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転生ドラゴンは、今日もお嬢様の膝の上からお守りする!  作者: 人紀
第六章

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余計じゃない指摘!

 お嬢様に撫でられながら、そんなことを考えていると、何やら鈴の音のような澄んだ音が聞こえてきた。

 お茶の準備をしていたアネットさんが手を止め、お嬢様の方を向きつつ言う。

「どうやら、入り口の警護兵が呼んでいるようなので、少し、失礼します」

「ええ、お願い」

 お嬢様が頷くと、アネットさんは一礼をした。



 警護兵さん達が呼び出した理由は、お嬢様にお客様が来ているというものだった。


 お客様というのは、お嬢様のご友人の3人、金髪のクロエさん、焦げ茶色髪のペサニーさん、赤毛のキーラさんだった。

 竜(わたし)の大ファンな彼女らは、挨拶もそこそこに、迎えに出たお嬢様の、その腕に抱かれたわたしを「キャー! キュートリック様!」とか「可愛い!」とか「柔らかぁ~い!」とかひとしきり撫でてきた。

 相変わらずの感じの女の子3人は、皆、制服姿だ。

 お嬢様のお屋敷での私服姿しか見てないので、ちょっと新鮮だ。

 しばらくすると、キーラさんがお嬢様の部屋が見たいと言いだしたので、2階に移動することになった。


「うぁ~!

 広ぉ~い!

 羨ましいぃぃぃ!」

 キーラさんがお嬢様の部屋に感嘆の声を上げ、しっかり者のクロエさんに「止めなさい!」と怒られている。

 ペサニーさんが困った顔でお嬢様を見ながら「わたし達の部屋は、これの半分ぐらいで……」とか言っている。

 お嬢様は少し申し訳なさそうに言う。

「ごめんなさいね。

 わたくしも、皆と同じ部屋で良いと言ったんだけど――」

「とんでもない!」

 キーラさんがお嬢様にバッと顔を向けて叫ぶ。

「カトリーヌ様!

 そのようなことをされてはいけません!」

「えぇ!?」

 突然のことに、目を白黒させているお嬢様に、キーラさんは目をギラつかせながら更に続ける。

「こんなに素敵な場所を自ら放棄するなんて勿体ない!

 それに、わたし達なんて、個室の談話室は予約制、しかも、いざ使用しようとすると、身分が高い伯爵家が平気で取り上げるって話なんですよ!

 ところが、ここならいつでも使い放題!

 絶対に手放しては――ぐぅ!?」 青筋を立てんばかりの形相のクロエさんがキーラさんの口を手で塞ぎながら、叫ぶ。

「いい加減にしなさい!

 失礼にもほどがあるでしょう!」 カンカンに怒り出したクロエさんの側で「あわわ……」とペサニーさんがオロオロしている。

 それを見ながらお嬢様はため息をつくと「色々、悩んだのが馬鹿馬鹿しくなるわ」と苦笑するのだった。



 下の階の談話室に移り、皆でソファに座る。

 座る並びはお嬢様とクロエさんが同じソファで、向かい合わせでペサニーさんとキーラさんだ。

 キーラさんが神妙な顔で「改めて、大変失礼しました」とお嬢様に頭を下げた。

 苦い顔をしたクロエさんも「わたしもお見苦しい所をお見せしました」と続いた。

 何故か、ペサニーさんも釣られてか「申し訳ございません」と小さく言いつつ頭を下げている。

 お嬢様は苦笑しつつ言う。

「もう良いのよ。

 あと、ペサニーさんは特に謝ることなんて無いから、そんなに縮こまらないで」

 そんなやり取りをしている間に、アネットさんが皆の前にお茶を出していく。

 因みにわたしは、お嬢様の膝の上にいる。

 ま、定位置だからね!

 キーラさんが談話室を見渡しつつ言う。

「良い談話室ですね!

 机や椅子を持ち込めば、あと10人ぐらいは入れそうですし、商談や会議室としても使えそうです」

「そうですね」

とペサニーさんも同意する。

 確かに、商談とか会議室としても使えそうだけど、お嬢様がそのような用途で使用することなんてあるかな?

 クロエさんが談話室の奥にある大きな窓に視線を向けながら言う。

「わたしは個人用の庭園があるのは羨ましいですわ。

 確か、頼めば好みの花壇を作ってくれるとか」

 お嬢様もそちらに視線を向けながら言う。

「そうね、このままでも十分素敵だけど……。

 当家から持ってきても良いのなら、ジギタリスでも植えたいわ」

 クロエさんがニッコリ微笑む。

「ああ、侯爵邸に咲いてた〝狐の鈴〟ですわね。

 あの可愛らしい花がここ一面に咲いていたら、素敵ですわ」

「そうよね」とお嬢様とクロエさんが微笑み合う。

 そこに、ペサニーさんが恐る恐る割り込む。

「あ、あのう……。

 ジギタリスはとても愛らしい花ですが……。

 その、毒が有りまして……。

 止めておいた方が……」

 お嬢様は気まずそうに苦笑する。

「あ、ああ……。

 そういえば、近づかないように厳しく言われていたわね」

 クロエさんも「そうなんですね……」となんともいえない顔になる。

 そんな様子に、ペサニーさんは申し訳なさそうに縮こまる。

「も、申し訳ございません。

 余計な差(さ)し出口(でぐち)を……」

 そんな、ペサニーさんにお嬢様は慌てて首を横に振る。

「何を言ってるの、ペサニーさん。

 あのまま、ジギタリスを望んでいたら、大変なことになっていた可能性もありますもの――とても助かったわ。

 ありがとう!」

 クロエさんもニッコリ微笑む。

「そうよ、ペサニーさん。

 あなたの言葉はいつだって、余計なことでは無いわ。

 そんなことを言ったら、キーラさんの立つ瀬が無いわよ」

「え!?

 なぜ、そこでわたしが出てくるんですか!?」

 キーラさんの不満そうな声に、他の3人が「ふっ!」と吹き出す。

「いや、何故笑うんですか!?」

と更に続けるキーラさんに、お嬢様達の笑いはしばらく続くのだった。



 ようやく落ち着いてきた頃、不満そうにしていたキーラさんはお茶を一口飲むと、少し、得意そうに目を輝かせながら話し始めた。

「ところで、マクロー伯爵令嬢の件、お聞きになってますか?」

「マクロー伯爵令嬢?」とクロエさんが訊ねると、キーラさんは頷く。

「彼女は入学するってことでしたが……。

 どうやら、病気療養のために辞退されたそうです」

 お嬢様が厳しい顔で眉を寄せた。

「マクロー伯爵令嬢といえば、確か、アールイス王国の姫ではないかと噂になった方よね」

「ええ、そうです」

とキーラさんは大きく頷き続ける。

「もっとも、その話は明確に否定されたという事です。

 でも、きな臭いのが……」

 そう言いつつ、キーラさんは前のめりになり口元に手を置く。

 そして、お嬢様達に目配せをする。

 お嬢様達は苦笑しながらも、同じく、前のめりになる。

 お嬢様の膝にいたわたし、お嬢様のお腹と膝とにサンドイッチにされてるんだけど……。

 まあ、痛いとか重いとかは無いから良いけど。

 キーラさんはお嬢様達の様子を見ながら満足げに頷き、続ける。

「実はですね、明確に否定された後、グラーニャ・マクロー伯爵令嬢の話が全く聞こえなくなったのです。

 元々、表に出る方では無かったのですが、華々しく新商品を出し続けて注目を浴びていたのに、そういうのが一切出なくなったのです。

 ……なんだか、おどろおどろしいとは思いませんか?」

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