王族の皆さんに、サイズが変わることを報告に行く。1
「お前はつくづく、不思議な奴だな」
とパパさんはしげしげとわたしを見てくる。
屋敷のリビングにて、パパさん、ママさん、お嬢様、そして、わたしでお茶を楽しんでいる。
わたしは当然、お嬢様の膝を枕にのんびりしている。
うん、わたしはやっぱり、このサイズが一番好きだ!
ママさんも不思議そうにわたしに視線を向けながら言う。
「そうね、例の竜博士? でしたっけ?
あの男爵の方がおっしゃるには竜ではないという事だったけど……」
まあ、ママさんが困惑するのは分かる。
元のサイズに戻ったあれから、色々、試行錯誤をした結果……。
わたし、体のサイズをある程度調整できるのが分かったの。
え!?
凄くない!?
わたし、凄くない!?
最小は子猫サイズで、最大は6メートル級だ!
凄い!
無論、わたしとしては大きくなる意味はないので、小さいサイズで居る。
ひょっとしたら、小さいわたしの方が良いのかな? と思い、お嬢様の前で最小になっていたんだけど……。
「キュー、わたくし、元々の大きさが良いわ」
とおっしゃるので、戻している。
なんでも、抱きごこちが一番良いのだとか。
わたしも、お嬢様に喜んで貰えて嬉しいので、もう、サイズを変更するのは止めようと思った。
思ったのだけど……。
パパさんが真剣な表情で言う。
「まあ、それはさておきだが……。
キュートリック、そろそろ、また大きくなって乗せてくれ」
いや、どうでも良いことを真剣な表情で言うの、止めて欲しいんだけど?
ママさんも「あら? 次はわたしよ」とかニコニコしながら言うし。
ほんと、どうでも良い!
とはいえ、居候の身としては、無碍にするのはなかなか難しい。
なので、一週間にそれぞれ一回ぐらい乗せて上げている。
流石に、空を飛ぶのは危ないのでやってないけどね。
パパさんがわたしの背中を撫でつつ「なあなあ、良いだろう?」とか鬱陶しく言っているのを尻尾で追い払っていると、執事のオントワンさんが少し表情を硬くしながら近づいてきた。
そして、「旦那様、王家から書状が届きました」と封書らしきものをパパさんに差し出した。
「ん?」
と言いつつ、パパさんは受け取る。
オントワンさんからペーパーナイフを受け取り、それを開いた。
そして、目を通しつつ言う。
「キュートリック、王城から呼び出しだ。
どうやら、お前が大きくなる所を確認したいとのことだ」
「お父様、陛下にキューの事をお話ししたのですか?」
お嬢様が少し目を尖らせながら言うと、パパさんは少し困った顔をする。
「いや、あれだけの大きさになるんだ、秘密にしておく方が問題だろう」
まあ、そりゃ最大サイズになったわたしは、人間にとって相当脅威だもんね。
わたしとしてはやる気なんて欠片も無いけど、あの姿で王都に降り立ったら大騒ぎになること間違いない。
そんなドラゴンの存在を黙っていたとなれば、怒られるだけでは済まないよね。
そもそも、わたしは第一王子を除く王族の皆さんへの好感度は結構高い。
なので、会いに行くこともやぶさかではない。
〝問題ないですよ?〟という気持ちを込めて「がうがう!」言うと、お嬢様は心配そうな表情でわたしを撫でながら「キューが良いなら……」と言った。
王城に向かうと、王家の侍女さん達の先導で、庭園に連れて行かれた。
侯爵家のメンバーはお嬢様、パパさん、ママさん、わたしとなる。
お嬢様に抱えられ庭園を進むと、東屋って言うんだっけ? 前世公園とかにもあった四方が吹き抜けになった休憩所みたいな場所に王族の方々が待っていた。
メンバーは両陛下に先王夫妻、あとお嬢様がいらっしゃるからか王女のイザベル様もにこやかに立っていた。
侯爵家の皆が畏まろうとすると、王様が笑顔でそれを制した。
「ここは私的な場だ。
堅苦しいのは無しにしよう」
皆が席に座り、侍女さん達がお茶や茶菓子を並べていく。
あ、あのクッキー美味しそう!
そんな心の内が分かったのか、王太后様がニッコリ微笑みながら「キュートリックさんにあのお菓子を多めにあげて」と言ってくれる。
優しい!
並び終えると、王様が侍女さん達を下がらせる。
護衛の騎士さんも、顔の厳ついジョシュさん? だっけ、その人ら数名のみとなった。
「まあ一応、人目は少ない方が良いだろう?」
と王様がパパさんに言っている。
わたしの大きさが変えられる能力は、思ったより深刻に考えられているのかもしれない。
わたしが緊張していると、王妃様が待ちきれないと言わんばかりの勢いでママさんに訊ねる。
「それで、ジェニー!
空を飛んだって本当なの?」
え?
あれ?
深刻じゃない?
わたしが混乱していると、ママさんは得意げに言う。
「ええ、本当です!
空高く、もう少しで雲に届きそうな所まで行きましたわ!」
いやいや、流石にそこまで高くは飛んでないよ?
ただ、真に受けているのか、王妃様は「羨ましい!」と悔しそうにする。
そして、こちらをキラキラした目で見ながらとんでもないことを言ってきた。
「ねえ、キュートリック殿!
わたくしも、お願いできないかしら?」
いやいや、ただでさえ人を乗せるのが怖いのに、王族と飛ぶなんて、絶対無理!
すると、先王様が「これこれ」と苦い顔をしながら、王妃様を止める。
「王妃ともあろう者が空を飛ぶなどという危険な真似、許される訳がないだろう」
ま、ごもっともだよね。
王妃様も「それは……」と口ごもる。
すると、先王様は笑顔でこちらを向き言う。
「因みにわしは退位した身、問題ないぞ?」
「義父様!?
ズルうございます!」
「いや、どちらも駄目だから」
と王様が苦笑する。
王太后様も困った顔をしている。
王様がパパさんに言う。
「まあ、何はともあれ、だ。
まずはキュートリック君の大きさが変えられる件について、見せて貰っても良いだろうか?」
「はい、もちろんです」
とパパさんは頷き、こちらに視線を向けた。
そして、「キュートリック、あちらで頼む」と少し空けた場所を指さした。
わたしはお嬢様から降りると、ちょこちょことそちらに行く。
そして、皆の方を向く。
うっ!
なんか、凄く注目されるとやりにくい。
でも、心配そうにこちらを見るお嬢様に恥をかかせる訳にはいかない。
大きくなぁ~れ!
体がムクムクと大きくなる。
ぐんぐん大きくなり、4メートルぐらい――前回、皆を乗せたぐらいのサイズになった。
パパさんにあらかじめ指定されていたからね。
「お~!」
と王様が感嘆するように声を上げる。




