王女様達の状況を確認!
「キュートリックだ!
こいつは、体の大きさを自在に変える事が出来るのだ!」
「は、はあ……」
ゴドン老さんとそして、兵士さん達はポカンとした顔になる。
いつも、パパさんと一緒にいる騎士さん達はわたしが大きくなるのは知っているけど、ゴドン老さんとその兵士さん達は知らないもんね。
そりゃ、そういう反応にもなるか。
しかし、この人達、服や髪、そして、顔が濡れているのもそうだけど、煤で汚れている。
中には怪我をしている人もいるようで、腕に添え木をしたり、包帯を巻いたりしている。
額に血の滲んだ包帯を巻いているゴドン老さんが愉快そうに呵呵と笑う。
「申し訳ございません!
出港時、そのように聞かされておりましたが、まさか本当の事とは!」
パパさんが楽しそうに言う。
「まあ、そのような事態にならないに越した事はなかったのだがな……。
キュートリックのこの事は、余り公にはしたくない」
「畏まりました。
そのように周知します」
ゴドン老さんが恭しく頭を下げる。
パパさんが真剣な声音に変えながら訊ねる。
「で、殿下はご無事か?」
「はっ!
他の方々も含めて、この側にある無人島に待避して頂いております」
「そうか、すまんが先に行く!」
パパさんの返答にゴドン老さんは「はっ! お気を付けて」と再度、頭を下げた。
パパさんの指示に従い、海面を進んでいくと、島が見えてきた。
あ、海岸の砂浜に王国の護衛騎士、ジョシュさんの姿がある。
恐ろしげな顔を厳めしくしながらこちら側を睨んでいた。
ただ、更に泳いで近づき、パパさんが「お~い!」と手を振れば、驚いた顔になり、側にいる騎士さんに声を掛けた。
島の奥に走って行く騎士さんをそのままに、ジョシュさんも大きく手を振ってきた。
ずんずん進み、島の直ぐ側まで来ると、砂地に足が付いた。
立ち上がり、ジョシュさんの元に急ぐ。
パパさんが「殿下は!?」と声を掛け、ジョシュさんが「ご無事です!」と側に近づいてきた。
後ろで鞍の留め具を外す音が聞こえてきたので、完全に水から出た所で止まる。
侯爵家の騎士さんか兵士さんか分からないけど、何人もの全身が濡れている男の人が「閣下、お手伝いします!」と駆け寄ってきた。
ジョシュさんが顔を歪める。
どうやら笑顔のようで、そのまま明るく言う。
「侯爵とキュートリック殿のおかげで、何とか殿下をお守りする事が出来ました!
感謝します!」
鞍から降りたパパさんが首を横に振る。
「いや、我が領の艦隊が守りながらも、この体たらく、申し訳なく思う」
ジョシュさんは表情を真剣なものに変えながら言う。
「閣下の艦隊には何ら瑕疵はございません。
相手は遠距離から恐るべき魔術で攻撃をしてきました。
しかも、その攻撃魔術は魔術での防御すらほとんど意味を成さないようで――」
ジョシュさんの言葉をパパさんが手を上げて遮る。
「卿、あれは魔術ではない。
いや、魔術を使用しているのかもしれないが、飛ばしているのは恐らく鉄球だ」
「な、なんと!」
パパさんはわたしの右頬を撫でながら頷く。
「キュートリックがそれを受けた時に見えた。
大体、これぐらいか……」
と言いながら、パパさんはわたしから手を離し、両手で大きさを表す。
前世、体育の授業で見たバスケットボール、それより少し小さいぐらいか。
いや、わたし、良くそんなのを受けて無事だったね!
流石はドラゴンボディ!
そんな事を考えていると、島の奥から何人かが出てくるのが見えた。
1人はイザベル王女様で、逃げる時に動きやすいようにか、乗馬用のパンツスタイルの服を着ていた。
わたしの方を見ると、ホッとした顔になり、手を振ってきた。
水に濡れたためか、それとも怯えのためか、顔が少し、青ざめて見えた。
そりゃ、怖かったよね!
可哀想!
わたしが「がっ! がっ!」と鳴きながら近づくと、イザベル王女様も近づいてきて、わたしの胸に抱きついてきた。
これ、前世Web小説なら絶対、転移系男子の役回りだ!
でも残念、前世女子な上に、現在、ドラゴンである!
そんな事を考えていると、イザベル王女様は顔を上げて微笑んだ。
「キュートリック様、ありがとうございます!
侯爵とキュートリック様のおかげで皆も助かりました!」
皆、か。
なんだか少し寂しいな。
すると、パパさんが側まで来て、片膝を付いた。
「殿下、よくぞご無事で!」
イザベル王女様はわたしから離れると、パパさんの前に行く。
「侯爵、本当にありがとうございます。
侯爵とキュートリック様のおかげです」
「恐れ多い事です。
――今から、キュートリックに乗り、周りの警戒と、生存者の救出に行ってきたいと思います」
イザベル王女様は頷く。
「よろしくお願いいたします、侯爵。
キュートリック様も」
イザベル王女様がわたしの腕(前脚)を撫でるので、王女様に頬ずりをして返した。
少し、くすぐったそうにしたイザベル王女様は嬉しそうに微笑んでくれた。
わたしはパパさんを乗せて島の周りを一通り見て回った。
やはり、相手側の船影は見えなかったので、完全に撤退して行ったのだと思う。
また、海面を調べると何人もの生存者が、樽とか沈没した船から剥がれた板とかに掴まっていた。
なので、一旦、海に降りると、それら皆を回収していった。
中には、襲撃者側の兵士さんもいたけど、降伏してきたので、彼らも回収し、侯爵家や国軍の兵士さん達に預けた。
しかし、被害が凄まじい。
白バラ姫号を含む侯爵家の船2隻、国軍の船3隻が沈没し、国軍の1隻はかろうじて沈まなかったけど、航行不可能となった。
アールイス国軍の船も2隻、イザベル王女様を守ろうと奮戦したらしいけど、皆、沈んでしまったそうだ。
それらは大型船だったけど、相手側の小回りのきく上に数が多く、それでいて遠距離攻撃のできる船に劣勢だったという。
イザベル王女様を始めとする要人は助かったけど、当然、全員無事とは行かなかった。
その話を聞いた時、イザベル王女様は悲しげに俯き、愛の女神さんに祈りを捧げた。
わたしが大きくなる事は内密にするように、呼びかけた。
アールイス王国の人達にも、気難し系、メガネ宰相さんがお願いをしていた。
アールイス国軍の隊長さんらしき人は大きく頷き「我らも、そちらの望み通りにいたします」と答えた。
その後、「頼もしいですなぁ~」とかチラチラこちらを見てきたから、いざとなったら、わたしが助けに来てくれるかもとか、期待しているのかもしれない。
ぐーたらドラゴンに多大な期待をして貰っても困るんだけどなぁ~
まあ、イザベル王女様がピンチになれば、助けに行く事にはなると思うけど……。




