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お嬢様(悪役令嬢)が欲しければ、まずはわたし(ドラゴン)を倒していけ!  作者: 人紀
第四章

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攻略対象、なのかな?

 3人のお嬢様方は「はい」とか「は~い」とか言いつつ、席に戻る。

 今日は学院がお休みである。

 なので、お嬢様はお屋敷で、ご学友とお茶会を開いている。

 なんでも、貴族令嬢は定期的にこのような会を開き、様々なご令嬢と交流をしないといけないらしい。

 なかなか、大変そうだ。

 ただ、今回のご令嬢方は、学院で同じクラスの良く一緒に行動するお友達との事で、気楽なものとなっている。


 3人組の中で、一番しっかりした感じの女の子、クロエさんがウットリとした目でわたしを見る。

「家に帰ると、こんなに可愛い竜様が甘えてくれるなんて……。

 カトリーヌ様、本当に羨ましいですわ」

 濃い金髪に大人びた感じの女の子をここまでだらしない感じにさせるとは……。

 流石はわたしである!


 すると、元気いっぱいの赤毛の女の子、キーラさんがうんうんと大きく頷いた。

「我が家には護衛用の犬が何匹かいますけど……。

 可愛いって感じじゃないんですよねぇ~

 本当に羨ましいです!」

 それに、焦げ茶色の髪の、この中では一番地味な感じの女の子、ペサニーさんが言う。

「我が家は昔から猫を飼っていますが、気まぐれ屋さんで……。

 気がのらないと全く相手をしてくれません。

 その点、キュートリック様はカトリーヌ様にいつも甘えていて、羨ましいです」

 ペサニーさんの言葉に、お嬢様は少し眉を寄せながら「ま、まあ、この子の甘えん坊振りも、時々、度を過ぎる事があるけどね」などと言いつつ、わたしの毛を整えてくれる。


 えぇ~

 わたしとしては甘えつつもお嬢様を支える、素敵な竜だと思うんだけどなぁ~


 そんな事を考えつつ、お嬢様が手ずから食べさせてくれたクッキーをモグモグやっている間、お嬢様達の会話が続いていく。


 女の子のお話はやっぱりというか、恋バナだ。


 まあ、まだ恋バナって言うほどではなく、どの辺りの男の子が素敵かってぐらいではあるけど。

 キーラさんが目をキラキラさせながら「ピエール・レノン伯爵子息が素敵だと思います!」とか言っている。

 ピエール君って誰だろう?

 疑問に思っている間に、クロエさんが冷静に指摘する。

「確かに、レノン伯爵子息は素敵な方だけど、少々、武に偏りすぎている気がするわ」

「あら、でも頼りになると思いますけど?」

とキーラさんが不本意そうに口を尖らすと、クロエさんは苦笑する。

「勿論、頼りになりそうな方ですけど、わたしは国王陛下の元、太平の世である今は、嫁ぐなら武人より行政事務に(たずさ)わる殿方が良いと思っているの」

 すると、ペサニーさんが意を決した様に訊ねる。

「では、クロエ様はどなたか、意中の方がいらっしゃるのでしょうか?」

 クロエさんは慌てた感じに答える。

「わ、わたしにはまだ、そのような方はいないわ。

 あくまで、理想を言っただけよ」

 すると、キーラさんがお嬢様に期待したような笑顔を向ける。

「カトリーヌ様はどうですか?

 どなたか、意中の方がいらっしゃるとか」

「わ、わたくし!?

 いないわよ」

 突然振られて、お嬢様は目を見開き、慌てる。

 そして、少し寂しそうに答える。

「それに、わたくしは侯爵家の者、その辺りは家の者が決めると思っているの」

 すると、キーラさんは不満そうにする。

「えぇ~!

 そうじゃなくって!

 実際はともかく、理想の殿方と寄り添う――そういうのを想像するのが楽しいんじゃありませんか!」

「え!?

 え、そう?」

 キーラさんの剣幕に、少し引きながらお嬢様が頷く。

 すると、キーラさんは悪戯っぽい表情になる。

「あと、噂によると、ロリース公爵子息と良い仲と聞いてますが?」

 ロリース公爵子息――は、初めてイザベル王女様にあった時に、一緒にいたアントワーヌ君のはずだ。


 え?

 お嬢様はアントワーヌ君が好きなの?


 すると、お嬢様は苦笑する。

「ロリース公爵子息とは軽くお話をする程度の仲よ。

 キーラさんが思うような事は無いわ」

「えぇ~

 がっかりです」

 露骨に気落ちするキーラさんに「ちょっと! 失礼よ!」とクロエさんが慌てて窘める。


 ご令嬢の話はさらに続く。

 どうやら、素敵な殿方候補は、ジョセフ第一王子、ヘンリー第二王子君、アントワーヌ君、ピエール君らしい。

  話の流れで、ピエール君は実は、王様の護衛として良くいる、顔が恐ろしいジョシュさんとのことだ!

 え?

 ピエール君の顔がいまいち想像できないんだけど!?

 ……母親似なのかな?(失礼)

 う~ん、乙女ゲーム〝めがぐれ〟の攻略対象はこの辺りなのかな?

 全然思い出せない。

 確実にそうだと言えるのが、クズ王子のジョセフ第一王子というのが非常に微妙な気分だ。


 そんなことを考えていると、お嬢様達の素敵な殿方の話が一段落付いたのか、キーラさんが内緒話をするように声を落とした。

「皆さん、マクロー伯爵家のお話、聞いてますか?」

 お嬢様達は顔を見合わせながら、首を横に振った。

 クロエさんがキーラさんに訊ねる。

「マクロー伯爵家と言えば、西部にある近年、伯爵に叙爵された家ですわね。

 第二次コークリックの役で活躍されたとかだったような……」

 キーラさんは目を丸くして、少しバツが悪そうな顔をする。

「すいません、その辺りは分からないのですが……」

 ま、まあ、普通、そこまで細かく分からないよね。

 キーラさんは気を取り直したように続ける。

「ただ、コークリックは関係します。

 実はアールイス王家の血を継ぐ姫様が亡命していて、それをマクロー伯爵家がかくまっていたって話なんです」

 クロエさんが顎に手を置き、少し考えている様子になる。

「アールイス王国……。

 西の島国……。

 近年の内乱状態を加味すれば、なくはないわね。

 港町コークリック、そして、マクロー伯爵家……」

 キーラさんはニヤリとしながら言う。

「その姫様の継承順位は元々、最下位に近かったそうなんです。

 ただ、亡命後、数年が経ち……」

「か、かなり上がったって事、ですか?」

 ペサニーさんが怯えた顔をしながら囁くように言う。

 キーラさんはしたり顔で大きく頷く。

「その姫様、見目美しいお方だとか……。

 しかも、継承順位持ち。

 彼女を(めと)った者にも、アールイス王国を継ぐ権利が得られるかもしれないとか、なんとかかんとか。

 そして、その姫様が現在、名乗っている名は、マクロー伯爵五女、グラーニャ・マクロー伯爵令嬢です!

 いま、殿方の間で大変な盛り上がりになっている様なのです!」

 お嬢様は苦笑する。

「なんとも壮大な話だけど、少々、無理があるのではないかしら?

 そもそも、亡命をした姫に国を継承する資格が残るのかも疑問ですし……」

 お嬢様のごもっともな突っ込みに、キーラさんは笑顔で首を横に振る。

 そして、キリッとした顔で言った。


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