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転生ドラゴンは、今日もお嬢様の膝の上からお守りする!  作者: 人紀
第六章

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お役目のために一旦戻る

 ……とはいえだ。

 Web小説なら大体、胸クソとザマーはセットな事が多い。

 多いんだけど、これは現実だ。


 優しい人、正しい人が必ず報われる訳ではない。

 胸くそな人や悪党が、必ず不幸になる訳でもない。

 どう転ぶか分からない、現実という物語だ。


 そういえば、大公邸で――本来、乙女ゲーム〝女神様の気まぐれ〟の運命の人との出会いイベントっぽい出来事が、何人もの子息に対して起きたって話を聞いたんだった。

 ゲームならともかく、似ているとはいえ、血の通った本当の人間に対して行おうとするとか、かなり狂っているとしか思えないけど……。

 狙い通りに行く可能性だってある。


 とはいえ、方針は変わらない。


 お嬢様に危害を加えようとするのであれば、絶対に許さない。

 逆に、それさえ無ければ、逆ハーだろうがなんだろうが、好きにして頂戴ってところだ。

 馬鹿王子(ゴミ)を収集してくれるのであれば、願ったり叶ったり、歓迎しても良い。

 勿論、繰り返しになるけど、お嬢様に危害がない前提ではあるけどね。

 そんなことを考えていると、ん? いつの間にか教壇まで移動していたお嬢様が、席に戻る様子が見えた。

 その表情は、何やら苦笑している。

 お嬢様の側に座るクロエさんやキーラさん達が口々に声を掛けている様子が見える。

 でも、何故か何を言っているのか聞こえない。

 あ!

 いつの間にかドラゴンイヤーがオフになっていた。

 意識すると、クロエさんがお嬢様に話をする声が聞こえてくる。

「――クリスタリ侯爵閣下と同じではありませんか?」

 お嬢様はため息をつく。

「まあ、そうなんだけど……。

 正直、そこがなんとも微妙なのよね」


 ふふ!

 よく分からないけど、パパさんったら、愛娘(まなむすめ)に嫌がられてる!

 ざまぁ!



 前世、高校の入学式だと、クラスメイトへの自己紹介や部活見学、そして、学校の設備等の説明が続く――とWeb小説には書いてあった。

 いや、わたしは中学までの記憶しか無いのでよく分からないけど、そんなもんだと書いてあった気がする。

 ただ、この学院は中等部から高等部まで、大抵の生徒が自動で進級するので、その辺りは軽くだけ触れて、直ぐに授業は開始した。

 といっても、どんな授業をするか等の説明が主ではあるけど。

 前世では国語、地理、歴史、数学、理科辺りを重点的にやっていたけど、この学院では貴族文法、地理、歴史、宗教学を重点的に行うそうだ。

 ……理系が得意な生徒はちょっと可哀想かもしれない。

 魔術学、数学、理科(化学、物理)や政治学、領運営学、更にお嬢様には関係ない騎士関係のものも選択科目らしい。

 この辺りは将来進む道によって選べるようにって事なんだろう。

 それらについては、2週間ほど、自由に参加でき、その上で決めることが出来る方式をとっているらしい。

 まあ、授業を受けて、思ったのと違う! って事になるのを防ぐためだろうね。

 そういえば、お嬢様はどんな授業を選択するのかな?

 ……ちゃんと、従魔を使う授業も選択してくれたかな?

 個人的には従魔可のクラスは全て選んで欲しいけど……。

 お嬢様、わたしが付いてきたこと、結構、怒っていたから、選んでくれていないかもしれない……。


 そんなことを考えていると、お嬢様が受けていた授業が終わったようだ。


 お嬢様はクロエさんと話をしながら立ち上がる。

 キーラさんやペサニーさんも集まってくる。

 次の授業のために移動するのかな?

と思っていると、わたしの背中が撫でられた。

「がぁ?」

 視界を戻すと、アネットさんが少し、苦い顔でわたしを見下ろしてくる。

「キュートリック、あなた、お嬢様のところに向かわないのは良いけれど、ずっとそこでゴロゴロしてるのもどうなの?」

 わたしとしてはお嬢様の見守りを一生懸命してるんだけど……。

 端から見たら、ソファの上でゴロゴロしているだけに見えるか。

 ……いや、わたしはお嬢様の愛玩系ドラゴンだ!

 仮にただただゴロゴロしているだけでも、問題ないはず!

 にもかかわらず、アネットさんはわたしの脇腹を指で突っつきながら「また、ぶくぶく太っちゃうわよ」とか言っている。


 もう!

 わたしはお嬢様の見守りで忙しいの!

 邪魔しないで!


「がっ! がっ!」と苦言を呈すも、アネットさんはわたしを持ち上げ、馬鹿でかいのを押しつけてくる。

「ほら、いつまでもゴロゴロしてないで、軽食を食べなさい!」

 あ、もうお昼の時間か。

 お嬢様達も、食べに向かったのか。


 因みに、この世界では昼食は軽く済ませる感じだ。


 なので、テーブルに用意されていたのは小さめのサンドイッチが2切れと、紅茶のコップのみだ。

 アネットさんはわたしをテーブルの上にあるクッションに置くと、続ける。

「それを食べたらお屋敷に一旦戻るのでしょう?

 奥様もお待ちになっていらっしゃるから、急いでね」

 ああ、ルーシーお嬢さまの子守かぁ~

 正直、お嬢様をお守りする方が大事なんだけど、しょうがないかぁ~

 サンドイッチを前脚で掴むと、パクリと食べた。

 ふむ、シャキシャキのレタスとレモン、ハムのコンビはなかなか美味しい!

 この学院の料理人も、なかなかやるな!



 お昼ご飯を食べた後、アネットさんにせっつかれて、致し方がなく、侯爵邸に戻ることにする。

 アネットさんに侯爵家の紋章が入ったスカーフを付けて貰った後、出発だ!

 お嬢様のお部屋のバルコニーから飛び立とうとするも、アネットさんに「玄関から出なさい!」と怒られてしまった。

 学院の門から出るようには言われたけど、寮から出ることについては言われていないので、気にする必要はない気もするけど……。

 まあ、アネットさんに逆らうと後々、面倒か。

 仕方がなく、お嬢様の部屋の出入り口まで行こうとするも、途中で「運んで上げるわ」とアネットさんに拾われた。

 えぇ~

 アネットさん、馬鹿でかい胸をしているくせに、何かとわたしを抱き上げたがるの、なんなの!?


 部屋から出て、アネットさんは階段を降りる。

 更に扉を出ると、お嬢様の部屋を警護しているお姉さん達が2人立っていた。

 アネットさんが「ご苦労様です」と声を掛けると、ビシッと敬礼を返してきた。

 なかなか、格好いい!

 キリッとしたお姉さん達だったけど、わたしに気づくと、チラチラとこちらを見てくる。

 少し、顔を赤くしている。

 ……ひょっとしたら、わたしのドラゴンボディを撫でたいのかもしれない。

 なので、〝撫でて良いよ!〟と身振り手振りをしつつ「がっ! がっ!」と鳴く。

 それに気づいたアネットさんも、少し呆れた感じながら、「良ければ撫でてやってください」と言った。

 お姉さん達は顔を見合わせながらも、「で、では、少しだけ」とか言いつつ、恐る恐る撫でてくれた。


 ふむ、お姉さん達、見た目は体育会系ながらも、なで方はなかなか繊細で優しく、素敵な撫で使いといっても良いな。

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