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トリニティポータル  作者: 木山碧人
第八章 世界の終末

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第143話 大図書館前の攻防

挿絵(By みてみん)





 地を蹴り、風を切り、黒の世界を駆け抜ける。


 白のスカートを揺らし、少女はビル群を飛び交う。


 魔獣化の症状悪化により、抑圧されていた本能の解放。


 『体を存分に動かしたい』。そんな些細な願いが叶った瞬間。


「ひゃっほぅ!!!」


 ソーニャは、この上なく生を謳歌していた。


 覚醒都市と25万人を手中に収めながら、跳躍する。


 目的も時間も設定せず、思うがままに体を動かし続ける。


『はしゃぐのもいいっすけど、約束を忘れたわけじゃないっすよね』


 そこに声をかけたのは、ソーニャが内に宿す魔獣。


 臥龍岡メリッサは、淡々とした声音で行いを責め立てる。


「はいはいっと。体制を盤石するには、『頭を押さえろ』だよね」


 教えを反芻するように、ソーニャは語る。


 足取りは定まり、向かう先は覚醒都市の南部。


 居住区の外れにある、水平に展開する低層建築物。


 厳重な警備体制の『大図書館』に単身で挑んでいった。


 ◇◇◇


 覚醒都市バイカルヴェイ南部。大図書館。叡智の間。


 円形の白い空間。その中央に舗装された通路上には二人。


 その片割れとなる、『黄金の両手(ルカ)』を装着したジーナは語る。


「元凶のお出ましだ。正面から堂々と来やがったぞ」


 強化されたセンスにより、戦況の変化を把握。


 新たな敵の位置を把握した上で、冷静に報告していた。


「……お手並み拝見といこうかね」


 両腕を組み、返事するのはドミトリー。


 壊れた扉の先を見つめ、期待を膨らませていた。


 ◇◇◇

 

 覚醒都市バイカルヴェイ南部。大図書館前。


 大量の白軍兵が銃口を向ける中、先頭に立つのは二人。


「悪いがここは立ち入り禁止区域だ」


「痛い目見たいなら、話は別だけどねぇ」


 アレクセイとバグジーは白軍の見解を代弁する。


 正面には、たった一人で軍勢に立ち向かう銀髪の少女。


「だったら、元帥か王女を出して。それなら痛い目は見ない」


 ソーニャは銃口に怯むことなく、強気に応じる。


 多勢に無勢の状況。本来なら成り立つはずのない交渉。


 だが、その我がままを押し通せるだけの異能力を秘めていた。


「強気な台詞だな」


「お手並み拝見といこうかしら」


 アレクセイは小銃。バグジーはククリ刀を構え、戦闘開始。


 その二人を筆頭にして、白軍対ソーニャの図式が成立していた。


 ◇◇◇


 戦闘が始まった。遠くない場所で、多数のセンスが生じる。


 南下するのはリーチェ、ベクター、エミリア、オレグ、ターニャ。


 ――それに加えて、もう一人。


「由々しき事態のようだね。ようやく僕の出番が来たみたいだ」


 『煉獄の門』の門番をしていた男、イゴール曹長。


 短い金髪を七三分けして、背は低めで肉体は痩せ細る。


 門前での騒動中、気絶していて助かった白軍の兵士だった。


 名誉挽回の場として意気込み、戦場に馳せ参じようとしている。


「ついてくるのは構わないけど、門は放置したままでいいの?」


 そこでリーチェは、ふとした疑問をぶつける。


 門番の役割からは、逸脱した行動のように思えた。


「アレは交代勤務でね。第三層の結界師に引き継がれたよ」


 イゴールは質問に対し、率直に回答する。


 話題に上がったのは、門を覆う三層構造の結界。


 恐らく、行列のように並び、時間制で交替する仕様。


 第一層→第二層→第三層→門番→休みのような体制のはず。


 休み時間に何をしようが自由のはずで、彼なりの筋は通っていた。


「ふーん。何をしようが勝手だけど、その貧相な身体で戦えるの?」


 その上で問いかけるのは、戦闘力の確認。


 問題は見た目。ガリガリで強そうに見えない。

 

 能力次第ではあるけど、依存し過ぎるのは危うい。


 センスがなければ、何も出来ない可能性が極めて高い。


 素の肉体が残念だと、戦闘に悪影響が出るのは確かだった。

 

「任せてくれ。門番での失態はここで晴らす」


 自信あり気な反応を見届け、辿り着いたのは都市南部。


 気絶する大量の白軍兵が積み重なり、近くには少女がいた。


「あっそ。じゃあ、死なない程度に頑張って。見守ってあげるから」


 先に事態を把握したリーチェは、冷たく突き放す。


 見た限り、敵は蜥蜴型の魔獣じゃないし、戦力は温存したい。


「……は、ははっ。ま、任せてくれ給えよ」


 後れて事態を把握したイゴールは、引きつった顔で勝負を請け負った。

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