空母搭載機系ドラゴン?
夜の内に雨はすっかり止み、朝日が海面を照らしてキラキラ輝いているのが見える。
ドラゴンアイズを含む目に映る限り、襲撃者の船は見えない。
とはいえ、当然、油断は出来ないので、わたしたちは砂浜より少し森に入った辺りで準備をする。
厚着をしたイザベル王女様は真剣な表情で宰相様と話をしている。
多少、良くなったとはいえ、まだ熱はあるみたいだけど、それを感じさせないキリッとした顔だ。
隣にいる、王女様の女騎士さんの方が緊張して強ばってたりする。
わたしは、そんな様子をパパさんの左手に乗りながら眺めている。
当然、サイズは小型――いつもの大きさだ。
出発直前に砂浜で大きくなり、鞍を付けて飛ぶ予定となっている。
そういえば、砂浜で助走を付けて飛ぶの、やった事ないなぁ。
転ばないように注意しないと。
そんな事を考えていると、パパさんがわたしの背中を撫でた。
「キュートリック、殿下を頼むぞ!
無事、プールマスにお送りしろ!」
「がっ!」
頼まれなくても、そうするさ!
ただ、わたしがいなくなった後の、島が心配だ。
わたしが身振り手振りで言うと、パパさんは笑い飛ばす。
「大丈夫だ!
やりようなどいくらでもある。
殿下を待避して頂くのも、万が一を考えての事だからな!」
ならいいけど……。
まあ、脳筋パパさんにおっかない顔のジョシュさん、頭の良さそうなメガネ宰相さんが揃っているし、大丈夫かな?
そんな事をやっていると、イザベル王女様にメイドさんが近寄っていくのが見えた。
そして、メイドさんは厳しい顔で厚着をした王女様の服装を確認していた。
あのメイドさん、イザベル王女様と一緒に乗っていく話もあったのだけど、断っていた。
余計なものを乗せて、イザベル王女様にもしもの事があったらいけないと言って……。
危険な島に残る決断をしたのだ、凄い根性をしていると思う。
ただ……。
その後、こっそりわたしの所までやってくると「キュートリック様が雄でもこの際、良いです! しっかり、お守りください! ねっ!」とか言ってくるのはどうかと思う。
だから、前世女子なドラゴンなんだってば!
そんな事を考えていると、パパさんがイザベル王女様達に近づいていく。
「キュートリックなら大丈夫だと思いますが、殿下もお気を付けてください」
イザベル王女様はニッコリ微笑みながら答える。
「ええ、分かりました。
侯爵もお気を付けて」
パパさんは視線を女騎士さんに向けて、革製の袋を手渡す。
「もし、クリスタリ侯爵家の船を見かけたら、これを投げ渡して欲しい。
中には、例の船団についてと、我らの状況を書き記してある。
それだけしたら、そのままプールマスに再度、向かって欲しい」
「はっ!
承知いたしました!」
女騎士さんは敬礼する。
すると、侯爵家の騎士さんが駆けてくる。
「閣下!
敵影無し、との事です!」
パパさんは頷くと、わたしを見る。
わたしは頷くと、森と砂浜の境界線、そこにある岩の陰に飛んでいく。
そこには、騎士さんが鞍を用意していた。
その中央で大きくなると、騎士さんに手伝って貰いながら、手早く装備する。
そこに、パパさん達に守られたイザベル王女様達が駆けてくる。
王女様、そして、女騎士さんが鞍に乗ると、背中が叩かれた。
わたしは砂浜に足を取られないように、それでいて、なるべく早く駆ける。
ドラゴンアイズにも敵の姿は見えない。
――いや、何か来ている!?
視線を水平線に向け、遠くを見る。
くっそ!
またあの船団だ!
でも、あの距離なら砲撃も届かないし、わたし達にも気づいていないはず!
わたしは「がっがっ!」と警告するように鳴く。
パパさんから「そのまま行け!」と声が聞こえてきた。
翼を広げると砂浜を蹴り、すーっと離陸した。
プールマスに向かって羽ばたいていく。
多少、乱暴に扱っても問題ないパパさんとは違い、体調を崩している女の子であるイザベル王女様を乗せているのだ、いくらか速度を抑えている。
とはいえ、船よりは数段速いはずだ。
ふむ。
夜でしかも、雨雲の覆い被った空に比べて、すっかり晴れた今は非常に飛びやすい。
太陽の位置で、方向も分かり易いしね。
そんな事を考えていると、ドラゴンアイズに船影が映る。
!?
あの帆に描かれているのは……。
侯爵家のマークだ!
侯爵家の船だ!
大型船が1隻と中型船が3隻ほどで進んでいる。
結構近くまで来てたんだ。
絶対、夜中に出発したよね!
まあ、主が単騎で飛び出してなかなか帰ってこなかったら、そりゃそうなるよね。
そんな事を考えつつ「がっ! がっ!」と鳴く。
そして、船の方に飛ぶ。
最初「どうしたんですか!? キュートリック様!」とか叫んでいた女騎士さんだったけど、わたしが前脚の指でさすと、見えてきたのか「姫様! 侯爵家の船です!」と嬉しそうに声を上げた。
侯爵家の船からもこちらが見えたようで、皆がこちらに手を振っている。
このサイズでもわたしだって気づいている様で、皆、親しげな笑顔だ。
あ、侯爵家騎士団の団長さんもいる。
こちらは何やら、ぷりぷり怒っている様子だ。
そりゃそうだよね。
ま、まあ、お説教はパパさんにしてね!
近づくと、侯爵家の皆は困惑した表情になる。
わたしに乗っているのがパパさんじゃないって気づいたのかな?
ふむ、その辺りは女騎士さんが投げる手紙を読めば分かるんじゃないかな?
そんな事を考えていると、後ろにいるイザベル王女様がとんでもない事を言い出した。
「キュートリック様!
あの船の上に降りる事は出来ないかしら!」
え!?
船の上に!?
目の前にある大型船は、白バラ姫号ほどではないけど、大きな船だ。
だけど、木造の甲板の上なんかに乗れるのかな?
困惑するわたしに、イザベル王女様は更に続ける。
「わたしはあの船で戻るから、キュートリック様にはクリスタリ侯爵達を助けにいって欲しいの!」
な、なるほど……。
そういうことか。
確かに、良い手ではある。
正直、先ほど目に入った船団は気になっていたし。
ただ、多少頑丈に作られているとはいえ、あの上にいけるのかな?
女騎士さんは「殿下、危険です!」とか言っているし……。
う~ん、でも大昔の空母は木造だったってWeb小説に書いてあった様な気がする。
戦闘機が発着出来たのであれば、偉大なる竜たるわたしが出来ないはずがない!
……気がする。
挑戦してみよう!
最悪、甲板を突き破っても、王女様さえ庇えば、そこまで酷い事にはならないでしょう!(希望的観測)
取りあえず、女騎士さんには手紙の入った袋を団長さんに投げて貰う。
それを慌てて拾った団長さんは、それを読むと、わたしと手紙を交互に見たあげく、片膝を付き、臣下の礼を取った。
いや、王族の前では正しいかもしれないけど、今、凄く急いでるの!




