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お嬢様(悪役令嬢)が欲しければ、まずはわたし(ドラゴン)を倒していけ!  作者: 人紀
第五章

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鍛錬の結果!

「イザベル殿下……」

 お嬢様が呆然と呟いた。

 ママさんもマーカスお坊ちゃまも沈痛な顔をする。

 パパさんが一度、目を(つぶ)った後、お嬢様達を見る。

「いいか、アールイス王国がカティを望んだ事は内々の事で、表には出ていない。

 なので、この件は胸に止めておくだけにするんだ。

 王族がクリスタリ侯爵令嬢の〝代わりに〟嫁ぐなどと広まったら、ろくな事にならんからな。

 表だろうと裏だろうとイザベル殿下に謝意を述べる事も駄目だ。

 陛下にも止められているし、イザベル殿下も望まないだろう。

 ただ、イザベル殿下の思い、そして、覚悟だけは絶対に忘れてはならないぞ」


――


 パパさんを乗せながら、鍛錬場のグランドを駆ける。

 十分な速度になったら、翼を広げて地を蹴る。

 浮遊感と共に地面がすーっと離れていく。

 背中の合図に合わせて、左側に旋回、ホバーリング、右側から旋回と切り替えていく。

 ここら辺まではそこまで難しくない。

 次の指示で少し降下する。

 目標は下に置かれた9平方メートルの正方形の的だ。

 その手前で、左に折れるとパパさんの炎の魔術が的に当たり、炎上する。

 周りにいた騎士さん達がそれを消化するのを横目に、指示通り上昇した。

 ん?

 次は急降下、急上昇の指示だ。

 これが一番怖い。

 下に木製の箱が5個並んでいる。

 わたしはそこに目がけて急降下し、後ろ足を前に出し、箱を潰すように着地した。

 更に、地面を蹴り飛び上がる。

 これは、わたしというより、パパさんに負担がかかる。

 右手(前足)に付けてある銅板で様子を見る。

 例の鎧を着けているパパさんがそれに気づき、右手を振る。

 流石はパパさん、大丈夫そうだ。



 しばらく訓練をした後、パパさんの指示で地面にゆっくりと下りる。

 後ろ足の膝を使い、乗っているパパさんに衝撃が行かないようにしながら、走りつつ速度を落としていく。

 気分的にはテクテク、重量的にはドンドンと歩いていく先には、お嬢様達がテーブルについてお茶をしている。

 わたし達が近づくと、皆は立って迎えてくれた。

 因みに、エイサ坊ちゃまはまだ幼すぎるってことで、その中にはいない。

 このことを気づかれないように、専属の侍女さんにご本を読んで貰っているとの事だ。

 まあ、仕方がないよね。

 わたしが止まると、騎士さん達がパパさんが降りるのを手伝うため近寄ってくる。

 お嬢様もわたしに近づくと「お疲れ様、とても凄かったわよ」と首の横辺りを撫でてくれる。

 ふふふ、嬉しい!

 ママさんやマーカスお坊ちゃまも近寄ってきて「人を乗せて飛ぶのも、すっかり慣れてきたみたいね」「そうですね、ぎこちなさがなかったです」と口々に言いつつ、わたしの腰や腕を撫でてくる。

 そうでしょう!

 そうでしょう!

 わたし、頑張って練習したからね!

 わたしが胸を張っていると、わたしから降りたパパさんが、兜を脱ぎながら言う。

「そうだろう!

 わたしの指導の賜物(たまもの)だな!」

 いや、わたしが頑張ったからだから!

 腕でパパさんを押すと「こら! やめんか!」と押し返してきた。


 なんだぁ~

 脳筋パパさんのくせに~


 そんな事をやってると、ママさんがニッコリ笑いながら言う。

「この分なら、わたしを乗せて空を飛ぶのも問題ないわね!」

 ……いや、侯爵夫人として、良いのかなぁ~

 そんな事を考えていると、パパさんが首から吊していた巻かれた布を外し、騎士さんが差し出した袋に入れる。

 それを見たマーカスお坊ちゃまが訊ねる。

「お父様、それはなんですか?」

「ん?

 ああ、乗っている時には極力噛むようにって、キュートリックがいってきてな」

「キュートリックが?」

 あれは前世日本に有ったマウスピースの代わりに噛んで貰っているものだ。

 一度、降下の衝撃でパパさんが頬を噛んで、口から血が出た事があった。

 治療魔術師さんのおかげで、それはすぐに治されたんだけど、それが怖くって、パパさんに乗る時は布を噛んで貰うようにお願いしたのだ。

 ただ、布を噛んだ状態では魔術が使えないと困った顔をされた。

 とはいえ、パパさんとしてもその有用性は身をもって理解していた。

 という事で、首に紐で通した布を付け、基本的にはそれを噛んでいて、魔術を使う場合のみ、それを外し唱える――そういう形にしたのだ。

 本当は前世、マウスピースみたいなものがあれば良いんだけど……。

 Web小説の主人公のように、〝無いなら作れば良いじゃない!〟とは出来ないのよね、わたしでは。

 そもそも、ドラゴンだし。

 そんな事を考えていると、ママさんが渋い顔をする。

「なんだか、それ……。

 なんというか――付けたくないわ……。

 そこまで激しい動きは求めていないから、わたしはしなくて良いわよね」

 いやいや、もしもの時のためのだから!

 絶対いるから!

「がっ! がっ!」

とわたしが鳴くと、ママさんは「えぇ~」と嫌そうにする。

 チラリと見れば、お嬢様も困った顔をしている。


 えぇ~

 そんなに嫌がるものかなぁ~


――


 わたしは最近でこそ、柄にもなく騎竜のドラゴンなどやっているが、本来すべき事も当然覚えている。

 それはつまり、お嬢様に甘えつつまったりする。

 これである!

 そのことで、お嬢様の癒やしになり、さらに、護衛としての責務を全うする――お嬢様の竜として非常に大事な事である。

 ということで、お嬢様の部屋のソファーでお嬢様に膝枕をして貰いつつゴロゴロする。

 いや、あれから結局、ママさん、マーカスお坊ちゃま、お嬢様の順で乗せたので、結構大変だった。

 勿論、例のマウスピース代わりのものがパパさんのしかない現状、空は飛んでいない。

 それでも、マーカスお坊ちゃまやお嬢様は喜んで貰えていた。

 マーカスお坊ちゃまなんて「ケーティ(ティー)と一緒に空を飛べたら楽しいだろうなぁ」なんて呟いていたし。

 いや、なんでわたしがイチャイチャカップルを乗せにゃならんの!?

 あと、ママさんだけはぶつくさ文句を言っていたけど、それはスルーした。

 相手にしてはいられません!


 そんな事を考えていると、お嬢様がわたしの背中を撫でながら訊ねてくる。

「キューは領ではずっとお父様と鍛錬をやってたの?」

 わたしが「がっ!」と肯定すると「頑張ったわね」とお嬢様は頭を撫でてくれる。

 ふふふ、お嬢様のため、イザベル王女様のためだから苦ではないのだ!

 そんな風に思いつつ、撫で撫でを堪能していると、お嬢様がニコニコしながら言う。

「わたくし、夏期休暇ではキューに乗って空も少しは飛んでみたいし、キューと一緒にする狩りもやってみたいの」

 おお~

 お嬢様、鷹(竜)狩りをやってみたいんだ!

 勿論、お嬢様が望むなら、それぐらい訳は無い!

 やろう! やろう! と身振り手振りで答えると、少し困ったように眉を寄せ、わたしを見る。


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