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トリニティポータル  作者: 木山碧人
第八章 世界の終末

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第131話 面談

挿絵(By みてみん)





 異端審問は終わった。イブ・グノーシスは無罪となった。


 白教のトップ。エリーゼ・フォン・アーサーは教皇を辞めた。


 抱える信徒は世界人口の半数近く。放置というわけにはいかない。


 代表が必要になる。宗教団体をまとめ上げる資格と実績が求められる。


 ――ここまで長い道のりだった。


 白教に身を置き、人生を捧げると誓った。


 『魂の転写』を繰り返し、白教へ奉仕し続けた。


 代理じゃない教皇を夢見て、努力を惜しまなかった。


 計画し、失敗し、試行錯誤し、あらゆる方法を模索した。


 問題は、永久欠番状態の『教皇』を、いかに受け継がせるか。


 エリーゼがいない空白の期間は、『教皇代理』が代表だと定めた。


 ――いくら手を打っても、『教皇』にはなれない。

 

 開祖のエリーゼが認めた者でないと、信徒は納得しない。


 工夫が必要だった。苦労が不可欠だった。時期が重要だった。


 エリーゼを殺す。なんて誰でも思いつく方法じゃあ、駄目だった。


 在任中に自ら身を引かせ、次代に受け継ぐよう誘導する必要があった。


 ――その苦労が報われる時が来た。


「…………」


 白教大聖堂の最奥。白の椅子に座ったのは、青髪短髪の女性。


 白のローブに身を包み、白のビレッタ帽を被り、遂に念願が叶う。


「ようやくですね、お師匠様。……いいえ、イザベラ教皇」


 声をかけてきたのは、今回の立役者となったイブ。


 未だに日は昇っておらず、幻想的な月光が差し込んだ。


 眼鏡と髪と表情を淡く照らし、白の修道服に陰影を与える。


 白教の最底辺を支える修道女だったが、役職以上の価値がある。


「あぁ、早速だが仕事だよ。面談の準備をしてくれるかい?」


 ◇◇◇


 長いようで短い眠りから、ようやく目が覚める。


 目の前には物質が存在しない白い空間が広がっていた。


 究極のミニマリストともいえ、自分の肉体と白服だけがある。


「…………」


 ラウラは無意識的にネクタイを締め、一歩前へ踏み出す。


 理由は特にねぇ。なんとなくそうした方がいい気がしていた。


(こいつは……)


 白い霧が晴れた先に見えてきたのは、老婆と鬼。


 片方は知らねぇが、もう片方の風貌には見覚えがあった。


「お前、確か……『ストリートキング』の参加受付所にいた……」


 記憶の片隅から、関連した情報を呼び起こす。


 当時と同じく、短い白髪で、皮と骨しかない婆さん。


 占い師みてぇな黒いローブ服を着て、腰は前に曲がってる。


「アンタにはそう見えてるんだねぇ。アタシの視点を見せてあげたいよ」


 老婆は半ば認めるような発言をして、反応を示す。


 どうやら見る視点によって、視覚情報が変わるらしい。

 

 自分にとって最も都合のいい風貌を選択するってな感じか。


 恐らく、その性質から逆算すりゃあ、ここは精神世界一択だな。


 外のことは分からねぇが、他人の精神と接続してるのは間違いねぇ。


「まぁ、見た目に関しては何でもいい。それより、ここはどこだ。どういうつもりで僕を呼んだ。詳しく説明してもらおうか」


 灰色の着物を着る、花魁風の金髪の鬼は無視し、話を進める。


 反応から考えるに、どう考えても、この胡散臭い老婆が首謀者だ。

 

 仲を深めるつもりはねぇし、老婆から話を聞くのが手っ取り早かった。


「ここは……そうだねぇ、端的に言えば精神世界だよ。せっかく同じ肉体を介して繋がってるんだから、親睦でも深めようかと思ってねぇ。まずは自己紹介をして、お互いの未来について語り合わないかい?」


 語られるのは、背筋がゾッとする発言だった。


 認めたくない事実が含まれ、身体に寒気が走っていく。


「……今、なんつった」


 ラウラは確認する。知りたくない情報について尋ねる。


 薄っすら頭で分かってたのに、聞かずにはいられなかった。


「あぁ? 若いのに耳が遠くなったのかい? ここは精神世界だよ」


「そっちじゃねぇ。それより後だ」


「まずは自己紹介をして――」


「そっちでもねぇ。それよりも前だ」


「あぁ……そういえば、大事な説明が抜けていたねぇ。ラウラ・ルチアーノ。アンタの肉体には、三名の魂が宿ってる。本体であるアンタ。意思能力で魂を転写したアタシ。そして、『血の千年祭』により降臨した白き神の半分。月の儀式に関連し、大量の善人を救うことで復活する存在。またの名を――」


 話を転がし、ようやく本題に入っていく。


 老婆は不敵な笑みを見せ、状況を説明していく。


 視線は金髪の鬼に集まり、答えは当事者から語られた。


月読命ツクヨミノミコト。……この時をずっと待ってたんだよ、月桂樹の名を冠する人」

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