやはり、ご令嬢には大きいですし、重いと思います。

 キュートリック殿も大人しいことですし、例えば、手提げ籠ぐらいのものをご用意されたらいかがでしょう」

 そんな騎士的イケメン君に、お嬢様は苦笑いを浮かべながら「はい、そのように検討したいと思います」と頷いた。

 お嬢様の後ろには、クロエさん達がニマニマした顔で続いている。

 まあ、確かにお嬢様は言うまでもないけど、ピエール君も、馬鹿王子に振り回されている時はあれだけど、それ以外の時は心優しく、それでいてスマートで格好いい、素敵な騎士様だもんね!


 2人が並んで歩いていると本当に、ロマンス小説の1シーンみたいだ!


 すれ違う女子生徒達も同じ事を考えているのか、顔を赤らめながらチラチラ見ている。

 しばらく行くと、ピエール君が視線を上に向けた。

 扉の上には何かが書かれた札が貼られていて、ピエール君はニッコリ微笑む。

「こちらの様ですね」

「はい、ありがとうございます」

 お嬢様が扉を開けると、ピエール君はわたしを抱えたまま中に入った。

 すると、教室の中が少しざわりとした。

 ピエール君が中に入ったからかと思ったけど、どちらかというとわたしに注目しているようだった。

 女の子達の中には「可愛い!」とか言っている子がいる。

 ふっふっふ、ここでもわたしは人気者だ!

 籠の中でドヤってしていると、隣に来たクロエさんがニコニコしながら言う。

「キュートリック様は注目の的ですわね!

 ふふふ、まあ、愛らしいですから当然ではありますが。

 ほんと、カトリーヌ様が羨ましいですわ!」

 そうでしょう!

 そうでしょう!

 わたしは可愛くて、愛らしいのだ!

 そんな風に胸を張っていると、お嬢様が籠を覗きながら苦笑する。

「言うほど、羨ましがられる事でも無いわよ。

 苦労も絶えないし」

 なんて事を言うの!?

 わたしが酷い言葉にショックを受けているのに、ピエール君が「ははは!」と笑いながら言う。

「何かを世話をするのなんて、多かれ少なかれ苦労するものですよ、クリスタリ侯爵令嬢!

 僕も鷹を飼っていますが、2年も世話をしてるのに、機嫌が悪いと未だに手を噛まれます」

「まあ!」

 ピエール君は微笑みながら頷き、わたしに視線を向ける。

「その点、キュートリック殿はむやみに人を攻撃もしない。

 なにより、賢いみたいですし、僕から見たら羨ましく思えますけどね」

 ピエール君は笑いながら「まあ、うちのは余り賢くない行動をする時も、可愛かったりするんですけどね」とか言っている。


 そうだよねぇ~!

 わたしは賢くて可愛い、お嬢様の最高とも言える愛玩ドラゴンなのだよ!

 ピエール君はなかなか分かっている!


 なのに、最高のペットを手にしているはずのお嬢様は、苦い顔をしながら「妙に知恵が回るところが頭の痛い要因ではあるのですが……」とか言っている。


 何故に!?


 ピエール君が自分が受ける授業の教室に向かうと、代わってクラスの女の子達が側に近づいてきた。

 そして、お嬢様に「可愛らしいですわね!」とか「何を召し上がるのですか?」とか、興味津々の様子で質問をしている。

 お嬢様が笑顔でそれに答えていると、隣の席にいるクロエさんがニコニコしながら言う。

「カトリーヌ様!

 もし良ければ、キュートリック様にわたしの子を紹介したいのですが、宜しいでしょうか?」

「え?

 ええ、構わないけど」

 お嬢様が答えると、何やらウキウキした感じのクロエさんが、梟の籠をわたしの方に寄せる。

 後ろの席のキーラさんやペサニーさんも「わたしの子犬(子)も紹介したいです!」とか「あ、あの、うちの子猫(子)も……」とか言いつつ籠を持ち上げる。

 う、う~ん?

 いや、わたし、前世を合わせても動物との交流は余りしてこなかったからなぁ~

 ちょっと怖いんだけど……。


 そんなことを考えていると、クロエさんが籠から梟(ふくろう)を取り出した。

 お嬢様が「え!? 出して大丈夫なの!?」と声を上げたけど、クロエさんは笑いながら「うちのグレイはまだ飛べないので大丈夫です。それに女の子で、しかも大人しい子ですし」とか言っている。

 そして、わたしの鳥かごの入り口を開けると、グレイちゃん? を中に入れた。

「ほら、グレイ!

 キュートリック様よ!

 ご挨拶なさい!」

 灰色の梟(ふくろう)はこちらを、つぶらな目でじっと見つめてくる。


 ふむ、この子、小っちゃいし可愛い。


 生まれて数ヶ月ぐらいかな?

 どう考えても、わたしより年下だろう。

 そもそも、わたしは多分、前世は中学生だったはず。

 であれば、お姉さんとしてこちらから挨拶をしてあげようかな?

 わたしは右手を挙げて〝やあ!〟って感じに「がっ!」と鳴いた。

 すると、わたし達を見守っている女の子達が「キャ~!」と歓声を上げる。

 クロエさんが感嘆するように言う。

「キュートリック様のご挨拶、可愛らしいですわぁ~

 本当に可愛らしいですわぁ~」

 すると、首をくいっと曲げて、クロエさんを見上げていたグレイちゃんがこちらを向く。


 そのまん丸な目が剣呑に光った気がした。


 グレイちゃんが爪を立て、飛びかかってきた!?

 ぎゃぁぁぁ!

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