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お嬢様(悪役令嬢)が欲しければ、まずはわたし(ドラゴン)を倒していけ!  作者: 人紀
第五章

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久しぶりの家族団らん!

 侯爵(お嬢様の)領の食堂にて、パパさんが機嫌良くグラスを掲げる。

「夕食の席に家族全員が揃ったな!

 ずいぶんと久しぶりだ!」

 それにパパさんの右前にいるママさんが悪戯っぽく言う。

「そうね、やっとマーカスさんが帰ってきたものね」

 そんな両親2人に、パパさんの左前にいるマーカスお坊ちゃまは苦笑する。

 因みに、ママさんの左隣にエイサ坊ちゃま、マーカスお坊ちゃまの右隣にはお嬢様、そして、わたしだ。

 パパさんが「エイサなんて、〝こいつ誰だ?〟って思っているんじゃないのか?」とか言ってマーカスお坊ちゃまに「酷いなぁ」とか困った顔をさせている。


 ふむ。

 わたしは目の前にあるシチューにスプーンを入れてパクリとする。

 これは前世で言うビーフシチューなのかもしれない。

 柔らかくなるまで煮込まれたお肉が、口の中でほどけるように溶けて、美味しい!

 ジャガイモとか人参も柔らかくて、シチューの味がしっかり染み込んでて、こちらはこちらで美味しい!

 良い!

 なかなか良い!

 シェフを呼んで良いレベルで美味しい!

 そんな事を考えていると、マーカスお坊ちゃまがお嬢様越しに、こちらへ微笑む。

「ねえ、キュートリック!

 僕もキュートリックに乗せて欲しいなぁ」

 ん~

 まあ、マーカスお坊ちゃまなら別に問題ない。

「がぁ!」

と了承すると、エイサ坊ちゃまが「僕も!」とアピールする。

 いや、エイサ坊ちゃまはまだ早いかなぁ~

「駄目よ、エイサにはまだ早いわ」

 ママさんが(たしな)めると、エイサ坊ちゃまが「えぇ~!」と不満そうに口を尖らせる。

 それに対して、ママさんは困ったような顔をする。

「仕方がないわよ。

 お母様だって、この年になってようやく乗せて貰えたのよ?

 エイサではまだまだ、難しいわ」

「そうなんだ……」とかシュンとしているけど、エイサ坊ちゃま! 騙されてるよ!

 確かにママさんは嘘を言ってないけど、今の年まで乗れなかったのは、単に乗れるような竜がいなかっただけだからね!

 お嬢様、パパさん、マーカスお坊ちゃまや使用人さん達も揃って苦笑している。

 そのうち、ママさんの適当さに気づいたエイサ坊ちゃまが怒り出さないか、少々心配だ。

 そんな事を考えていると、ママさんがこちらを見て、ニヤリとする。

「そういえば、キュートリック。

 あなた、グライを乗せて空を飛ぶようになったらしいじゃない。

 なら、わたしも大丈夫よね?」

 いや、脳金さんな上に、曲がりなりにも騎士さんなパパさんと、貴族夫人なママさんは同列には出来ないと思うけどなぁ~


 因みに、最近、パパさんを乗せて飛行しているというのは、本当の話だ。


 最初、単独の戦闘訓練だけで良いと思っていたんだけど、パパさんの熱心な懇願とアピールに負けてしまったのだ。

 アピールというのは、自分がわたしに乗る事の利点などだ。

 指揮を取ったり、判断をしたりすることは勿論、魔術が使えるパパさんを乗せる事で、わたしは移動に専念できるというのだ。

 そんなパパさんの説明に、確かになと思ってしまった。

 正直、前世中学生なわたしでは、判断が付かなかったりはもちろん、そもそも、目的の場所に向かう事すら難しい気がしたのだ。

 あと、お嬢様と移動する時の為に、人を乗せる事に慣れておこうと言うのもあった。

 なので、言われるまま訓練していたんだけど……。

 最近のパパさん、調子に乗っているんだよね!

 今なんかもママさんに「おいおい、ジェニー。キュートリックはわたしの専用の竜だぞ」とか言っている。 ちょっと~!

 苦情を言おうとすると、その前にお嬢様がきっぱり言う。

「お父様、キューはわたくしの竜です!」

 そうそう!

 わたしはお嬢様の竜なのよ!

 パパさんは困った顔で「いや、でもなぁ~」とかボソボソ言ってるけど、無視無視だ!

「がぁ!」とお嬢様に言うとお嬢様もこちらをニッコリ見てくれる!


 へへへ、なんか嬉しい!



 夕食が終わると、エイサ坊ちゃま以外がパパさんの執務室に呼ばれる。

 執務机の前には歓談用なのか、ソファーとそれ用のテーブルが置かれていて、パパさんが一人掛け用に座ると、お嬢様達は食堂での並びと同じようにテーブルを挟む長椅子にそれぞれ座った。

 わたしはお嬢様の膝を陣取る。

 やっぱりここが一番落ち着くのだ!

 深刻な顔をしたパパさんは、それぞれの顔を見渡した後、言う。

「イザベル殿下の婚姻が正式に決まった。

 お相手はアールイス王国の王太子だ」

 お嬢様が息を飲む。

 ただ、ママさんやマーカスお坊ちゃまは硬い表情のまま身動ぎ一つしない。

 ひょっとすると、ある程度どこかしらで聞いていたのかもしれない。

 パパさんが視線をお嬢様に向けて続ける。

「実はこの話、アールイス王国は当初、カティ、お前をと言ってきていたんだ」

 その言葉に、ママさん、マーカスお坊ちゃまも目を剥いて、パパさんを見る。

 わたしも驚いた。

 そんな話、聞いてない!

 お嬢様が震える声で訊ねる。

「な、なぜ、わたくしなんですか?」

 パパさんはお嬢様をじっと見つめながら、話す。

「まず、現在のアールイス王家の衰退(すいたい)がある。

 強行派に手を焼いている現状、()の王家もメーブリー王国の姫を望むのは難しいと判断したそうだ。

 また、自分たちが強行派に責められた時、地理的、戦略的にも、我がクリスタリ侯爵家の方が良いと判断したようだ」

「地理的……。

 地理的で言えば、クリスタリ侯爵領より、コークリックの方が――」

 そこまで言って、お嬢様は口をつぐむ。

 パパさんが頷く。

「地理的には西方の港町コークリックの方が近い。

 だがあそこは、第二次コークリックの役によるアールイス王国への心証は最悪だ。

 それに、メーブリー王国の心臓部にも近い。

アールイス王国が内乱になったら、救援より守りを固める事となる」

「だから、クリスタリ侯爵家なのですね」

 パパさんは「そうだ」と答える。

「強力な魔術船団を持つ我が領が、南から北上する形で動くだけで心理的にも、戦略的にも圧力になる。

 また、我が家がこの島の先住の民というのも良い。

 その辺りを加味しての事だろう」

 え?

 クリスタリ侯爵家って、先住の民なの?

 ただ、疑問に思ったのはわたしだけでパパさんの話が進んでいく。

「仮にアールイス王国がお前を望んだとすると、大貴族として名を連なる我が家としても断る事は難しい。

 それだけ、この婚姻の意味が大きいのだ」

「だけど、その話は消えた――ということですか?」

 黙って聞いていた、マーカスお坊ちゃまが訊ねる。

 パパさんが頷く。

「それを、イザベル殿下が止めたそうだ。

 ここは王女である自分が嫁ぐべきだと。

 自分がアールイス王国に行く事で、戦火を防ぐ事が出来るのであれば、そうすると」


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