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お嬢様(悪役令嬢)が欲しければ、まずはわたし(ドラゴン)を倒していけ!  作者: 人紀
第一章

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鷹の次は鳩?

 わたしは侯爵家を少々、甘く見ていたのかもしれない。

 パパさんは、暑苦しいスポーツマン系侯爵さんだし、ママさんもやんちゃっぽい系美人さんだし……。

 どこか、甘く見ていたというか、軽く見ていたというか、そんな所があった。

 だけど、ママさんが侯爵領に戻る時、それが覆された。


 日も昇りきらない早朝、出発する事になったんだけど……。

 進む道、進む道を国王直属の兵士さん達ががっちり固めていて、ネズミ一匹たりとも見逃さず、仮に出てきたら瞬殺してやるという勢いで睨みを利かせていた。

 一応、パパさんの依頼で、上空から監視がてら飛んでいたんだけど……。

 普段、王城では温和な笑顔を見せてくれていた兵士さん達が、無表情で警戒している様子は、本当に怖かった。


 王都から出ると、待機していたのは侯爵領の騎士さんや兵士さん達だった。

 その合計は1000人ぐらいにはなるんじゃないかな?


 いや、これ、どこ攻めに行くの? って感じだった。


 ママさんのいる馬車は個別に用意され、中を少し見せて貰ったんだけど、揺れ防止の為か、座る所が分厚いクッションでふわっふわだった。

 そこに、パパさんとママさんの専属メイドさんが同乗していた。

 馬車が通る道は小石1つも落ちてないように、兵士さんが睨みをきかせていた。


 そんな、慎重に、警戒して進むので、当然と言うべきか……。


「一体いつ着くのって感じね……」

とママさんはぼやいていた。

 ママさんは厳重に守られているテントの中、簡易のベッドに寝かされている。

 出発前、お嬢様達に『あなた達がいずれ子をなす時も、そうしなくてはならないわよ』と、キリっとしていたママさんだったけど、出発して四日目になり「もう……王都で出産で良いじゃない……」とかぼやき、メイドさんや医療魔術師さん達を困らせていた。

 因みに、わたしはママさんに同行しているけど、お嬢様はこの場にいない。

 守る者は少ない方が良いとの事で、お嬢様や、学校があるマーカスお坊ちゃまは王都に残っている。

 わたしもお嬢様の側を離れたくなかったんだけど……。

 パパさんから「キュートリック、すまんが空から怪しい者がいないか警戒をしてくれ!」と頼まれ、お嬢様からも「お父様達を守って上げて!」と頼まれては否応もない。

 定期的に空を飛び、変なのがいないか見張っていた。

 だけど……。

「あぁ~!

 疲れたわ!

 もう、キュートリックがわたしを乗せて飛んでくれれば、すぐに着くじゃない!」

とかブーブー文句を言いながらわたしをつまみ上げ、抱きしめてくるママさんの面倒は、業務外なんだけど!?

「もうやぁ~!」とか頬釣(ほおず)りされ、嘆息しながら思うのだった。



 結局、20日ほどかけて、何とか侯爵領のお屋敷に到着した。

 もう大丈夫だろうと、馬車の御者さんの所に着地する。

 馬車からパパさんに支えられ出てきたママさんが「やっと……着いた……」と光のない目で呟き、お屋敷に入っていった。


 ほんと、お疲れ様!


 あと、随伴した兵士さん、騎士さん、使用人の皆さんも疲れた顔をしつつも、無事たどり着いて嬉しそうにしていた。


 こちらも、お疲れ様!


 わたしは、というと、このドラゴンボディはやっぱり優秀なんだろうね! 思ったより元気だ。


 それよりも、お嬢様に会いたい!

 あって、今すぐ撫でて貰いたい!

 ぎゅーっと抱きしめて貰いたい!


 ……わたし、ここまで上空で警戒してきたから、なんとなく、ここまでの道のりは分かっている。

 なので、飛んでいけば、案外、簡単に王都に戻れるのではないだろうか?

 うん、そうしよう!


 わたしは御者さんの所から、ぴょんと地面に降りる。

 ちょこちょこ玄関まで走ると、近くにいた使用人さんに扉を開けて貰い、中に入る。

 大階段を上ると、疲れた顔のパパさんが、使用人さん達と歩いているのが見えた。

「がっ! がっ!」

と声を上げながら近づくと、パパさんがニッコリしながら「おお、キュートリック! お前もお疲れ様だったな! 助かったぞ!」と持ち上げてくれた。

 わたしは身振り手振りで飛んで王都に戻る事をアピールすると、最初、訝しげな顔をしていたパパさんが「お前だけで王都に戻るのか?」と少し驚いた顔をする。

 そして、パパさんは少し考え込む。

「そうだな……。

 今後、必要になるかもしれない。

 試してみるか」

 そんな事を言いつつ、わたしを抱えて移動する。

 連れてこられたのは、パパさんの執務室だった。

 中に入ったパパさんは、従者の人に地図を持ってくるように指示を出した。

 パパさんはわたしを執務机に乗せると、従者の人が手早く持ってきたそれを広げる。

 そして、地図の上に指を置き、わたしに説明をする。

 地図は以前、王妃様に見せて貰った物より縮尺(しゅくしゃく)を小さくし、より広域を描いたものだった。

 王都が小さく丸が付けられている。

 周りは海なのかな?

 そう考えると、ここってひょっとすると島国なのかもしれない。

 わたしの見方が間違っていなければ、縦長の――前世、日本の本州部分と九州地方がドッキングした感じの国のようだ。

 パパさんは中国地方と九州地方の間ぐらいに指を置きながら言う。

「良いか、ここが今いるこの屋敷だ。

 そこから北東に進むと、王都がある。

 お前なら、一直線に行く事も可能かもしれないが、海を越えるのは危ないからな、陸地を――更に言えば、侯爵領や親交のある貴族領を飛んだ方が良い。

 具体的にはそうだな。

 ポーン、マンチルト、ディングと行くのが良いだろう。

 お前の飛行速度なら、それぞれの領主館に泊めて貰いながら、三泊四日で王都に着く感じだ」

 そんな事を言いつつ、パパさんは椅子に座り、何やら書き始める。

「今から使者を送り、無事、侯爵邸に着いた事を王家とマーカス達に知らせる。

 その時に、それぞれ、ディングのウィルキン伯爵やマンチルト、ポーンの代官にお前が来た時の対処法を伝えておく。

 少し、待っててくれ」

 なるほどね、と頷きそうになり、慌てて止める。

 いやいやいや、わたしは早くお嬢様に会いたいの!

 何なら、王都に送る使者の人達と一緒に向かえばそれでいいじゃん!


 にもかかわらず、パパさんは嬉しそうに「今後、急ぎで知らせを送る時、助かるなぁ」なんて言っている。

 おおい!?

 鷹狩りの鷹の次は、鳩便の鳩をさせるつもりかぁぁぁ!


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