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お嬢様(悪役令嬢)が欲しければ、まずはわたし(ドラゴン)を倒していけ!  作者: 人紀
第一章

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お嬢様の竜として決意する!

 侯爵領にいても、王都にいても、わたしのやる事は変わらない。

 まずは第一に、お嬢様をお守りする。

 無論、普段は騎士さん達がしっかり守っているから、さほど、気合いを入れる必要はない。

 ただ、いざという時、お嬢様の前に颯爽と現れ、敵を追い払うのはわたしだ。

 なので、常にお嬢様の近くで待機する必要がある。

 そして、第二にだ。

 普段から、何かと気苦労をされているお嬢様の癒やしとして、撫でられるという役目がある。

 これも、非常に、非常に重要な役割である。

 ただ、お嬢様がいつ、癒やしを必要とするか、こればかりはご本人ですら分からない。

 よって、こちらも、常にお嬢様の近くにいなくてはならない。

 故にと言うべきか、わたしがお嬢様の膝の上で撫でられている事、これ、すなわち、立派な仕事である訳だ!


「キュートリック、あなた……。

 これ以上、ゴロゴロしてると太るわよ」

「ががっ!?」

 ジトッとした目のアネットさんの一言が、わたしの胸を突き刺した!


 はぁ?

 太る?

 誇り高き竜(?)のわたしが?


 ……。

 そっと、手(前脚)を腹部に当ててみる。

 もふもふな毛に埋もれて……。

 太って……無いよね?


 アネットさんはわたしから、お嬢様に視線を移す。

「お嬢様、キュートリックはここ最近、ゴロゴロしてばかりいます。

 少しは動かさないと、太るのもそうですが、健康にも良くありません!」

 ちょっとちょっと!

 ゴロゴロばかりはしていない――はず。

 確かに、パパさんがいないから鷹狩り練習やら、竜騎っぽいのもしてないけど……。

 それでも多少は――。

「この子、ここ三週間ほど飛んでもいないんですよ!

 このままですと、竜ではなく、丸っこく、ゴロゴロ動くだけの、置物です!」


 が、がはっ!?

 メイドさんなのに、酷い言い草だ!

 かしずく者として、それで良いの!?


 お嬢様!

 お嬢様!

 言ってやってください!

 この胸部装甲過多なメイドさんに言ってやってください!


 そんな気持ちを込めて、「がっ! がっ!」と鳴きつつお嬢様を見上げれば……。

 何故か、お嬢様は心配そうに見下ろしてくる。

 そして、わたしを撫でながら言う。

「キュー、少し動こう?

 体にも良くないし、それに……。

 その……」

 何故か、お嬢様は言いにくそうに続ける。

「キューのお腹の辺り、触り心地が少し、ボヨボヨしてる気がするの……」


 ががぁぁぁん!


 ショックの余り、お嬢様の膝の上に、倒れ込むのだった。



「さあ行くぞ!」

と護衛騎士のアランさんが、わたしを乗せた左手を振るう。

「がぁ~」とやる気が無いながらも、飛び立つと〝大きく、すっごく大きく〟旋回し――パラソルの下で座っているお嬢様の足下に降りる。

 そして、ぴょんと跳ぶと、お嬢様の膝で丸くなった。


 はい!

 今日もいっぱい頑張った!

 もうお終い!


 アネットさんが呆れた顔で「明らかにやる気がありませんね」とか言ってくるし、アランさんも苦笑しながら「飛ぶ距離もますます少なくなってるし」とか言ってるけど、無視無視だ!


 よくよく考えたら、わたし、愛玩系ドラゴンなのだ。

 丸かろうが、ボヨボヨしてようが、コロコロして様が関係ない!

 お嬢様の側で、のんびりスローライフをしてれば良いのだ!


「キュー……」とお嬢様が困った声音で言いつつ、背中を撫でてくる。

 そうすると、心が揺さぶられるけど……。

 アネットさんが嘆息しながら言う。

「この子、そのうち丸くなりすぎて飛べなくなるんじゃありませんか?

 そうなったら、あなた……。

 正真正銘、竜モドキになるわよ」

 ツンツン背中を突っつかれるけど、無視無視だ!

 そもそも、わたし、未だに竜と認定されてないし!

 竜(?)で結構なのだ!

 もう、むやみに動くの止め止め!

 のんびりゴロゴロ、異世界ライフをするのだ!

 なんて決意していると、お嬢様がそっと囁くように言う。

「キュー、それは困るわ。

 わたくし、大きくなったら、キューに乗って空を飛んでみたいの」

「がっ?」

 見上げると、お嬢様が少し恥ずかしそうにお願いしてくる。

「キュー、お願い!

 ちゃんと飛べるようにいて!

 ね!」


 わたしは脳裏で思い浮かべる。

『キュー! すごぉぉぉい!』と喜んでいるお嬢様を背に、空を飛ぶわたし――良い!

 凄く良い!


 わたしはむくりと起き上がる。

 そして、〝勿論ですよ! わたしはお嬢様の竜ですもん! 見事飛んで見せましょう!〟と言うように「がっ! がっ!」と決意表明をする。

 すると、ぱっと表情を明るくさせたお嬢様が「ありがとう、キュー!」と抱きしめてくれた。


 やるぞぉ!

 やるぞぉ!

 やってやるぞぉぉぉ!


 気持ちを高ぶらせていると、アネットさんが右手で眉間を押さえながら「やる気になったらなったで、やらかしそうで怖いわ」などと言ってる。


 失礼な、メイドさんだ!



 わたしはお嬢様を背に乗せて、空を飛ぶ。

 それに必要な事は何か。

 ママさんを背に乗せて飛ぶ事は出来たのだ、お嬢様を単純に乗せて飛ぶ事ぐらいは、今でもできる。

 出来るのだけど、無論、それだけでは足りない。


 お嬢様には安心安全に空を楽しんで貰う必要があるのだ!


 多少揺らそうが、落っことそうが問題ない、パパさんとは訳が違う。

 安全に! (特大に強調)、それでいて、極力揺れを無くす!

 それが必要なのである!

 そのために、わたしは何をすべきか?

 まずは、以下3点を鍛えようと思う。


 1、飛行時間を増やし、空を飛ぶ安定感を増す。

 2、まずはお嬢様以外の人を乗せて、飛ぶ事も慣れる。

 3、もしもの時、背に乗っているお嬢様の状態を確認する術を身につける。


 1、2は同時に出来れば良いのだけど、誰を乗せるにしてもそれだけ拘束する事になる。

 パパさんなら喜んで付き合いそうではあるけど……。

 どちらにしても、侯爵領以外の場所で体を巨大化させる事は、緊急時以外は禁止されているので、それも出来ない。

 ……侯爵領では目立たないようにするからと、パパさんが泣き落としをしていたから、何とか大丈夫らしい。

 まあ、何にしても、現状、1をメインにやるしかない。

 3に関しては、どうするのか考えないといけない。

 お嬢様が喜んでいる姿が見たいってのもあるけど、何より、後ろがどういう状況なのか把握できないのは困る。

 鏡を使うとか……。

 う~ん、誰か考えてくれないかなぁ~!



 王城の東屋? だっけ?

 お嬢様の正面に座る王妃様が、口元を緩めながら「なるほど、それでキュートリック殿が張り切っているのね」と言った。

 お嬢様が顔を強ばらせながら「は、はい、その、申し訳ありません……」と頭を下げる。


 が、がぁ~ん!

 わたしのせいで、お嬢様が謝罪をしている。


 面目なさ過ぎて、テーブルの上に置かれたクッションの、その上で項垂れてしまった。

 いやね、大したことはやってないはずなのよ。

 最近、頑張って飛ぶ練習をしてただけだし。

 当然、お嬢様のお屋敷、その敷地内(前世中学十個分ぐらい?)から出てないし。

 なのに、何故か王妃様からお嬢様に緊急の呼び出しがあったのだ。


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