王族の皆さんに、サイズが変わることを報告に行く。2
他の皆も感心したように見上げてくる。
その目には恐怖などの感情は無い。
ひょっとしたら、怖がられるかな? って思っていたので、少し安心した。
わたしは顔を下げて、地面に降ろす。
何故か皆、可笑しそうにする。
王様が側に寄りながら言う。
「大きくなれば威圧感が出るかと思ったけど……。
キュートリック君にはそれが無いね」
それに対して、パパさんは笑いながら言う。
「ハハハ!
この間の抜けた顔がどれほど大きくても、そんな大層なものは出てきません!」
誰が間抜けだ!
憤慨するも、この大きさで、しかも王様が側にいる状態では怒りの尻尾攻撃も出来ない。
ぐぐぐ!
後で覚えていろ!
王妃様が興味深げにわたしに近づきつつ言う。
「確かにこれぐらいの大きさになれば、ジェニーを乗せたって軽々と飛べそうね」
それに対してママさんは何故か誇らしげに言う。
「ええ、王妃様!
もう、一度の羽ばたきでスーッと飛び上がりました。
ああ、あれは気持ちよかったですわ」
「えぇ~!
ジェニーだけズルいわ!」
「ふふふ」
ママさんが楽しそうに笑う。
この二人、なんだか仲が良いな。
ママさんのこと愛称呼び出し。
昔からの知り合いなのかな?
そんなことを考えていると、先王様が「大きくても可愛らしい子だな」とわたしの頭を撫でてくれる。
ふむ、国で一番猫に愛されるだけのことはあり、とても優しい触り方だ。
その隣にいたイザベル王女様が「そうですね! キュートリック様はどんなに大きくっても愛らしいですね!」とニコニコされ、王太后様も「本当に」と微笑んでくれる。
なんか、心が温まる~
あれ?
お嬢様は?
目だけで視線を巡らせると、少し離れた場所で、お嬢様が立っていらっしゃった。
ひょっとして、偉い人たちばかりなので恐縮しているのかな?
どことなく不安そうにこちらを見ていた。
お嬢様!
お嬢様!
そんな顔はお嬢様には似合いません!
側に行きたいけど、このサイズで近寄る訳にも行かず、「がぅ」と声を漏らすことしか出来なかった。
だけど、わたしの視線と声で察したのか、王太后様がお嬢様を向くと「クリスタリ令嬢、キュートリックさんが不安そうにしているわよ。側に来て上げて」と微笑んでくれた。
「え? その?」と困った顔をするお嬢様にイザベル様が近づき、手を取り「さあ、行きましょう!」とこちらに連れてきてくれる。
なんか、ここの王族の皆さん、本当に良い人ばかりだ!
王族の皆さんが、大きくなったわたしを一通り検分――堪能? した後、わたしは小さくなり、茶話会に戻った。
何というか、最終的に王族の皆さん全員がわたしのもふもふなドラゴンボディに埋もれてウットリとする会になっていたので、戻って来れてホッとしている。
護衛のジョシュさんが「人払いしていて良かった……」と遠い目になっていたのが印象的だった。
罪なドラゴンボディでごめんなさい!
王様が表情を厳しくさせながら言う。
「キュートリック君が大きさを自在に変えられる事は良く分かった。
温厚な竜殿なので、問題は無いとは思うが……。
出来れば、この能力については秘匿していて欲しい。
使用も、致し方が無い場面以外は極力使用しない事も念頭に置いて欲しい。
無用な疑心を生みたくない」
真面目な話をしているこの王様も、先ほどまでわたしの胸の毛に顔を埋めながら「日々の心労がほどけていく~」とか言っていたんだけどね!
いや、公私の切り替えが出来ているということで、褒めるべきなのかもしれないけど……。
そんなことを考えていると、王妃様が異論を述べる。
「陛下がおっしゃるよう、秘匿することには賛成です。
ただし、使用に関しては侯爵領においては制限すべきではない――そう思いますわ。
せっかくの能力ですし、いざという時に使用できず、危機に対処できないとなると問題でしょうし」
先王様が我が意を得たと言うように頷く。
「王妃の言うこと、全くその通りだと思う。
キュートリックの能力はこのまま封じてしまうのは勿体ない。
例えば、緊急時に人や物を運んで貰ったりとか、様々な自体が考えられる。
常在戦場という言葉もある。
緊急時のために、常に盤石の状態を保つ、そのための訓練などは必要じゃないかな?」
そんな王妃様や先王様に、王様はジト目を送る。
「そんなことを言って二人とも、単にキュートリック君に乗せて貰う余地を残そうとしているだけじゃないですか?
仮に父上のおっしゃる通り、キュートリック君に訓練をして貰うにしても、王族はそんな危険なものに参加は出来ませんから」
「そんな!」
「馬鹿な!?」
王様のごもっともな発言に、王妃様と先王様はショックを受けた顔をする。
すると、恐る恐るパパさんが訊ねる。
「申し訳ございません、陛下。
それは、王族の方に乗って頂くことが問題であって、当家の者が当家の責任で乗ること自体は、問題無いということで宜しいですか?」
王様は顔を顰める。
「侯爵、話を聞いていなかったのか?
わたしは能力の使用を止めて欲しいと言ったのだ。
当然、君も含まれる」
王様の発言にパパさんだけで無く、ママさんも「そ、そんな!?」と驚愕する。
「へ、陛下!
我が家は我が家の責任の元で乗るのです!
ご希望であれば、今後、皆様の前では大きくなることを禁じますので!」
「ず、ずるいわよ、ジェニー!
あなた、わたくしを切り捨て、自分だけ楽しい思いをしようとしてるでしょう!」
「いや、だから……」
「わしは隠居の身だ!
落ちて死のうが、誰にも責めを与えぬ!」
「だから、そういう事じゃないと言ってるでしょう!」
王様が叫ぶも、先王様、王妃様、パパさん、ママさんは言いたいことを主張し続ける。
あれ?
ここの大人な人達、この国の最高権力者だよね?
まともなの、王様と困った顔で宥めようとしている王太后様だけなんだけど?
「とにかく、当面は禁止!」
と王様がはっきり言うと、皆、渋々ながらに頷いた。
そして、各々、お茶に手を付ける。
主張しすぎて、喉が渇いたのかな?
わたしが呆れた顔でそれを眺めていると、王妃様がママさんに言う。
「あら、ジェニー。
珍しいわね、あなたが干し果物の焼き菓子に手を付けないなんて。
それ、あなたの大好きな、葡萄の物よ?」
すると、ママさんが少し恥ずかしそうにする。
「王妃陛下……。
このような場で、そのような事をおっしゃらないでください」
などと言いながら、ママさんはフォークを手に取った。
この2人、本当に気安い仲なんだなぁ。
そんな事を考えつつ、わたしも自分の焼き菓子に視線を向ける。




