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お嬢様(悪役令嬢)が欲しければ、まずはわたし(ドラゴン)を倒していけ!  作者: 人紀
第一章

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竜博士さんがやって来た!1

「ああ……」と言いながら、お嬢様は膝をつき、両手で顔を覆ってしまった。

「殿下にまで知られてしまって、わたくし……。

 もう、王都へは行けないわ……」

「がっぅ~」

 お嬢様がシュンとされ、わたしも悲しくなる。

 そんな事をやっていると、扉がノックされる音が聞こえてきて、更に「カティ! 入るぞ!」というパパさんの声が聞こえてきた。

「……どうぞ」

とお嬢様が落ち込んだ声ながらに答えると、パパさんが無遠慮に入ってきた。

 そして、項垂れるお嬢様とわたしを見て、呆れた感じに言う。

「なんだ、まだ詩の事で落ち込んでいるのか?

 あんなもの、お前の事を詠ったとはいえ、別段、名前が入っている訳でも無いだろう?

 そのうち、ただの綺麗な詩として皆は認識していくぞ」

 パパさんの言葉に、お嬢様はすがるような顔をしながら「そう、ですよね……」と見上げる。

 すると、ママさんも部屋に入ってきて言う。

「そうよ。

 その辺りを残念に思う方もいらっしゃるかもしれないけど、そういうものよ。

 それより、二刻後ぐらいに、お客様がいらっしゃるから用意しなさい」

 そして、ママさんは少し疲れたように、息をつく。

 ママさんのお腹、大分大きくなってきている。

 大人しくしていれば良いのにと思うんだけど、ママさんは結構動き回っている。

 まあ、お医者様が言うには、動かないのも良くないって事なので、気にする必要は無いのかもしれないけど。

 お嬢様はパパさんとママさんを交互に見ながら訊ねる。

「お客様とはどなたですか?」

 それに、パパさんが答える。

「アダン男爵だ。

 例の竜博士な。

 国王陛下と相談して、キュートリックの大きくなる所を、一応見て貰う事になった」

「キューを?」

 お嬢様はわたしに視線を向ける。

 すると、パパさんが言う。

「まあカティ。

 なんなら、お前は同席しなくても良いぞ。

 話はわたしが聞いておく」

 お嬢様は眉を寄せると力強く立ち上がる。

「いいえ、わたくしもご一緒します。

 もう、キューは常にわたくしの側に置いておかないと、とんでもない事をしでかしかねないので!」

 ……いや、お嬢様のおそばに常にいるのは本意だけど、お嬢様の評価が本意じゃ無い方に振り切れている気がするんだけど!?

 お嬢様は、ショックを受けているわたしを抱き上げて「もう絶対に、側から離しません!」と決意をするのだった。



 応接間に入ると、丸メガネをかけたお兄さんこと、竜博士アダンさんは立ち上がり、お嬢様達家族を迎える。

 何というか、興奮したような顔でこちらを見てくる。

 前回会った時は、落ち着いたお兄さんって感じだったのに、なんて変貌ぶりだ。

 パパさんがお誕生日席? に座り、竜博士アダンさんを正面にして、長椅子にママさん、お嬢様(その膝のわたし)の順で座る。


 そして、それぞれの専属使用人や執事さんのみ残り、他の使用人さんは下がるように言われた。

 パパさんに促され、椅子に座り直した竜博士さんは挨拶もそこそこ、切り出してくる。

「それで、クリスタリ侯爵令嬢!

 キュートリック殿が体を大きくしたというのは本当でしょうか!?」

「え、ええ……」

とお嬢様はその勢いに若干引きながら、頷く。

 竜博士アダンさんは目をキラキラさせながら言う。

「それは実に素晴らしい事です!

 西の大陸に最古竜と呼ばれる伝説の竜がいるのですが、彼の竜も体を小さくさせ、最強の剣豪と旅に出たという吟遊詩人の(うた)がございますが……。

 半ば創作とされていたその話にも信憑性が持たれるというものです。

 確か、その竜も白竜だったと聞きます。

 キュートリック殿は……」

 すると、竜博士アダンさんは声を落としながら訊ねてくる。

「ひょっとして、当人、ではなく当竜だったりされますか?」

「がぁ!?」

 いやいや、知らないからそんな竜なんて!

 大体、最古竜って、わたしはまだ、生まれたて……。

 あれ?

 前世の魂が、その最古竜とやらに取り憑いたとかあるのかな?

 そんな事を考えていると、パパさんが苦笑しながら首を横に振る。

「アダン男爵、それは無い。

 その白竜様は現在も、西の大陸の――何という国だったか忘れたが、そこにいらっしゃるとの事だ。

 騎竜(きりゅう)用の道具を購入した時に、商人が教えてくれた」

 それに、お嬢様が続ける。

「キューは多分、産まれたばかりだと思います。

 前もお話ししましたが、飛ぶ事も出来ませんでしたし、最初の内は言葉も分からなかったみたいですし」

 竜博士アダンさんは思案するように顎に手を持っていく。

「そうなると、ますます興味深いです。

 キュートリック殿は今まで竜学会が把握していない新種の竜なのか……。

 それとも、西の大陸の竜と同種なのか……。

 国王陛下に禁じられているので出来ませんが、もしこのことを発表したら多くの説が覆る大発見となります!

 実に素晴らしい!」

 パパさんが苦い顔で「男爵、絶対駄目だぞ」と念を押している。

 大騒ぎになったら、竜博士さんみたいな人が押しかけてきそうだしね。

 パパさんとしても避けたい所だろう。

 竜博士アダンさんが真剣な表情でパパさんを見る。

「いえ、まずはその前に――」

「いや、その前にも何も駄目だからな」

 パパさんの突っ込みをスルーして、竜博士アダンさんは続ける。

「体が大きくなる所を見せて頂けませんでしょうか?」

 パパさんは苦笑しながら「まあ、それは良いが……」とわたしに視線を向けた。



 人払いをした鍛錬場の中に、お嬢様、パパさん、わたし、そして、竜博士アダンさんが入った。

 因みに、妊婦さんのママさんは、やはり大変そうだったので、心配したパパさんの指示で部屋に戻っていった。

 ママさんは渋っていたけど、その辺りはしょうがない。

 パパさんが「キュートリック、大きくなってやれ」と言うので、お嬢様の腕から降りると、ちょこちょこと離れる。

 そして、大きくなれと念じる。

「おお!」という竜博士アダンさんの歓声と共にムクムクと大きくなり、3メートル級になった。

「素晴らしいですね!

 こんなに大きく!

 これが最大ですか!?」

 竜博士アダンさんが近づき、興奮気味に言うので、パパさんをチラリと見た。

 パパさんは「これぐらいが限界のようだ」と答えた。

 もっと大きくなるけど、パパさんとしてはこの辺りで良いとの判断のようだ。

 竜博士アダンさんが「キュートリック殿、触っても良いですか!?」と聞いてくるので〝いいよ〟って気持ちを込めて「がっ!」と鳴く。

 お嬢様が「良いみたいです」と通訳してくれて、竜博士さんは「では」とわたしの太もも辺りを撫でてつつ、続ける。


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