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転生ドラゴンは、今日もお嬢様の膝の上からお守りする!  作者: 人紀
第五章

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弾撃と雨にさらされながら2

 1隻、2隻、3隻……。

 大砲を剥がしていく。

 4隻目の大砲を海に落とすと、次に狙っていた船には魔術師さんがいるようで、目を腕で覆いながら杖を振り上げている。


 ふむ、ならば……。


 わたしは後ろに合図をすると、直ぐに了解の返事が来た。

 息を吸い込むと、その船に近づき「がぁぁぁ!」と思いっきり声を張り上げた。

 わたしの叫び声に船がガタガタ揺れ、魔術をしようとしていた人はひっくり返った。

 こちらを見る瞳は細かく揺れている。

 この技はパパさん曰く、西の大陸の白竜様? が時々使っていたものらしい。

 わたしも出来ないかと言ってきたので、町で悪さをしていたおじさんに試した所、結構効果的だったので、使用する事になった。

 前世で言う音響兵器みたいなものなのかな?

 単純な音だけでなく、ドラゴン的な何かしらの力もあるかもしれないけど、その辺りはよく分からない。


 船から大砲を引っぺがし、次に向かう。


 しかしこの大砲、こんな雨の中、よく撃てるなぁ~

 火薬とか時化(しけ)る気がするんだけど……。

 いや、優秀なドラゴンノーズでも嗅ぎ取れないと言う事は、火薬を使わない未知なる大砲なのかもしれない。

 発射音も凄く小さいし。

 ひょっとして、魔術かな?

 いや、今はどうでも良いけど!


 チラリと視線を向けると、白バラ姫号が更に沈んでいく。

 だけど、恐らく救難ボートだろう船が準備され、皆がそれに乗り込むのがドラゴンアイズ(広範囲版)に見える。

 その様子までは見てないけど、多分、イザベル王女様もそれに乗っただろう。

 そちらを気にするより、この危険な大砲をどうにかする――わたしのやるべきはこれだ!

 そんな事を考えていると、何やら、おじさんの声で「突撃ぃぃぃ! 竜に構わず、突撃ぃぃぃ!」と聞こえてきた。

 途端、全ての船が一気に進み出す。

 な!?


 大砲を引き剥がした船も、追随するように進んでいく。

「キュートリック、沈めろ!」というパパさんの焦った声が聞こえてきた。

 わたしが側にある船の船尾を掴み、破壊しようとするも、焦っているからか船は沈まないし、その間、他の船が凄い勢いで白バラ姫号に向かっていく。

「炎烈風(ファイアゲイル)!」

 パパさんが魔力を帯びた声を叫び、目の前の船上で炎の風が吹き荒れる。


 ひぃ!


 炎の風に飲まれた人は燃え上がり、海に吹き飛ばされていく。

 とてもじゃないけど、生き残れるとは思えない。

 ここはもう戦場で、そんな事を考えてる場合じゃないんだろうけど……。


 怖い!

 怖くて仕方がない!


「キュートリック!」

 パパさんの声が聞こえる。

 船がぐんぐん、白バラ姫号の、イザベル王女様の方に向かっていく!

「がぁ!」

 わたしは叫び、そちらに飛ぶ。

 そんな事を考えている場合じゃない!

 イザベル王女様を、あの優しい王女様を守らなくては!


 先頭の船、その前まで行くと船首を掴み、向きを強引に変えた。

 後ろから続いていた船が何隻もぶつかる。


 食らえ!

 竜の咆哮!


 音響攻撃に、船員が耳を押さえる。

「キュートリック!」という声と同時に、お腹に衝撃を受ける。


 くそっ!

 大砲をモロ受けた!

 だけど、何とか耐えられる!


 向きを変えてた船の、その脇を通り過ぎようとした船に急降下をして、船員を海に落とす。

 更に飛び上がって、別の船を狙う。

 鈍い衝撃が左頬に直撃し、視界が揺れる!

 だからなんだぁぁぁ!

 それを押し返すように、竜の咆哮を放つ!


 放ち終えた後、パパさんの炎の魔術が船を焼く。

 でも、まだまだ10隻ほど、しかも、広がりながら抜けようとしてくる。

 このぉぉぉ!

 飛び上がり、竜の咆哮――飛んできた砲弾を手(前脚)で叩き落とす。

 再度、竜の咆哮――がっ!?

 左足(後ろ脚)、更に、左肩にも直撃!

 パパさんが「一旦下がれ!」っていうけど、後ろを向いたら、パパさんに当た――今度は右頬に直撃した。

 もう、もう、もう、いい加減にしろぉぉぉ!


 全力で息を吸う。

 なんだか、お腹の底が熱くなった気がするけど、どうでも良い!


 もう、あっちにいけぇぇぇ! って気持ちを込めて「がうぁぉぉぉぉぉぉ!」と吠えた。

 何故か、目の前がパッと明るくなる。


 え!?

 何!?


 途端、炎の束がぶぉんと放たれた!?

 それが船の前を横切るように、海を焼いていく。

 ぶわぁ! っと水蒸気が舞う。


 え!?

 なに!?

 何が起こった!?


 困惑していると、口元がたまらなくヒリヒリしてきた。


 あ、熱っ!?

 熱、痛たたたたぁ!?


 慌てて、海に降りると、顔を沈める!

 痛い、何これ、痛たたたたぁ!?

 いや、これ、塩水だから染みていたいんだ!

 水面から顔を上げる。

 尖った口、その先辺りが赤く腫れているのが見えた。


 いや、何がどうなった!?


 困惑していると、背中をパチパチ叩かれた。

 何やらパパさんが「何をやってるんだ、お前はぁぁぁ!」と怒っている。


 いや、知らないって、わたしだって!


 うつ伏せっぽく降りた(落ちた)から沈んではいないだろうけど、ひょっとしたらパパさん、水しぶきでびしょびしょにはなっているかもしれない。

 気になったけど、銅板で見る気にはなれない。

 ん?

 ちょっと、海水が熱くなってるかな?


 少し離れよう。


 尻尾を使って泳ぎながら離れていく。

 水蒸気や夜の闇で本来は見にくくなっているはずだけど、わたしのドラゴンアイズ(覚醒版)は、視界外の相手側の様子も分かる。

 船で突貫攻撃を仕掛けてきた彼らだったけど、流石にドラゴンブレスには怯えたらしく、海に落ちた人達を救出しつつ引き返していく。

 下がってくれる分には、わたしとしては問題ない。


 すると、後ろから声が聞こえてくる。


「キュートリック、空に戻れそうか?」

 う~ん、練習していたならともかく、ぶっつけ本番では難しいかな?

 そもそも、わたし、この体になって泳ぐなんて、お嬢様とお風呂に入る時の、しかも、メイドのアネットさんに怒られるまでの短い間ぐらいだからなぁ~

 さらに、そこから飛ぶのは……。

 パパさんが背中にいなかったら試してみるだけはしただろうけど、流石に危ない。

 わたしが首を横に振ると、パパさんも諦めた感じに「まあ、そうだろうな」と言う。


 更に、尻尾を使いながら泳いでいく。

 浴槽とは違い、波があるので少し苦戦したけど、何とか進んでいく。


 ん?

 あれは?


 わたしが「がっ! がっ!」と言うと、パパさんも気づいたのか「そちらに向かってくれ!」と返事をした。

 更に進み、小舟――多分、救難用の船――に近づいていく。

 向こうも気づき、一瞬警戒したが、パパさんが「お~い!」と手を振ると、警戒が解けた。

 中には、兵士さんっぽい男の人達が乗っていて、その中の1人、ゴドン老さんが目を丸くしながら言った。

「閣下……でいらっしゃいますか?

 その乗っている竜は……」

 それに対して、パパさんが自慢げに答える。

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