ドラゴンの初めてのお使い?2
王都の門――その上に設置されている止まり木に、わたしはへなへなと止まった。
いやぁ~あれから色々あった!
魔獣に襲われている商人さんを助けたり、盗賊3人に襲われている旅人を救ったり(ドラゴンアタックを食らわせたら、3人とも失神したので町の詰め所に引き渡した)、気になり見回ったら盗賊のアジトっぽいのを見つけたので代官さんと共に壊滅させたり(その間、殺さずの攻撃、ドラゴンアタックを極めた)、そこに捕らえられていたエルフの女の子達に懐かれたりと……。
もしわたしが冒険活劇の主人公なら、書籍1巻分にはなったかもしれない。
ああ、あと、魔獣に襲われていた商人さんは、何やら、名うての商会の隠居さんらしいのと、旅人さんは有名な詩人さんで、是非ともお礼がしたいって事だったので、〝それらはお嬢様に!〟と身振り手振りでしっかりとお願いしておいた。
間違えてパパさんにお礼がいくのは、なんだか嫌なので、一生懸命、お嬢様をアピールすると、なんとかかんとか皆さん、理解してくれたようだった。
商会の隠居さんは「不肖ながら、何かあったらお力になります!」と言い、詩人さんは「お嬢様を称える詩を書かせて頂きます!」と言ってくれた。
なので、お嬢様の素晴らしさを広く伝えて欲しいとお願いしておいた!
わたしの光り輝くほどのお嬢様を皆に知ってもらいたいってのもあるけど、ゲームシステムであっても、人為であっても、何かあった時に、お嬢様の救いの手になってくれないかと思っての事だ。
まあ、効果のほどはさほど期待できないけど、何でもやっておこうと思った。
あと、代官さんから今回捕まえた盗賊には国から報奨金が出るとの事を伝えられた。
それも、お嬢様へとお願いしておいた。
いや、そんな些末な事はどうでも良いか。
近寄ってくる兵士さん達が「おお、クリスタリ侯爵家の竜殿! お疲れ様です!」とかにこやかに言ってくれるのを「がっ!」と答えつつ、背中のリュックを下ろす。
隊長っぽい人が駆けてきて、そのリュックを受け取ると、中から王族の人達への手紙を取り出した。
そして、わたしにそれを見せながら「侯爵からの書状、確かに受け取りました!」と確認するように言う。
わたしが頷くと、リュックを返してくれたので、背負い直す。
隊長さんが「あちらからお願いします」と指示をしてくれたので、頷くと、止まり木から飛び立った。
ああ、お嬢様!
お嬢様!
もう、お嬢様が不足して、倒れそうです!
王都のお嬢様のお屋敷が見えてくる。
ここでも、一応、門から入らなくてはならない。
門の前の止まり木に降りると、前を守る顔見知りの兵士さんが笑顔で「あ、キュートリック、お帰りなさい!」と言ってくれる。
早く開けて! と言うように「がっ! がっ!」と鳴くと、「はいはい」と言いながら、門を開けてくれる。
わたしは、そこから中に入ると、お屋敷への道をすーっと飛んでいく。
お嬢様!
お嬢様!
お屋敷の玄関の扉が見えてきて、中から、騎士のアランさんが出てくるのが見えた。
左手にはいつものグローブを付けている。
わたしはそれに後ろ足を向けると、綺麗に止まった。
そこに、メイドのアネットさんと、その後ろから急いだ感じのお嬢様が現れた!
「がっ! がっ!」
わたしはアランさんの腕の上で声を上げる。
気持ちとしては飛びつきたかったけど、お嬢様が怪我をしたら大変だ。 アランさんが腕を下げてくれるのと、「キュー! お帰りなさい!」と両手を広げるお嬢様に合わせて、その胸に静かにダイブした。
ぎゅーっとしてくれる温かな抱擁に、やっと帰って来れたと安堵するのだった。
王都、侯爵邸に到着してから数日、色々あり……。
迎えに来た侯爵家の騎士団の団長さんと共に、侯爵領に向かう道中、やはり色々あり、お嬢様はお労しい事に、様々な事に苦悩していた。
更に、侯爵領にたどり着き、数日後……。
お嬢様の怒りは頂点に達してしまった。
「キュー!
もう!
キューは本当に!
本当に!
何でこんなことになってるの!?」
「がぅ~」
そんなお嬢様の前に置かれたクッションに座らされて、わたしは項垂れている。
いや、何というか、お嬢様のためにと思った事が、どうやら裏目に出てしまったようだった。
まずは大商会のご隠居さん、思いのほか、恩義を感じてしまったようで、大商会を通じて〝侯爵家の凄い竜、そして、それを飼う素敵なお嬢様〟の存在を宣伝し回ってしまったらしい。
当然というか、それは王都でも広まり、会う人会う人、皆、そのことを触れてきて、元々、慎ましいお嬢様は凄く困ってしまった。
しかも、話の内容が徐々に、〝侯爵家のお嬢様は悪の存在を知ると、忠実な竜をそこに送り込み、退治する〟というものに変わってきたらしい。
前世、勧善懲悪のドラマにありそうなお話だ。
お嬢様が主人公なら、わたしも是非とも見たい!
ただ、侯爵領へ戻ることを伝えに王城に出向いたお嬢様が、ジョセフ第一王子の奴に「お前、商人を使って有りもしない話を広めているそうだな。そこまでして名声が欲しいか?」とか言われて、恥ずかしさのため顔を真っ赤にさせていた。
何だ、この王子!
余計な事を言うな!
更に、侯爵領へ向かう道すがら、お嬢様は様々な場所で歓迎された。
わたしに助けられた人達もいたけど、噂の素敵なお嬢様を一目でも見ようとする人達が殺到して、慎ましいお嬢様を酷く狼狽させた。
そして、ふらふらになり、侯爵領、侯爵邸にたどり着いたら、迎えに来たパパさんとママさんがおかしそうに、お嬢様にとって衝撃的な話をした。
「カティ、お前を赤い薔薇に例えた詩が、王都で流行っているらしいぞ!」
「素敵ね!
赤い薔薇――ふふふ!」
しかも、ジョセフ第一王子の野郎がわざわざ、手紙で『お前、自分を赤い薔薇だとか、詩にさせたらしいな。正気か?』とか寄越してきたらしい。
ほんとふざけるな、馬鹿王子!
わざわざ手紙で知らせる事か!?
アホのせいで、慎ましいお嬢様の羞恥が限界まで振り切れてしまった。
「もう、キューったら!
もう!
もう!」
顔を赤めながら、プリプリ怒っているお嬢様を、アネットさんが困った顔で「まあまあ」と窘める。
「キュートリックも人助けをした訳ですし。
その感謝が、その主であるお嬢様に向くのはある程度は致し方がないかと」
「キューが称えられれば、良いじゃない!
赤い薔薇って!」
「その辺りは……。
詩人のホメバール卿もやはり、小さい竜よりも、その主人である美しいお嬢様の方が書きやすいと言いますか……」




