勲章を貰う!2
王様が席から立つと、近づいてきた。
従者っぽい人が2人、その後を付いてくる。
1人の人はお盆のようなものを持ち、もう1人は鞘に収めた剣を持っていた。
王様が一段降り、わたしやパパさんの前に立つ。
おごそかな雰囲気だったけど、わたしと目が合うと柔らかく微笑んでくれた。
こちらも、イケメンさんだ。
王様は従者さんのお盆から銀色の勲章ぽいものを持つと、「よくぞ、魔物を打ち倒した。見事だったぞ」と言いつつ、パパさんの胸にそれを向ける。
パパさんは「ありがたきお言葉」と言いつつ、それを受けた。
すると、パパさんはわたしを王様に近づけるよう、腕を伸ばす。
そして「大丈夫だから、そのままにしてれば良いからな」と囁く。
王様もニッコリしながら頷く。
そして、パパさんの時と同じく、お盆から勲章を持ち上げると、わたしのベストに付けた。
いや、大きすぎて、なんか付けられている感が半端ないんだけど……。
そんなことを思いつつ、勲章を見ていると、王様はもう一人の従者さんから剣を受け取った。
騎士さん達が腰に付けているものと同じで、長剣、だっけ? そんな感じのものだ。
王様はそれを、鞘から抜いた!?
白銀色に輝く刃に、わたしは思わず体を硬くしてしまった。
え!?
何!?
わたし、斬られるの!?
すると、パパさんが後ろから「儀式だから! 大丈夫だから!」と囁いてくる。
いや、そうかもしれないけど、あらかじめ教えてくれるとかさぁ~!
ほんと、駄目なパパさんだ!
剣を持つ王様は少し申し訳なさそうに眉を寄せているから、大丈夫だとは思うけど、こっちは普通の女の子(中身)なんだから!
体を硬くしながら立っていると、王様はわたしの両肩(前足)に剣の刃ではない平らな部分で軽く叩いた。
あ、これ、騎士の儀式でやるやつかな?
いや、わたし、騎士ではなくドラゴン(仮)なんだけど?
そんなことを思っている内に、儀式が終了したのか、何やら沢山の拍手が起こる。
びっくりしてビクッとしちゃった。
王様が顔を近づけ「怖がらせてごめんね」と済まなそうに言う。
この王様、整った顔をしてるし、王子様の頃はさぞや乙女ゲーム系優しい王子様だったろうな。
なんて、ちょっと失礼なことを思った。
式が終わると、わたしとパパさん、ママさんは別室に連れて行かれた。
中には王様夫妻と先王様夫妻が穏やかに待っていた。
ふ~
お嬢様の家の応接間ぐらいの広さで、何とか人心地になれる。
まあ、お嬢様の家同様、前世では超セレブなお部屋で、前世のわたしだったら絶対に帰りたくなっただろうけどね。
良いのだ!
今世わたしはドラゴン(仮)なので、良いのだ!
などと考えていると、王太后のおばあちゃんがニコニコしながらスススっと近寄ってくる。
そして、「キュートリック殿をお預かりしても良いかしら? 侯爵」とパパさんに言う。
パパさんは苦笑しつつ「キュートリックにとっても名誉なことでございます。王太后陛下」とわたしを差し出した。
わたしの気持ちは!? と思わなくも無いけど、王太后のおばあ様は好きなので、両手(両前足)を向ける。
王太后のおばあ様は嬉しそうに、わたしを抱きしめてくれた。
温かで良いハグをする。
皆が席に座り、談笑を始める。
わたしは王太后のおばあちゃんの膝に体を乗せて、撫でられる。
その触り方はとても優しい。
王太后のおばあ様が「キュートリックさんも立派でしたよ」と言ってくれるので「がぅ!」と答えておいた。
楽しげな笑いが部屋で起きる。
王太后のおばあ様もフフフと上品に笑い、頭を撫でてくれた。
王太后のおばあ様に撫でられるのは凄く好きだ。
お嬢様の次ぐらいには好きかな? 胸がぽかぽか温かくなる。
だけど、何だろう。
時折、妙に苦しくなる。
こんなことをして良いのか?
そんな風に思ってしまう。
なんだろう?
この不思議な感情のしこりは。
そんなことを考えていると、「王太后ばかりで独り占めするでない」と体をひょいと持ち上げられる。
先王様がニコニコしながらわたしを抱き上げていた。
そして、優しくハグをしてくれる。
先王様のちょっとざらざらした手で撫でられるのも良い!
王様が笑いながら「父上達だけでズルいですよ! わたしや王妃にも守護竜殿を撫でさせて下さい」などと言っている。
う~ん、モテる竜(仮)は辛いなぁ~
お屋敷に戻ったパパさんは、もう上機嫌だった。
お迎えに来たお嬢様に大笑いをすると、抱き上げ、くるくるとし始めた。
突然のことに驚き、ママさんが止めると、目を白黒させるお嬢様を降ろしたんだけど……。
今度はママさんをくるくるし始めた。
えぇ~
長身のママさんが軽々と回ってる。
「止めなさい!」と怒っているママさんを降ろすと、今度はわたしを持って、くるくるし始めた。
えぇ~!
訳が分からない!
更に、わたしをお嬢様に渡すと、プリプリ怒っているママさんの腰に手を回しながら、「がっはっはぁ~!」などと笑いながら、ずんずん中に入っていった。
えぇ~
パパさんの奇行に使用人の皆はオロオロしているし、お嬢様はぽかんとしていた。
因みに、マーカスお坊ちゃまは学校に行っているそうだ。
羨ましい!
パパさんのそのテンションは翌日、王都を発ち、侯爵領に向かう間も続いた。
騎士さん達が疲れた顔で「目出度い話だけど、毎晩、あの勢いで晩酌に付き合わされるのは流石に……」とかぼやいていた。
まあ、別に良いよ?
人間、そういう時期もあるだろうさ!
ただ、関係ないドラゴンを巻き込まないでね!
ただ、パパさん的には、実は移動中は押さえていたらしく、侯爵領のお嬢様のお屋敷に入ると、「今晩は飲むぞぉぉぉ!」と吠え始めて、お嬢様、ママさんを初めとして、皆を呆然とさせたりした。
そして、現在……。
長椅子に座りお酒を飲むパパさん、何故か隣にわたしを置いているの。
と言うより、お嬢様はオントワンさんが避難させ、ママさんは早々と居なくなり、付き合わされたイケメン騎士のアランさんを初めとする騎士さん達もなんやかんや言いつつ逃走し、最終的にわたしだけが取り残されただけなんだけどね……。
「良いか? キュートリック!
テンインザー騎士勲章というのはなぁ~!」
と得意げに話すパパさん、イヤその話、もう何十回も聞いているからね!
もう止めて!
高性能な!
高性能なわたしのドラゴンブレインが、暗唱できるぐらい記憶しちゃう!
なのに、パパさんは、逃げようとするわたしの首根っこを掴んで離さない。
誰かぁ~!
助けてぇ~!




