お久しぶりの女の子たちとの交流!
ママさんが小首をかしげると、エイサ坊ちゃまが笑顔で叫ぶ。
「狐の鈴!
お母さま、お姉さまは狐の鈴が好きだから、それを持っていけば良い!」
いやいや、それは毒が有るやつだから!
ママさんも微笑みながら「ああ、そうだったわね」とか言ってるし!
わたしが身振り手振りで〝毒が有るから、駄目!〟と主張するも上手く伝わらないのか、ママさんもエイサ坊ちゃまも「何を言ってるの?」「よく分からない」とか言っている。
すると、オントワンさんが「失礼します」と一度、頭を下げた後、言った。
「恐らくキュートリックは、狐の鈴には毒が有ると言っているのだと思います。
実際、美しい花ではありますが、毒性が強く、扱いは慎重に行う必要があります。
侯爵家が管理している場所ならともかく、学院に持ち込むのは、いらぬ嫌疑もかけられかねませんので、控えた方がよろしいかと」
わたしがコクコクと頷くと、ママさんが目を丸くした。
「あら、そうなの?
知らなかったわ」
エイサ坊ちゃまも驚いている。
オントワンさんは柔らかく微笑みながら頷いた。
ママさんがオントワンさんに訊ねる。
「なら、あの子に送る種は何が良いと思う?」
オントワンさんは1つ頭を下げて答える。
「〝穀物畑に咲く花〟などはいかがでしょうか?
気品ある青い花で、お嬢様も好まれておりました」
ママさんは頷く。
「ああ、あれね。
じゃあ、庭師に用意させて頂戴」
「畏まりました」
すると、エイサ坊ちゃまが目をキラキラさせながら言う。
「ねえねえ、お母さま!
僕から送るって事にして!」
なんて、図々しいお坊ちゃまだ!
そんな息子に、ママさんはニッコリ微笑む。
「駄目よ!
女性に贈る花は、自分で用意しなさい」
「えぇ~!」
流石ママさん、実の息子にも手厳しい!
学院に戻り、女子寮まで飛んでいくと、入り口に止まり木っぽい物が設置されていた。
まあ、明らかにわたし用だよねって事で止まると、警護のお姉さん達が嬉しそうに「お帰りなさい、キュートリック様」と言ってくれる。
お姉さんの1人が、何やら上気した顔で「お部屋までお連れします!」とか言って手を伸ばしてきたけど、首を横に振ってお断りをした。
お姉さん達のお仕事を邪魔する訳にはいかないからね!
玄関前に降りると、自分の足でちょこちょこ、お嬢様の部屋まで進んでいく。
何やら、警護のお姉さん達が残念そうな顔で見送っているけど、いや、ちゃんとお嬢様の為に、そこをちゃんと守ってよね!
授業が終わって帰ってきた生徒さん達が、わたしに気づき「あ、クリスタリ侯爵家の竜様よ!」「キャー! 見てみて、可愛い!」と歓声を上げている。
まあ、わたしは可愛格好いいでその名を轟かす、キュートリックさんだ。
この辺りは、しゃーないよね!
そんなことを考えつつ、ちょこちょこと歩いていると、女の子の中から2人ほどが側に寄ってきた。
そして、ニコニコしながら、わたしに合わせるように少し屈む。
その中の1人、柔らかく黄みかかった茶色の長い髪を揺らしている女の子が声をかけてくる。
「キュートリック様、お久しぶりです。
ずいぶん以前となりますが、大公殿下のお茶会では、大変お世話になりました」
隣にいる黒に近い茶色の髪を、後ろでポニーテールにしている女の子が弾ける笑顔で「わたしも!」と言った。
ん?
誰だろう?
大公殿下のお茶会って……。
あ、初めてイザベル王女様に会った時のお茶会か!
あそこにいた女の子達だ。
そっかぁ~
あの茶話会には、お嬢様と年の近い子がそれなりにいたから、同じように学院に通うって子がいても変じゃないよね!
わぁ~!
王族に挨拶するのにビクビクしていた子達だけど、すっかり頼りになりそうなお姉様って感じになってる!
わたしが〝久しぶり!〟という気持ちを込めて「がっ! がっ!」と手(前脚)を振ると、女の子達は嬉しそうに両手で振り返してくれる。
すると、後ろから「キュー、何をやってるの?」と声をかけられた。
振り向くと、お嬢様がクロエさん達とこちらに歩いてくるところだった。
そして、わたしが話をしていた女の子達に気づくと、丁寧に挨拶をする。
「ご無沙汰しています。
アレッシア様、メイジー様」
クロエさん達もそれに続いた。
お嬢様は側まで来ると、わたしを抱き上げた。
そして、黄色みかかった茶色の髪の女の子、アレッシアさん? に声をかけた。
「申し訳ありません。
この子、何か失礼なことをしませんでしたか?」
がぁ!?
礼儀正しくて可愛らしいで有名なわたしに、なんて言い草だ!
いくらお嬢様でも聞き流せないぞ!
だけど、文句を言う前に、お嬢様はわたしの背中をポンポン叩きながら言う。
「なんでも、ジョセフ殿下にも失礼なことを言っているらしく、少々困っています」
うっ!
それを言われると、痛い。
固まっていると、わたしを体から離したお嬢様は、目を尖らせながら「思い当たることがあるようね……」とぼそりと言った。
ひぃ!?
お説教される!
そんな風に戦慄していると、アレッシアさんが口元に手を置き「ふふふ、まあまあ」と笑った。
そして、続ける。
「そのようなことはありませんわ。
キュートリック様とはお久しぶりですね、とご挨拶をしていただけ。
あと、当時のお礼を少し」
「お礼?」
お嬢様が不思議そうに目を瞬くと、アレッシアさんとメイジーさんは顔を見合わし、微笑む。
そして、アレッシアさんは顔を戻しながら頷いた。
「以前、大公殿下の茶話会での事ですわ。
初めて王族の方々とご挨拶をする時、緊張で強ばってしまっているのを、キュートリック様の愛らしさで、ほぐして頂いたのです」
そして、少し恥ずかしそうにしながらアレッシアさんは続ける。
「あのう、カトリーヌ様……。
あの時のように、少し、キュートリック様をお借りしたいのですが、宜しいでしょうか?」
お嬢様は苦笑しながら「ええ、構いませんよ」と頷く。
お嬢様からわたしを受け取った、アレッシアさんは「ふふふ、やっぱり柔らかい」とか言いながら抱きしめてくる。
ふむ、アレッシアさんもなかなかのハグ使いだよ!
すると、メイジーさんも「わたしも宜しいですか?」ともじもじ言うのを、お嬢様は困ったようにしつつも「どうぞ」と頷いている。
メイジーさんは、アレッシアさんからわたしを受け取る。
アレッシアさんは柔らかだけど、メイジーさんはぎゅっと少し強めのハグだ。
まあ、これもなかなかと言って良い!
少し、遠巻きにしつつ見ていた女の子達から「いいなぁ~!」とか「羨ましい~!」とか声が上がる。
メイジーさんはそんな女の子達にどや顔を向けながら「キュートリック様、思ったより柔らかで温かいわよ!」とか言って、悔しがらせている。
何をやっているのだか……。




