↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トリニティポータル  作者: 木山碧人
第八章 世界の終末

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
166/269

第166話 Began

挿絵(By みてみん)





「意思の力には肉体系、感覚系、芸術系という三つの分類があって――」


 人格が形成されるのは『いつ』なんでしょうねぇ。


 言葉を覚えて、日常会話を話せるようになってからか。


 友人関係や親子関係のコミュニケーションで育まれるのか。


 社会に出て、荒波に揉まれて、少しずつ形が明らかになるのか。


 心理学者じゃないからよく知らないけど、どれもピンとこなかった。


「どれが優れているというより、一長一短。極めれば優劣はつかないわぁ」


 思えば、生まれた時から違和感はあったわ。


 産声を上げないし、夜泣きなんて一度もしない。


 ただ命に別状はなかったし、脳に異常も見られない。


 大人びた赤ん坊。言葉を話すまではそういう印象だった。


 ――だけど、この子は何かおかしい。


「御託はいらねぇよ。俺がやるっつたらやるんだよ」


 時折、別人のように振る舞うことがある。


 そういう年頃かと考えたけど、話して分かった。


 人格はランダム、切り替えは無意識、記憶は共有済み。


 恐らく、『重複意識』というもので、根本的な治療法はない。


 鏡の外のワタシと連携して、名医を頼ったけど、失敗に終わった。


 ――分かったのは、人格が変わる傾向。


「能力開発にはリスクがあってぇ、一度覚えたら取り返しが……」


 偽りの教室内で講義をする中、エミリアは教壇から手鏡を取り出す。


 無言のまま、紫色のセンスを纏い、本能に身を任せ、右手を突っ込んだ。


「それは凡人の常識だろ? 百の顔を持つ僕なら、全てを極められるさ」

 

 取り出したのは、金色に輝く球体。君主の宝珠。


 ここより遥か遠く、ロンドン塔の宝物庫にある国宝。


 身体的負荷がかかった時、エミリアは七色の輝きを放つ。


 ◇◇◇


 意思能力『百面相』。エミリアが保有する唯一無二の力。


 移動系の能力は、スリープモード中の省エネ機能に過ぎない。


 精神も安定し、敬語も扱い、社会に溶け込めるように人格も一つ。


 ただ、彼女が顔を歪めた時、彼女の身体に傷がついた際、呼び起こす。


 内なる人格。外的要因をトリガーに、百の顔と百通りの能力を使い分ける。


「……いひっ。くふふっ。あははははははははっ」


 教育棟の屋上でエミリアは、狂気に身を委ねる。


 ぐにゃりと折れ曲がった左足を見て、他人事のように笑う。


「貴様……やはり……っ!!!」


 一部始終を見ていた、セルゲイは声を上げる。


 波長の合う意思が衝突することで引き起こる感覚。


 レゾナンス現象を介して、彼女の疑惑が確信に変わる。


「………………痛ったいなぁ」


 笑みを消し、瞬時に距離を詰めたエミリアは呟いた。


 小さく冷ややかな声音。愚痴をこぼしただけのような発言。


 平凡な八つ当たりに思えるものの、彼女の異常性は行動にあった。


「――っ!!? 何を、馬鹿なことを!!!」


 セルゲイが全身に纏う意思能力の本質は、『反射』。


 それを見抜いた上でエミリアが繰り出すのは、折れた左足。


 人形遊びをするように何度も蹴りつけ、その攻防力が全て跳ね返る。


「あーあ。壊れちゃった」


 だらんと垂れ下がる左足を見つめ、エミリアは無邪気に語る。


 骨は剥き出しの状態で、血が飛び散り、足の原型は留めていない。


 移動面においても致命的であり、勝敗に直結するレベルの大きな痛手。


「…………っっ」


 場慣れするセルゲイでさえも、言葉を失っていた。


 異様な光景に気圧され、一歩ほど後ろに後退している。


「おじさん。その能力、単純すぎてつまんないよ。もっと複雑なのにしたら?」


 見るからに劣勢でありながら、エミリアは助言する。


 あたかも優勢であるように振る舞い、負傷を感じさせない。


 むしろ、剥き出しになった肉の隙間に指を突っ込み、悪化させる。


「……生憎、不器用なものでね。これしか扱えんのよ」


 常軌を逸した光景に怯みを見せながらも、セルゲイは答える。


 自身が纏う『死の鎧(ペリメトル)』を堅牢な城塞と信じ込み、殻に閉じこもる。


「オーケーボーイ。なら、同じ音色で踊りましょう。どちらかが果てるまで」


 エミリアは指についた血肉を舐め、黒いセンスを纏う。


 人格が入れ替わり、解析が完了した新しい能力を習得する。


 左足の傷が癒えることはなく、身長と筋肉量の差は覆られない。


 その上で提案したのはハンデ戦。熟練度でも劣る同門対決の申し出。


「……思い上がるなよ、アバズレ女! 異端者は、ここで朽ち果てろ!!」


 神経を逆撫でされたセルゲイは、正気を取り戻す。


 やるべきことを口にし、邪悪に立ち向かう決意を示した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。