弾撃と雨にさらされながら2
1隻、2隻、3隻……。
大砲を剥がしていく。
4隻目の大砲を海に落とすと、次に狙っていた船には魔術師さんがいるようで、目を腕で覆いながら杖を振り上げている。
ふむ、ならば……。
わたしは後ろに合図をすると、直ぐに了解の返事が来た。
息を吸い込むと、その船に近づき「がぁぁぁ!」と思いっきり声を張り上げた。
わたしの叫び声に船がガタガタ揺れ、魔術をしようとしていた人はひっくり返った。
こちらを見る瞳は細かく揺れている。
この技はパパさん曰く、西の大陸の白竜様? が時々使っていたものらしい。
わたしも出来ないかと言ってきたので、町で悪さをしていたおじさんに試した所、結構効果的だったので、使用する事になった。
前世で言う音響兵器みたいなものなのかな?
単純な音だけでなく、ドラゴン的な何かしらの力もあるかもしれないけど、その辺りはよく分からない。
船から大砲を引っぺがし、次に向かう。
しかしこの大砲、こんな雨の中、よく撃てるなぁ~
火薬とか時化る気がするんだけど……。
いや、優秀なドラゴンノーズでも嗅ぎ取れないと言う事は、火薬を使わない未知なる大砲なのかもしれない。
発射音も凄く小さいし。
ひょっとして、魔術かな?
いや、今はどうでも良いけど!
チラリと視線を向けると、白バラ姫号が更に沈んでいく。
だけど、恐らく救難ボートだろう船が準備され、皆がそれに乗り込むのがドラゴンアイズ(広範囲版)に見える。
その様子までは見てないけど、多分、イザベル王女様もそれに乗っただろう。
そちらを気にするより、この危険な大砲をどうにかする――わたしのやるべきはこれだ!
そんな事を考えていると、何やら、おじさんの声で「突撃ぃぃぃ! 竜に構わず、突撃ぃぃぃ!」と聞こえてきた。
途端、全ての船が一気に進み出す。
な!?
大砲を引き剥がした船も、追随するように進んでいく。
「キュートリック、沈めろ!」というパパさんの焦った声が聞こえてきた。
わたしが側にある船の船尾を掴み、破壊しようとするも、焦っているからか船は沈まないし、その間、他の船が凄い勢いで白バラ姫号に向かっていく。
「炎烈風!」
パパさんが魔力を帯びた声を叫び、目の前の船上で炎の風が吹き荒れる。
ひぃ!
炎の風に飲まれた人は燃え上がり、海に吹き飛ばされていく。
とてもじゃないけど、生き残れるとは思えない。
ここはもう戦場で、そんな事を考えてる場合じゃないんだろうけど……。
怖い!
怖くて仕方がない!
「キュートリック!」
パパさんの声が聞こえる。
船がぐんぐん、白バラ姫号の、イザベル王女様の方に向かっていく!
「がぁ!」
わたしは叫び、そちらに飛ぶ。
そんな事を考えている場合じゃない!
イザベル王女様を、あの優しい王女様を守らなくては!
先頭の船、その前まで行くと船首を掴み、向きを強引に変えた。
後ろから続いていた船が何隻もぶつかる。
食らえ!
竜の咆哮!
音響攻撃に、船員が耳を押さえる。
「キュートリック!」という声と同時に、お腹に衝撃を受ける。
くそっ!
大砲をモロ受けた!
だけど、何とか耐えられる!
向きを変えてた船の、その脇を通り過ぎようとした船に急降下をして、船員を海に落とす。
更に飛び上がって、別の船を狙う。
鈍い衝撃が左頬に直撃し、視界が揺れる!
だからなんだぁぁぁ!
それを押し返すように、竜の咆哮を放つ!
放ち終えた後、パパさんの炎の魔術が船を焼く。
でも、まだまだ10隻ほど、しかも、広がりながら抜けようとしてくる。
このぉぉぉ!
飛び上がり、竜の咆哮――飛んできた砲弾を手(前脚)で叩き落とす。
再度、竜の咆哮――がっ!?
左足(後ろ脚)、更に、左肩にも直撃!
パパさんが「一旦下がれ!」っていうけど、後ろを向いたら、パパさんに当た――今度は右頬に直撃した。
もう、もう、もう、いい加減にしろぉぉぉ!
全力で息を吸う。
なんだか、お腹の底が熱くなった気がするけど、どうでも良い!
もう、あっちにいけぇぇぇ! って気持ちを込めて「がうぁぉぉぉぉぉぉ!」と吠えた。
何故か、目の前がパッと明るくなる。
え!?
何!?
途端、炎の束がぶぉんと放たれた!?
それが船の前を横切るように、海を焼いていく。
ぶわぁ! っと水蒸気が舞う。
え!?
なに!?
何が起こった!?
困惑していると、口元がたまらなくヒリヒリしてきた。
あ、熱っ!?
熱、痛たたたたぁ!?
慌てて、海に降りると、顔を沈める!
痛い、何これ、痛たたたたぁ!?
いや、これ、塩水だから染みていたいんだ!
水面から顔を上げる。
尖った口、その先辺りが赤く腫れているのが見えた。
いや、何がどうなった!?
困惑していると、背中をパチパチ叩かれた。
何やらパパさんが「何をやってるんだ、お前はぁぁぁ!」と怒っている。
いや、知らないって、わたしだって!
うつ伏せっぽく降りた(落ちた)から沈んではいないだろうけど、ひょっとしたらパパさん、水しぶきでびしょびしょにはなっているかもしれない。
気になったけど、銅板で見る気にはなれない。
ん?
ちょっと、海水が熱くなってるかな?
少し離れよう。
尻尾を使って泳ぎながら離れていく。
水蒸気や夜の闇で本来は見にくくなっているはずだけど、わたしのドラゴンアイズ(覚醒版)は、視界外の相手側の様子も分かる。
船で突貫攻撃を仕掛けてきた彼らだったけど、流石にドラゴンブレスには怯えたらしく、海に落ちた人達を救出しつつ引き返していく。
下がってくれる分には、わたしとしては問題ない。
すると、後ろから声が聞こえてくる。
「キュートリック、空に戻れそうか?」
う~ん、練習していたならともかく、ぶっつけ本番では難しいかな?
そもそも、わたし、この体になって泳ぐなんて、お嬢様とお風呂に入る時の、しかも、メイドのアネットさんに怒られるまでの短い間ぐらいだからなぁ~
さらに、そこから飛ぶのは……。
パパさんが背中にいなかったら試してみるだけはしただろうけど、流石に危ない。
わたしが首を横に振ると、パパさんも諦めた感じに「まあ、そうだろうな」と言う。
更に、尻尾を使いながら泳いでいく。
浴槽とは違い、波があるので少し苦戦したけど、何とか進んでいく。
ん?
あれは?
わたしが「がっ! がっ!」と言うと、パパさんも気づいたのか「そちらに向かってくれ!」と返事をした。
更に進み、小舟――多分、救難用の船――に近づいていく。
向こうも気づき、一瞬警戒したが、パパさんが「お~い!」と手を振ると、警戒が解けた。
中には、兵士さんっぽい男の人達が乗っていて、その中の1人、ゴドン老さんが目を丸くしながら言った。
「閣下……でいらっしゃいますか?
その乗っている竜は……」
それに対して、パパさんが自慢げに答える。




