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お嬢様(悪役令嬢)が欲しければ、まずはわたし(ドラゴン)を倒していけ!  作者: 人紀
第一章

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騎竜する上での決めごと

 前世の学校行事で行った、サッカースタジアムのグランドぐらいはあるんじゃないかな?

 天井の崩落を防ぐためだろう、太い柱が等間隔に立ってはいるけど、それを上手く躱せば、数十人単位同士の軍事練習ならやれそうな気がする。

 天井までの高さもそこそこある。

 前世の体育館よりも何メートルかは高そうだ。


 ママさんが王妃様を嬉しそうに振り返る。


「これぐらいであれば、キュートリックに乗る事は可能ですわね。

 飛ぶのは――流石に難しいでしょうが」

「う~ん、やはり難しいかしら?」

 などと、王妃様は頬に手を置き、残念そうにする。


 いやいや、天井もそうだけど、柱にぶつかっても大惨事だよ!


 すると、乗馬服姿のお嬢様に抱っこされているわたしに、癖のある黄金色の髪を後ろに束ねた、同じく乗馬服姿のイザベル王女様が微笑みながら言う。


「空を飛ぶ事は出来なくても、わたくし、キュートリック様に乗せて頂くの楽しみだわ」

 十五才だったっけ?

 イザベル王女様もすっかり大人っぽくなられた。

 スタイルもだんだん王妃様に近づいているし、元々、大人びた顔も磨きがかかり、どこに出しても恥ずかしくない、素敵な王女様になっている。

 こんな王女様の為なら、男子は命がけの冒険に出ちゃうだろうね。


 勿論、一番美しいのは我が敬愛するお嬢様だけど!


 イザベル王女様が「クリスタリ侯爵令嬢は良く乗せて貰ってるの?」と訊ね、お嬢様は笑顔で「侯爵領にいる時は良く乗せて貰ってます」と答えている。

 以前は、王族と話す時は緊張をされていたお嬢様だけど、今ではそこまで強ばったりはしない。

 お嬢様も素敵なご令嬢になったものだ!

 因みに、今回の参加者はお嬢様の他は、王妃様、王女様、ママさんら女性陣だけだ。

 今回はお嬢様とママさんにこの地下の鍛錬場兼避難所を紹介するためだからとか何とか。

 それに、王族、大貴族が揃って、地下に向かうのは何かあった時に宜しくないという事も有るのだとか。

 この決定に先王様は、忠臣と思っていた者に裏切られ愕然とする王様のような顔で「馬鹿な……」とか漏らしていた。

 あと、パパさんは「カティに説明するのはわたしの役目!」とか必死に主張していたけど……。

 ママさんに「地下の鍛錬場の事を教えて下さった、王妃陛下がいらっしゃるから、不要よ」と冷たくあしらわれていた。

 地下の鍛錬場兼避難所をママさんに伝え忘れ、恥をかかせたパパさんは、それに反論が出来ず、俯いてしまった。

 ただ、先王様にしてもパパさんにしても、わたしに乗るのは諦めきれないらしく、王様もその勢いに抗いきれず、結局、(頭の中はいつまでも)男子勢は明日、ここに来る事になった。


 いや、お嬢様に対するあれこれの名目からかけ離れてるんだけど?


 そんな事を考えていると、王妃様がニコニコしながら近づいてきた。

 そして、お嬢様からわたしを受け取ると、「さぁ~わたくしを乗せて頂戴!」とか言っている。


 だから、名目はって!


 致し方がなく、地面に降りると体を大きくする。

 (くら)のサイズの問題もあるので、一番最初に大きくなった時の大きさ――直立すると4メートル級になった。

 そんなわたしに、アランさんを初めとする侯爵家の騎士さん達が、お嬢様が使用している鞍を着けていく。

 ふむ、これにもいくらか慣れた。


 更に、右前脚に銅製の板を付ける。

 小手、というより板が足首より大きいので、ちょっと盾っぽい感じになっている。


 それを見た王妃様がママさんに訊ねる。

「ねえ、ジェニー。

 あれは何?」

「ああ、あれはキュートリックが後ろの様子を見るためのものです。

 反射させて見るのですよ。

 乗っている者の様子が分からないと不安なようで」

「なるほど~」

 振り返ると、(つの)とかでお嬢様を傷つけてしまう事もあり、後ろを確認する事が出来ないわたしのために、パパさんに頼んで作って貰ったものなのだ。

 ピカピカに磨き上げてあるので、前世の鏡ほどでは無いにしても、後ろを見る事が出来る。

 因みに、最初は鏡で作って貰おうとしたんだけど、この世界では鏡は無茶苦茶高い上に、脆いらしく、「これで頼む!」とパパさんにお願いされて致し方がなくこちらで勘弁して上げた。

 前世ほど研磨の技術が発達していないのか、愛らしいお嬢様がいくらか歪んで映ってしまうのだけど……。

 まあ、これでもなんとなく様子が分かるので、いくらか安心できる。


 あと、鞍の方もいくらか改良されたようだ。


 最初、わたしは直立して歩いていたんだけど、これだとお嬢様がわたしの頭で前が見えにくいという問題があった。

 だけど、上半身を倒し、首を上げる姿勢になればいくらか見やすくなる事が分かり、最近ではそのようにしている。

 鞍の方も、それに合わせて職人さんが改良してくれたとの事だ。

 見た目は少々窮屈そうで、お嬢様が心配してくれたけど……。

 特に問題は無かった。

 人間だと、首とか腰とか大変だと思うけど、竜の体には特に辛いと言う事が無いようだ。

 そういえば、お風呂で泳いだ時もそうだけど、この体にはそれに有った体勢があるようだ。


 ママさんが王妃様、イザベル王女様に乗り方や下り方、乗っている時の姿勢などを説明している。

 因みにこの鞍、お嬢様専用なのに、何故か、ママさんの方が何倍も多く使っている。


 解せぬ!


 そんな事を考えていると、ママさんが試しに乗ってみせる事になった。

 ママさんがわたしの上に颯爽と乗る気配を感じ、更に手慣れた手つきでベルトとかを着けていく雰囲気を感じた。

 しばらくすると「立っても大丈夫よ」という声が後ろから聞こえ、背中をポンポンと叩かれた。

 騎竜するに伴い、パパさん達は色んな合図を決めていた。

 座っている時に2回背中を叩いたら立ち上がる。

 立っている時に2回叩かれたら座る等だ。

 別に声で出せば問題ないと思うんだけど……。

 騒音で声が聞こえない、もしくは、声を出すべきでない場面があったら困るので、あらかじめ決めておくとの事だった。


 いや、どういう想定で話てるんだ、この脳筋さんは!?


 ただ、脳筋仲間なママさんと、言われた事を生真面目に行うお嬢様もそれに倣っているので、致し方がなく、指示通りに動く事にしている。

 間違った指示を送ってきた時に、その通りにして困らせようとか思ったけど、パパさんもママさんも優秀なので、そのようなお間抜けな事になった事はない。

 勿論、困らせるつもりは無いお嬢様やマーカスお坊ちゃまも、失敗する事はない。


 くっ!

 優秀な一家だ!


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