↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トリニティポータル  作者: 木山碧人
第八章 世界の終末

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
150/269

第150話 一筋の光明

挿絵(By みてみん)





 決闘は終わった。勝敗条件は満たされた。


 ソーニャのセンスが消え、ドミトリーが勝った。


 都市上空の結界は解除され、関係者は地上へと落ちる。


 着地した場所は大図書館前。残っている作業は報告と後処理。


「上で観戦していた諸君らにとっては既知の情報だろうが、改めて言っておく。一連の騒動の決着は私がつけた。今後、ソーニャ・カラシニコフへの質問や接触は禁止とし、近衛連隊への暴行罪で牢屋に送る。……何か異論はあるかね?」


 当事者のドミトリーから語られたのは、状況報告だった。


 中で行われたやり取りは伏せられていたけど、筋は通ってる。


「「「「「…………」」」」」


 観戦勢のエミリア、ベクター、ターニャ、オレグ、イゴールは沈黙。


 その反応も無理はなく、彼の発言には整合性があり、特に矛盾点もない。


「では、これにて騒動は終息と――」


 ドミトリーは反応を見て、話を畳もうとしていた。


 異論がなければ、二度と彼女の件に触れられないはず。


 余所者とは言っても、元帥が課すルールには拘束力がある。


 破れば白軍と敵対するだろうから、今は従っておいた方が利口。


 少なくとも覚醒都市にいる間は、元帥の顔色を窺っていた方がいい。


 ――だけど。


「待って。一つだけ確認しておきたいことがある」


 リーチェは滑り込むようにして、口を挟み、話を繋げる。


 今ならまだ間に合う。ルールを守りつつ、探りを入れられる。


「構わんよ。言ってみるがいい」


 ドミトリーは快く了承し、会話のターンが回る。


 深く考えるまでもなく、聞くべきことは決まっていた。


「覚醒都市が闇に覆われた件だけど……その子は一切関係ないと言える?」


 尋ねたのは、この場の全員に関係がある話題。


 犯人捜しの一環で、外に出るには欠かせない質問。


 根拠は薄いけど、ソーニャが犯人の可能性も十分ある。


 最悪の場合、元帥が黒幕と知った上で庇う展開もあり得た。


「それとは無関係だ。私の知る限りではな」


「嘘じゃないのよね」


「無論だ。こいつを庇う理由がない」


 リーチェは念を押すように、短い応答を交わす。


 何も新しい情報はなく、思った通りの反応を示した。


 瞳に揺らぎはないし、嘘をついているような気配もない。


 しつこく聞いても、それ以上の情報が出てくるとも思えない。


 『犯人捜し』と『ジーナ捜し』。それに集中するのが建設的だった。


「ひとまず信じてあげる。……ただ」


「……?」


「今のが嘘だと分かったら白軍と敵対する。覚悟しておくことね」


 諸々の事情を考慮し、理解を示した上で、忠告する。


 根拠に欠ける違和感に蓋をして、彼の発言を信用する。


 今はただ、元帥に隠し事がないことを祈るばかりだった。


 ◇◇◇

 

「協力してくれませんか。この世界をどうにかするためにも」


 変電所付近でジーノは頭を下げ、懇願する。


 相手は、停電を企てていた余所者の二人だった。


 背後ではロザリア先生とセルゲイ大尉が見守っている。


「事情は分かったけど、決めるのはうちじゃないんよね」


 直接対決をした広島は、隣に視線を送る。


 口振りからすれば、彼女が停電騒動の首謀者。


 少し行き違いがあったようだけど、リーダー枠だ。


 顔は俯き、頼りない印象だけど、彼女の一存で決まる。


「……か、構いません。ただし、一つだけ条件があります」


 アザミと名乗る短い白髪の女性は了承する。


 その上で、前向きな交渉を始めようとしていた。


 見かけによらず、意外と頭が切れるのかもしれない。


「言ってください。僕で出来ることなら大抵のことは応じます」


 特に断る理由がなく、受け入れる姿勢を示す。


 後は内容次第。交渉は苦手だけど、やるしかない。


「……ひ、広島さん」


「はいよっと。リーダーがそう言うんなら」


 アザミは指示を送り、広島は変電所近辺の散策を開始する。


 そして、深く陥没した道路から運び出してきたのは褐色肌の少年。


 恰好は白軍憲兵。ぐったりした状態で広島に背負われ、生死不明だった。


「こ、この方はジェノ・アンダーソン。わ、わたしたちが旅をする理由そのもの。もし、彼の身に何かあれば、協力する意義が薄れます。……だ、だから、約束してください。この世界の闇が晴れるまで、ジェノさんの身を守ると」


 明かされたのは、向こうの弱点そのものだった。


 こちらの選択次第で、良い方にも悪い方にも利用できる。


 あえて語ったのは、秘密を共有し、関係を強固にするためだろう。


「…………」


 ジーノは振り返り、年長者二人の顔色を伺った。


 ソーニャ攻略の主導権を握っているのは間違いない。


 だけど、判断に自信がなく、二人の意見を聞きたかった。


「「――――」」


 言葉を発することなく、両者は首を縦に振る。


 真意は不明だけど、反対する気がないのは分かる。


 約束事に巻き込んでもいいという意味合いも含まれる。


 ――つまり。


「僕の命に代えても彼を守ります。だから……」


「や、闇を晴らしましょう。お互いのためにも」


 自然と握手を交わし、余所者との協力関係が成立する。


 緊張しているのか、アザミの顔色は驚くほど青ざめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。