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転生ドラゴンは、今日もお嬢様の膝の上からお守りする!  作者: 人紀
第五章

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王女様と撤退?

 そんな事を考えつつ、小さくなったわたしは、イザベル王女様の膝でうつらうつらとしている。

 木の上に掛けた布で雨を防いだ上に、目の前にはたき火がある。

 なので、防寒が完璧とまでは行かないけど、仄かに温かい。

「がぁ~」

と大きな欠伸をしてしまう。

 ふむ、ドラゴンとはいえ、もう日付が変わってもおかしくない時間なので、それも仕方がないだろう。

 下手をすると徹夜になってしまう。

 う~ん、警戒のために起きていたけど、少し眠った方が良いかな?

 いや、まだまだ油断すべきじゃないかな?

 判断が難しい!

 すると、わたしの頭に置かれていた手が外れ、そして、「寒い」という声が聞こえてきた。

 視線を上げると、イザベル王女様が肩に掛けられた女騎士さんの上着の、その前をしっかりと閉め直しているのが見えた。

 たき火の光に照らされたイザベル王女様の肌が、先ほどより青白く見えた。


 え?

 大丈夫?


 わたしが〝大丈夫!?〟という気持ちを込めて「がっ!?」と声を掛けると、イザベル王女様はニッコリと微笑み「大丈夫ですよ」と答えた。

 いやいや、大丈夫に見えないから!


「がっ! がっ!」と言っていると、それに気づいた女騎士さんが「どうかされましたか?」と近づいてきた。

 イザベル王女様が「何でもないわよ」というのを制すように、身振り手振りをする。

 すると、イザベル王女様のメイドさんが少し険しい顔で近寄ってくると「姫様、失礼します!」と王女様の額に手を置いた。

 そして、目を見開く。

「大変!

 姫様、熱がございますよ!」

 王女様のメイドさんの言葉に、周りにいる人達がざわつき始める。

「大げさよ……」

というイザベル王女様だったけど、その瞳が揺れる。

 メイドさんは表情を更に険しくさせる。

「大げさではございません!

 恐らく、体を冷やしてしまわれたからでしょう!

 さ、少し横になってください。

 誰か、医療魔術師を!」

「呼んでくるわ!」

と、女騎士さんが駆けていくのにも一瞥もせず、メイドさんは座ると、その膝を枕代わりにするように、イザベル王女様を横にさせる。

 イザベル王女様は「大丈夫なのに……」と言いつつも、弱々しく体を横たえる。

 その体は寒いからか、微かに震えていた。

 王女様のメイドさんはその肩や背をさすり、何とか温かくさせようとする。

 って、見ている場合じゃないか。

 モフモフなわたしを抱きしめてくれれば、多少は温かくなるだろう!


 いや、それよりも……。


 わたしは王女様の後ろに移動すると、ぐぐぐっ! っと大きくなった。

 先ほど、パパさんを乗せた時と同じサイズだ。

 王女様のメイドさんが振り返り「きゃ!」と声を上げる。

 そんなメイドさんに身振り手振りで交代すると伝えた。



「温かいわ、キュートリック様……」

 薪の前で横になると、イザベル王女様をもふもふなわたしの胸の上に乗せ、腕(前脚)でハグするように固定した。

 やはり疲れていたのか、イザベル王女様は直ぐに寝息を立て始める。

 ゆっくり休んで貰おうと、わたしは極力動かないように注意する。


 王女様、極上のドラゴンファーに包まれておやすみなさい!


 そんな事をやっていると、王女様のメイドさんがすすすっと近寄ってくる。

 そして、ぼそりと言う。

「キュートリック様は……。

 オス、とかではないですよね?」


 前世、女の子ですが!?


 すると、何人かが近づいてくる気配を感じる。

 ドラゴンアイズで意識すれば、松明を持った王女様の女騎士さんと侯爵家の騎士さん、その後をパパさん、メガネ宰相さん、護衛騎士のジョシュさんら首脳陣が続いていた。

 女騎士さんは困った顔、首脳陣は硬い表情をしている。

 足音に気づいたメイドさんが振り向くと、メガネ宰相さんが招くように手を振った。

 メイドさんは囁くように「キュートリック様、少し、姫様をお願いします」と言うと、パパさん達の元に早足で行く。

 わたしの優秀なドラゴンイヤーが少し離れた宰相さんの、どことなく淡々(たんたん)とした声も拾ってくる。

「医療魔術師だが、怪我人の治療の為、魔力欠乏を起こしている。

 無理をさせる事も出来なくはないが……。

 殿下のご容態はどうだ?」

「熱はまだ、下がってはいませんが、今は眠っていらっしゃいます。

 キュートリック様のお陰で、温かくされていますので、少し様子を見る事も可能かと」

 宰相さんが表情を変えず頷く。

「取りあえず、朝まで様子を見よう。

 それまでには、医療魔術師の魔力も、ある程度回復するだろうしな。

 朝、明けてからどうするかだが……」

 宰相さんにチラリと見られて、パパさんは頷く。

「わたしが夜の内に帰ってこなかったら、救助船を出すように伝えてある。

 白バラ姫号ほどではないが、巨大軍船でくるとは思う……」

 渋い顔で言うパパさんに、王家護衛騎士のジョシュさんが言う。

「正直、あの小型船団の鋼鉄の玉を放つ魔道具は、大型船であればあるほど厳しいです。

 キュートリック殿に乗った閣下がいらっしゃらないと対抗できないので、その辺りの対策も必要になるかと」

 宰相さんが口を挟む。

「あと、どれだけあの魔道具を乗せた船があるか次第になるが、この島も安全とはいえないな。

 取り囲まれ、鋼鉄の玉を撃ち込みつつ兵を送られれば、かなり厳しい戦いになる。

 何より、殿下のお命も危うくなる」

 パパさんが少し考える様子を見せた後、こちらをチラリと見る。

 そして、女騎士さんに視線を向けた。

「君は、殿下がキュートリックに乗っている時も、護衛として一緒に居たな」

 突然、話を振られた女騎士さんは声をうわずらせつつも「は、はい!」と返事をする。

「例えば、キュートリックに殿下と乗ることは可能か?」

 ジョシュさんが訝しげに「侯爵?」と言い、宰相様が「なるほど」と頷いた。

 女騎士さんは動揺した様子で答える。

「せ、説明は聞いていましたので、例えば、わたし1人であればなんとか。

 ただ、殿下とご一緒となると――」

 女騎士さんの言葉を打ち消すように、パパさんが言う。

「キュートリックは賢い奴だ。

 乗り手の様子を気に掛けてくれる。

 問題は、乗り手がやってはいけない事をしてしまい、キュートリック(あいつ)を動揺させてしまうことだ。

 そこさえ押さえてくれれば良い」

 ジョシュさんが目を見開く。

「侯爵!

 まさかキュートリック殿に殿下を乗せて、プールマスまで戻っていただくおつもりか!?」

 パパさんは真剣な表情で頷く。

「宰相の言う通り、ここに殿下がいらっしゃるのは危険だ。

 ここで手をこまねき、相手方に襲撃の機会を与えるよりは、キュートリックに乗って安全な場所に戻って頂く方が良い」

「しかし!」

 ジョシュさんが何かを言おうとするのを、宰相さんが手を上げて制する。

「わたしも侯爵の意見に賛成だ。

 相手方の手の内を全て把握し出来ていない現状、この場にいるよりは、キュートリック殿と戻られるのが安全だと思う。

 それに、我らの現状を国に伝え、対処して貰う必要もある。

 そう考えれば、キュートリック殿と殿下にはプールマスに戻って頂くのが良い」

 宰相さんにも言われては反論できないのか、ジョシュさんは渋い顔で頷いた。

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