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お嬢様(悪役令嬢)が欲しければ、まずはわたし(ドラゴン)を倒していけ!  作者: 人紀
第一章

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ドラゴンは乗り物では無いと思う!

 部屋、か……。


 この鍛錬所は屋外にあるので、今のところは良かったけど、例えば、雨とか振ったらびしょ濡れになる。

 まあ、頑丈なこのドラゴンボディが、多少濡れたぐらいでどうにかなるとは思えないけど……。


 少なくとも、惨めな絵であるのは間違いない所だ。


 うん、用意してくれるのであれば、嬉しい。

 体を起こすと、パパさんは何やら満足げに頷きつつ、先導するように歩き始めた。

 わたしもその後を付いていく。

 つい数日前までは、ちょこちょこという擬音が似合っていたはずの歩行が、現在ではどしどしって感じになっている。


 切ない!


 そんなことを考えていると、結構、すぐにそこに着いた。

 ……いかにも急ごしらえって感じの、木造の小屋がそこにはあった。

 一応、観音開きの大きなドアが付いていて、兵士さんが一人ずつ、それぞれを開けてくれた。


 中には、クッションっぽいものが置いてあるだけだ。


 前世の何かで見た、犬小屋っぽかった……。

 本当に、ただ、寝るためだけの場所みたいだ。

「済まんな!

 急ごしらえだと、これが精々だ。

 もう少ししっかりしたものを、今設計しているから楽しみに待っていろ!」

とかパパさんが言っている。

 わたしはそんなパパさんに首を振る。

 そして、中に入った。

 クッションの中は綿(わた)ではなく、藁なのかな?

 今のサイズなら、特に問題ない。

 その上に横になると、〝これで良い〟という気持ちを込めて、「がぁ!」と鳴いた。

 パパさんが少し困ったような顔をしながら、わたしの頭を撫でる。

「なんだ、一丁前(いっちょうまえ)に遠慮してるのか?

 気にする必要など無いんだぞ?」

とか言うけど、正直なぁ~

 体が大きくなったから食費も馬鹿にならないだろうし……。

 まあ、お嬢様のお家は大金持ちだから、それで傾くとかはしないだろうけど、負担になるのは本意じゃない。

 それに、わたし〝だけ〟がいる部屋なんて、雨風が防げればはっきり言って問題ない。

「がぁ! がぁ!」

とお断りをするも、パパさんは「大丈夫大丈夫!」とか言っている。


 何が?


 すると、パパさんは何やら指示をする。

 何人もの兵士さんが大きな革製の(くら)? っぽいものを持ってきた。

 いや、ウマに使用するには大きすぎる気がする。

 それに、前の部分? に比べて、後ろの部分? が大きく広がっている。


 え?

 何あれ?


 わたしが少し、体を起こしつつ見ていると、パパさんは何やらドヤっとした顔で言う。

「キュートリックよ!

 わたしの竜よ!

 今から、お前は騎竜(きりゅう)となるのだ!」


 ……はぁ~!?


――


 Web小説で人気の、竜を従える描写といえば?

 まずは鎧の肩部分に小さな竜を乗せる、ドラゴンテイマがある。

 そして、もう一つは、竜に騎乗するドラゴンライダーがある。

 なるほど、パパさんみたいな少年の心を残したまま、大の大人になったお馬鹿さんにとって、一度はやってみたいと思うことなのは間違いないだろう。


 あれから、嫌がるわたしを兵士さん総出で部屋から出したパパさんは、わたしに変な鞍を装備させ始めた。

 さらに、「着替えてくる」とか言いながらお屋敷に戻ったパパさんは、前世、フルフェイスのヘルメットっぽい兜を手に持ち、頑丈そうな鎧を身につけて、颯爽と戻ってきた。

 そして、わたしの前に見せびらかす様に立つ。

「どうだ!

 これは西の大陸にいる竜騎士が着る鎧だ!

 今はろくに装飾がされていないが、近いうちに職人に飾り付けさせるつもりだ!」


 いや、どうだと言われても……。

 鎧自体は、派手さはないけど格好いいとは思うよ。

 ただ、そのヘルメットを被ると、怪しい人っぽい気がする。


 いや、そんなことはどうでも良いとして!


 正直、(はた)からなら竜騎士さんとか見たい気持ちもあるけど、自分が乗せる立場になるとかさぁ~

 凄くイヤなんだけど!

 にもかかわらず、兜を被ったパパさんは重そうな鎧を物ともせず、素早く、わたしの背中にある鞍の上に座ってしまった。


 えぇ~!


 何やら、背中でカチャカチャとはめ込む音が聞こえる。

 ベルトとかをしてるのかな?

 しばらくすると、後ろから「さあ、飛べ!」とかいう勇ましい声が聞こえてきた。


 いやいやいや!


 確かに、鞍とかは前世のリュックみたいな付け心地だし、この大きさになったからか、パパさんだって特に重いとは思わない。


 だけど、人を乗せて飛ぶなんて、怖いって!


 後ろの状態も分からないから、パパさんが危ない状態なのかも分からない。

 羽ばたく羽根が当たったら、下手したら怪我をさせてしまうかもしれない。

 鞍とか丈夫そうで大丈夫だと思うけど、下手をしてパパさんを落っことしたら、死んじゃうかもしれない。


 怖すぎる!


 ただ、不安に思っているのはわたしだけではないようで、側にいた(確か)騎士団の団長さんが言う。

「閣下!

 その体に慣れていらっしゃらないキュートリック殿に乗って、いきなり飛ぶのは危険です!

 まずは、歩いて頂いてからならした方が良いと思います!」

「ん~しかしだなぁ」

 などと、パパさんは不満そうにする。

 でも、団長さんの言うことは、全くの正論だ。

 わたしはぶつくさ言っているパパさんを無視して、のしのしと歩き始めた。



 団長さんの先導で鍛錬所に戻り、最近日課となっている散歩と同じルートを歩く。

 初めのうちは、飛べないにしても竜に乗るという事に興奮したパパさんは「おお!」とか「これはこれで良い!」とかはしゃいでいた。

 ただ、だんだん歩く速度に満足できなくなったのか「キュートリック、もっと速度は出ないのか?」とか「はいやぁ~! 駆け足!」とか落ち着きなく動き始めた。


 この、大きい子供め!


 わたしはぎゃあぎゃあうるさいパパさんを無視しつつ歩いていると、お屋敷からお嬢様が出てくるのが見えた。

 側にはメイドのアネットさんや護衛騎士のアランさんもいる。

 お嬢様達は、パパさんを背負って歩いているわたしを見て、目を丸くしていた。

 わたしは、当然のようにそちらに向きを変えて歩く。

 そして、側まで来ると、お嬢様に撫でて貰えるように頭を下げた。

 後ろで、「おい、急に頭を下げるな! 危ない!」とかギャアギャア言っているけど、無視だ。

「お、お父様? なの?」

とお嬢様はわたしの頭を撫でつつ、パパさんに訊ねている。

「そうだ、わたしだ」

とか言いつつ、背中の方でガチャガチャ言う音が聞こえる。

 多分、兜を外しているだろう、しばらくすると、お嬢様は「何をしてるんですか!?」と少しお怒りモードで言う。

 愛娘の剣幕に、パパさんは少し困ったように言う。

「いや、キュートリックを立派な騎竜にしようと……」

「キューは馬じゃありません!」

「そうは言うけど、カティ!

 お前も、乗ってみたいとは思わないか?」

「それは……」

と言いつつ、お嬢様は言い淀む。

 ん?

 視線を向けると、お嬢様はわたしを見ながら「キューが嫌がるかも……」とか呟いている。


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