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お嬢様(悪役令嬢)が欲しければ、まずはわたし(ドラゴン)を倒していけ!  作者: 人紀
第一章

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勲章を貰う!1

「それで、陛下から是非、キュートリックに勲章を与えたいとの事なんだ!」

 などと、リビングに移動した後、パパさんから、実に面倒くさそうなことを言われる。

 いや、ドラゴン(仮)にそのようなものを与えてどうするの?

と思っているのだけど、パパさんは実に嬉しそうだ。

 ママさんも「それは我が家にとっても光栄な事ね!」と嬉しそうにしているから、決定事項のようだ。

 まあ、お嬢様にとっても良いことなら、貰って上げなくはないけどね


 ソファーに座ったお嬢様はわたしを膝にのせて撫でてくれる。

「大丈夫? 痛くない?」と時折心配そうに聞いてくれるお嬢様は天使と言っても過言ではないだろう。

 正直、もうすっかり癒えたのか全然痛くない。

 ドラゴン(仮)だけど、この体は実に優秀なのだ。


 それはともかくとしてだ。


 パパさんやマーカスお坊ちゃまの様子を見る。

 パパさんはいつもの元気いっぱいの暑苦しい系イケメンだ。

 相変わらず、ママさんの腰に手を回していて、イヤらしい。

 マーカスお坊ちゃまも優しそうな顔でわたしを見ている。


 ……Web小説系(SF系?)で良くある、シナリオの本筋に強制移行とかは今のところ無いようだ。

 まだまだ油断できないけど。


 お嬢様を悪役令嬢にしたくないってのもあるし、まあ、なんやかんや言ってパパさんやマーカスお坊ちゃまが死んじゃったら凄く悲しいしね。

 もちろん、アネットさん達もね。

 しかし、お嬢様って本当にあのゲームみたいな悪役令嬢になったりするのかな?

 そりゃ、パパさんやマーカスお坊ちゃま、アネットさん達が死んじゃったら相当ショックだろうと思うけど……。

 う~ん、メガネちゃんが言うには、確か、ママさんとの確執がどうのこうのだった気もするけど……。

 今度はチラリとママさんを見る。

 こちらも、普段通りのママさんだけど、目の端が少し赤い。


 先ほど、ママさんがやってきた時は大変だった。


 部屋に駆け込んできたママさん、わたしの側に来るなり、号泣しだしたのだ。

 そして、「キュートリック、ありがとう! パパさん(グライ)やマーカスさんを助けてくれて、ありがとう! 本当にありがとう!」と何度も何度も叫んでいた。

 もう、その余りの様子に、パパさんを初めとして、全員で慌てて慰めていたほどだった。

 お嬢様も呆然とその様子を眺めていた。


 ママさんはキツい物言いは多いけど、冷たい人では無いと思うから、そこまで確執が生まれるとは思えないんだよなぁ。

 まあ、ゲーム自体をしっかりやっていなかったので、よく分からないけど……。


 そんなことを考えていると、パパさんは立ち上がると、わたしの背中を撫でる。

「恐らく、明日、王城に行くことになるからな。

 そのつもりでな」

 そこまで言うと、従者の人と部屋から出て行く。

 ママさんも立ち上がると、わたしを撫でつつ、「わたしも一緒に行くから大丈夫よ」と言って、部屋から出て行った。


 え~

 まあ、わたしドラゴン(仮)だし、そこまで礼儀とか気にする必要も無いから大丈夫かな?

 王様や王妃様、先代のおじいちゃん達も、優しそうだったし。


――


 王様が勲章をくれるっていうのだから、王城に行くのはまあ、想定内ではあった。

 パパさんも明言していたしね。

 また、王様が手ずからくれるって言うのも、想定していた。

 まあ、よく分からないけど勲章ってそういうもんだとは薄らと分かるしね。

 だから、執務室とかにお邪魔して、「キュートリック、ありがとう!」とかにこやかに微笑む王様が、それこそ、頭とかを撫でてくれつつ勲章をくれる。

 そんな風にお気楽な感じのものだと、想像をしていた……。

 だけど……。


 なんか、やたらと豪奢な場所に連れてこられたんだけど!?


 中学校の体育館ぐらいの大きさかな?

 そんな場所に、いかにも貴族な人たちが、3メートルほど離した二列で、向かい合わせになり立っていた。


 その奥に、先ず目に入るのは最奥上部に飾られている絵画だ。


 白い服を着た女の人――女神様かな?

 その人が指さす場所をひざまずきながら、頷きかける王冠を被ったおじさんが描かれている。


 建国神話か何かなのかな?

 よく分からないや。


 そして、その絵画を背に王座があり、王冠を被った王様とティアラを付けた王妃様が黄金色に輝く椅子に腰をかけている。

 鷹狩りの時の服より、更に華やかで、いかにも礼服って格好だ。

 中央からやや右寄りには王様達が座る椅子よりはいくぶん大人(おとな)しめな椅子に、先王様、王太后(おうたいこう)様が、こちらも礼服を着て静かに腰を下ろしている。


 王族の人たちは二段ほど高い位置にいて、そこから降りた両脇に、ジョシュさん達、護衛騎士さんが十人ほど、立っている。

 わたしを腕に乗せるパパさんがゆっくりと歩いて行く。

 貴族さん達を両脇にして進む形だ。

 王族の人たちの場所とは違い、パパさんが踏む場所は青地の絨毯だ。


 うん、これ、どう見ても謁見の間、だよね?

 えぇ~!

 大げさすぎない!?

 気軽に行こうよぉ~!


 わたしの気持ちとは裏腹に、なんだか皆、ピリピリまでは行かないまでも、厳格な表情をしている。

 いやあの、わたしの場違い感が酷い!

 パパさんからは、「わたしの腕で姿勢良くしていればすぐに終わるから!」と言われて来たんだけど!?


 お嬢様の膝の上に帰りたい!


 因みに、わたしは何やら黒いベストっぽいものを着せられている。

 お嬢様やママさんは「可愛い!」とか「似合ってるわよ!」とか言ってくれて、ちょっとその気になっていたけど……。

 なんか、ビシッとした格好の皆さんの中に入ると、間抜けっぽい気がする。

 そんなことを考えている間に、わたしを腕にのせたパパさんは、段の手前で止まると、片膝を突く。

 パパさんも、白地に青色の刺繍が格好いい礼服を身につけている。

 普通の人が着れば服に着せられている感が出そうなものだけど、イケメンな上、すらりとした体躯のパパさんは、見事に着こなしている。

 堂々としているし、パパさんのくせに凄く格好良かった。


 それに比べてわたしは……。

 帰りたい!


 そんな風にオロオロしていると、真面目そうなメガネおじさんが、厚そうな紙を広げつつ言う。

「このたび、王家主催の鷹狩りにて、クリスタリ侯爵、並びにクリスタリ侯爵家キュートリック殿が凶悪な魔物より、王家、および――」

 などと、長々と話し始めた。


 いや、噛まずに良く、すらすらと話せるものだと感心する。


 そんなことを考えていると、ようやく終わるようで、真面目そうなメガネおじさんが「よって、クリスタリ侯爵にはテンインザー騎士勲章、キュートリック殿には大騎士勲章および、騎士爵への叙爵とする」と言った。

 とたん、「おぉぉぉ!」という歓声とも簡単とも取れる声が聞こえてきた。


 凄い勲章なのかな?

 よく分からないけど。



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