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転生ドラゴンは、今日もお嬢様の膝の上からお守りする!  作者: 人紀
第五章

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弾撃と雨にさらされながら1

 ふむ、多分あれらと付き合っていると、夜が明けてしまう事だろう。

 わたしは装備していた照明の魔道ランタンを点灯させると、パパさんに背中を向け、ゆっくりと走り出した。

 脳筋パパさんは全身鎧を装備していようが、雨で地面が泥濘(ぬかる)んでいようが、かなり速く走る事が出来る。

 なので、しばらくすると、わたしの背中の鞍(くら)を掴むと、引き寄せるように乗ったようだった。

 後ろから「閣下ぁぁぁ!」という悲鳴に近い怒声が聞こえてくる。

 が、固定具を取り付けたのか、わたしの背中が叩かれる。


 飛べって合図だ。


 駆けたまま翼を広げ、地面を強く蹴る。

 体がふわりと浮き上がり、更に翼を軽く羽ばたく。

「キュー!」

というお嬢様の声が聞こえてくる。

 視線を向ければ、お屋敷のバルコニーにお嬢様が立っていた。

 お嬢様が更に「何をやってるの、キュー! 止めなさい!」と叫んでいる。


 ああ、お嬢様があんな風に雨に濡れてしまうと、風邪を引いてしまうのに!


 軽く反転しながら〝大丈夫ですよ、お嬢様!〟という気持ちを込めて、「がぁ!」と鳴くと、パパさんも「カティ、すぐ戻る!」と叫んだ。

 わたしが旋回した後、海に向かって飛ぶと、背後から「キュぅぅぅ! お父様ぁぁぁ!」というお嬢様の声が聞こえてくる。

 だけど、申し訳ないけど、それどころじゃない!

 パパさんも加速するように指示を出してきた。

 わたしは強く、羽ばたいた。



 海の上を結構な速度で飛んでいく。

 雨粒が顔に当たって鬱陶しい。

 時化というほどでもないから助かってはいるけど……。

 とはいえ、暗いし、雨雲が月明かりどころか星の光すら隠しているから、きちんと飛んでいるのか、時々不安になる。

 背中から少し左に飛べと合図が来る。

 言う通りにしつつ、右手に付いている銅板でパパさんを映そうとする。

 ……なにやら、光っているのは分かるけど、濡れてるのでよく分からない。


 多分、魔道ランタンで方位磁石的なものを見つつ、こちらに指示を出しているのだとは思う。


 因みに、わたしが付けている鞍、乗り手の前方に魔道具が付いていて、風やら雨やらを防いでくれるらしい。

 まあ、そうしないと高速で飛んだ時、向かい風で息が出来なくなっちゃうもんね。

 いや、それはともかく、これ方位は分かっても海面が暗すぎて、下手をすると船を追い越しちゃうんじゃないかな?

 明かりを付けながら飛んでいればいいけど、その辺り、よく分からないし。

 見張りの人は外に出てるから、少しぐらいは付けているのかな?

 それでも、この状況下だと、豆粒程度にしか見えないだろうけど。


 ……いや、わたしなら見える!


 なんといっても、わたしはドラゴン――優秀なドラゴンアイズなら、夜目だって利くはずだ。

 しっかり見ろ!

 絶対に見えるはずなのだ!


 なんて、自分に言い聞かせつつ、目を凝らしていると――ただの暗闇だった海面が、徐々にその形が見えてくる!?


 うわっ!

 本当に見える!


 ただ見えるだけでなく、水面の揺れる波の一つ一つが把握できている感じだ。

 しかも、正面だけでなく、わたしを中心に100メートル四方ぐらいの動きが、立体的に分かる、そんなイメージだ。


 どんだけ優秀なの、このドラゴンボディ!


 そんな風に感動していると、遠くから何かが砕けるような音が聞こえてきた。

 視線を向けるも、流石にそこまでは見えない。

 ただ、少し、明るい気がする。

 パパさんにも聞こえたのか、更に加速するように促してきた。


 良し行くぞ!

 しっかり掴まってて!


 そんな気持ちを込めて、「がっ!」と鳴くと、羽ばたく翼を、更に強めた。


 雨を裂くように、一気に加速していく。

 近づくにつれて全貌が見えてくる。

 思ったより、明かりは広くて強い。

 !?

 巨大な木造船、白バラ姫号が見えてきた。

 時折、大きく揺れ、しかも、煙を上げて傾いている。

 周りに付き従っていた船も、半壊している。

 嘘!?

 一体何があったの!?

 いや、何よりもだ!

 注目をこちらに集めよう!


 わたしは左手(前脚)でパパさんに合図をする。

 しばらくすると、後ろから許可する合図が送られてきた。

 大きく息を吸うと、思いっきり吠えた。

「がぁぁぁぁぁぁ!」

 更に、パパさんがしたのだろう、わたしの周りが魔力の照明で明るくなる。

 これで敵も味方もこちらに気づいたはず!

 出来るだけ、味方にわたしの胸にある侯爵家の印が見えるように飛んでいると、何かがすぐ横を通り過ぎた。


 え?

 何?


 視線をそちらに向けるも、何もいない。

 何だろう?

 と、飛んできた元らしき方向に視線を移す。

 ん?

 あれは、船?

 前世、漁師さんが10人ぐらい乗ってそうな漁船――そのサイズの船が何隻も見えた。

 その上には筒? っぽいものが船首に置いてあり、何故か全て、こちらを向いていた。


 ?


 その筒を操っているだろう人達がこちらを向きながら、何かをした。


 ……あ、た、大砲だぁぁぁ!


「ががが!」と緊急回避を伝えつつ、体を右に傾けながら、高度を下げる。

 先ほどまでわたし達が居た場所を、無数の砲弾が通り過ぎる。


 ひぃぃぃ!

 びっくりしたぁぁぁ!

 くっそぉぉぉ!


 わたしは降下をしつつ、船の背後に回る。

 大砲は、そんなに簡単に向きを変える事が出来ないようで、船の上にいる人達はなにやらオロオロしている。

 よく見ると、その船は帆が無くて、代わりに櫂(かい)の漕ぎ手が10人ほどいる。

 大砲? が船首に取り付けられていて、それを操作する人が2人、砲弾を用意する人が2人ほどいるようだ。


 ん~?

 船の大砲って側面に付けるイメージがあったけど……。

 いや、それはともかく!

 そんな船が20――いや、30隻はあるかな?

 なるほど、小さい船でちらばり魔術を避け、大砲で船を遠距離砲撃(アウトレンジ)をしてた訳か。

 だけど、わたしが来たからには、好きなようにはさせない!


 わたしは目の前にある船、その船首に狙いを定める。

 すると、後ろから「光!」という声が聞こえてきた。

 慌てて左手(前脚)で目を隠し、目を閉じる。

 まぶたや手(前脚)を越えて、強烈な光が見えた。


 パパさんの閃光(せんこう)魔術だ!


 スタングレネードみたいな効果がある。

 船上の人達が体を丸めながら怯むのが見える。

 よし!

 わたしは船首にある大砲の上に降りると、掴みながら飛び上がる。

 固定されていたのか、船が持ち上がったけど、無理矢理引きちぎった。

 殺さないように無力化させるのなら、これしかないよね!


 ……何人かが海に落ちたっぽいけど、まあ、海に慣れた人(推定)なら、これぐらい平気……だよね。


 そんな事を考えていると、後ろから脳筋パパさんが次の船に向かうように促してくる。


 はいはい、分かりましたって!


 掴んでいた大砲を海に落として、次に向かう。

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