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お嬢様(悪役令嬢)が欲しければ、まずはわたし(ドラゴン)を倒していけ!  作者: 人紀
第四章

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エルフさんがやって来た!

 お嬢様方のお茶会が終わった翌日――わたしの愛らしいお嬢様が学院に行ってしまわれた。

 そして、本来、その側に(はべ)るべき(わたし)は、理不尽な事にお留守番をさせられている。

「がぁ~……」

 お嬢様の部屋にある、わたし専用のクッション(ベッド)の上でふて寝していると、部屋に何者かが入ってきた。

 そして、わたしの元まで来ると呆れた感じに言う。

「キュートリック、いつまでいじけてるの」

 目を開けるまでもなく、メイドのアネットさんだと分かる。

「がぁ~……」

 ため息を付くと、アネットさんは無遠慮にわたしを持ち上げた。

 馬鹿でかいものをギュウギュウ押しつけられるも、抗う元気もない。

「もう、キュートリック!

 ぐったりするのも、せめてお嬢様の部屋に籠もるのでは無く、外でしなさい。

 天気が良いから気持ちが良いわよ」


 はぁ~

 面倒くさい。

 連れて行くなら、勝手にして。


 そんな気持ちで尻尾をゆっくり振ると、通じたのか、有無言わさずなのか分からないけど、アネットさんは「困った子ね」とわたしを抱えたまま歩き出す。


 わたしも、このままじゃ駄目だとは思うのよ。

 でも、お嬢様がいないと元気が出ないの……。


 そんな事を思いつつ、アネットさんの大きいそれの上に顎を乗せつつ、されるままに運ばれている。

 すると、アネットさんが突然止まった。

 そして、道の端に退くと、頭を下げているようで上半身を倒した。


 ……いや、胸が更に押しつけられて、本当に苦しいんだけど?


 すると、女の人の声で「あら? キュートリックはどうしたの?」と言う声が聞こえてきた。

「いえ、キュートリックはお嬢様がいらっしゃらないので、元気がないだけで……」

と苦笑気味に言うアネットさんが上半身を起こしたので、チラリと声がした方を見る。

 視線の先には、執事のオントワンさんと、少し呆れた感じの20代ぐらいのお姉さんが立っていた。

 銀色の長い髪を少しくすんだローブの上に流している。

 すらりと細い体をしていた。

 凄く整った顔に、細い目が少し垂れがちの優しいお姉さん系美女さんだ。

 だが、何より特徴的なのは、その尖った耳だ。

 そう、彼女はファンタジー定番中の定番、エルフさんなのだ!

 名前はテュテュさんという。

 以前、侯爵領から王都までお嬢様の元に帰る旅をしたんだけど、そこでたまたま助けたエルフさん達を引き取りに来たのが、この銀髪のエルフさんで、それ以来、たびたび顔を合わせている。

 テュテュさんは近づくと、手を伸ばして、アネットさんからわたしを受け取る。

 そして、抱きしめた。

 柔らかな草の匂いが鼻をくすぐる。

 ふむ、このエルフさん、細身でいて実はなかなかの胸をしている。

 そんな事を思われていると知らず、テュテュさんは言う。

「赤い薔薇のお嬢様は頑張って勉強をされているんでしょう?

 応援して差し上げなくては、ね」

 そして、背中を優しく撫でてくれる。


 ふむ、柔らかで優しい手の感触が素晴らしい!

 お嬢様ほどでないにしても、なかなかの撫でテクと言っても良いと思う。


 因みに〝赤い薔薇のお嬢様〟とは、当然、わたしのお嬢様の事だ。

 例の詩人、ホメバールさん? だったっけ?

 あのおじいちゃん、凄く義理堅くて、本当に熱心に広めてくれた事により、今では多くの人から〝赤い薔薇のお嬢様〟イコールお嬢様と認識されていた。

 約束を果たそうとするのは、凄く有り難いのだけど……。

 〝赤い薔薇のお嬢様〟の話が出ると、何故かわたしが怒られるので、そろそろ止めて欲しいと思ってたりする。

 ただ、会う機会がなかなかないので、それも出来ないのが困ったものなのだ。

 あと、最初はお嬢様に相応しいと思った赤い薔薇だけど……。

 有る所には沢山有るような花で例えるのはちょっと、相応しくないようにも思えていたりする。

 会う機会があれば、その辺りも相談しようと思っている。


 そんな事を考えていると、いつの間にかテュテュさんに抱っこをされたまま、運ばれていた。


 え?

 どこ行くの?


 すると、テュテュさんの足が止まり、扉をノックする音が聞こえてきた。

 そして、オントワンさんの声で「テュテュさんをお連れしました」という声が聞こえる。

 すると、部屋の向こうからパパさんの声で「入って貰え」と返ってきた。


 ああ、パパさんの所か。

 そりゃ、そうか。


 実は、テュテュさんとたびたび会うのは、このエルフさんが世界各地を歩き回る旅人(たびびと)だからだ。

 各地の情報を大貴族として、当然、侯爵家の人を使って調べさせているパパさんだけど、そういう調査員とかでは探りきれない様々な情報を知りたいと、定期的に屋敷に訪問して欲しいと頼んでいたのだ。


 扉が開き、テュテュさんはわたしを抱っこしたまま部屋に入る。

 パパさんの「なんだ、お前も来たのか」という声が背後から聞こえる。

 来た、というか、気づいたら連れてこられていたのが正しい。

「キュートリック、こちらにいらっしゃい」

というママさんの声も聞こえてくる。


 ……やっぱり、ママさんもいるんだ。


 実はテュテュさんが我が家に来る事で、以前、パパさんとママさんが凄く揉めていた。

 揉めていたというか、ママさんがパパさんを一方的に糾弾していたというか……。

 まあ、テュテュさん、前世エルフ描写にある通り、凄く美人だもんね。

 最終的には、テュテュさんが来る時は、ママさんも同席するということで落ち着いていた。


 テュテュさんが「どうぞ、お返しします」と言いつつ、わたしを体から離し、ママさんに渡した。

 まあ、ママさんも、騎竜の件がなければ、そこそこ良いハグ使いなので、問題は無い。

 問題ないけど、一言――わたしはお嬢様の竜なので、〝返す〟という言葉の使い方、間違ってるからね!


 そんな事を心の中で指摘している内に、一通り挨拶等が済んだようで、皆、席に座る。

 その前に、お茶とお菓子が用意された。


 今日のお茶菓子はクッキーか。

 いつものなら、ナッツが入っていて美味しいけど、すっかり大貴族の竜に馴染んだわたしは、まあ、今は良いか、とすることが出来る。

 前世のことを考えたら、凄く贅沢になったものだ!


 わたしはママさんの膝の上で丸くなった。

 そんなわたしを、ママさんが優しく撫でてくれる。

 パパさんは一部の護衛騎士さんを残し、他の人は退出させる。

 そして、少し前のめり気味に訊ねる。

「それで、東の大陸の様子はどうだった?」

 視線を向けると、クッキーを頬張り、うっとりとした顔をしたテュテュさんが、慌てて姿勢を正した。

 ……このエルフさん、かなりの甘い物好きさんだ。

 更に言えば、お酒も大好きのようで、礼金よりもその2つ目当てで侯爵家に訪問しているのではないかという疑惑もあったりする。

 まあ、事実だったとして、別に良いけどね。


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